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11.鑑賞してもいいでしょうか?
しおりを挟む私は、辻馬車を拾い、二人を乗せて、アンナ姉さんが経営している高級売春宿へ向かった。
夕暮れの中、アンティークのライトが宿までの道を照らす。朱金色に彩られた柱や、建物は、美しく怪しい魅力を放っている。
アンナ姉さんは、母リリアンナの友人になる。母が亡くなってから、時々ミーナはアンナ姉さんの元へ訪れていた。
やり手のアンナ姉さんは、元々貴族が所有していた別荘を買い取り、会員制の売春宿に改築した。一定以上の収入と地位が無ければアンナ姉さんの店の会員になる事はできない。
「こんばんは。アンナ姉さん」
「あら、ミーナじゃないの。どうしたの?貴族の家に潜入するって言っていなかった?」
「潜入していたのだけどね。馬鹿なルーナが帰ってきたから父に追い出されたの。それより、特別室は開いている?この人達に使わせたいのだけど」
「特別室ねえ。ふーん。いいわよ。入って頂戴」
豪華な扉が開かれ、私は息絶え絶えのロザリーと、ジンを連れて中へ入っていった。
「貴方達は、この部屋を使っていいわ。」
「ありがとう。あんたは、どうして助けてくれるのだ?」
「うーん。ちょっと貴方達を応援したくなったの。私が平民だからかな。身分差の恋に憧れがあって。終わったら出てきて誰かに声をかけて。私はアンナ姉さんと話があるから。」
私は、二人を特別室へ押し込んで、アンナ姉さんの元へ向かった。
特別室には仕掛けがある。最高級の防音設備と、西壁に設置された巨大なマジックミラー。特別室の隣の部屋は鑑賞室になっている。中のプレイを、じっくりねっとり皆で楽しめるのだ。
アンナ姉さんと、予約が入っていない売春婦の姉さん達と私は、鑑賞室で高級シャンパンと、生ハム、ローストビーフ、魚介のカナッペ、プチケーキ等を楽しみながらSM鑑賞会を開催していた。
「あ、あ、ご主人様。最高です」
ベシ!ベシ!パンパンパンパン
「ああ、激しい。ああ、ありがとうございます。」
「外では、表情に出すなと命令しただろ。次からは1本じゃなくて2本にするからな」
「ああ、ありがとうございます。ご主人様」
バシ、バシ、バシ
長い金髪を振り乱しながら、両手を縛られ、両太ももを体に沿うように巻き付けられて宙吊りにされたまま、鞭で打たれ、何度もジンの一物を体の中心に受け入れている。
涙を流し、辛うじて台についているつま先が震わせ、至福の表情を浮かべながら悶えている。
ジンは涼しい顔を少し頬を赤らめて、罵りながら筋肉質な全身の筋肉を使って攻め続けていた。
「本当、凄いわね。ミーナが言っていた事がわかるわ。芸術的なSMカップルって」
「そうでしょ。アンナ姉さん。今一番の押しカップルなのよ。王城でも屋外の小屋でプレイしていたのよ。信じられないでしょ。あの時は小屋の中がちょっと暗いからよく見えなくて、不満だったのよね。」
「ほんと、プロ顔負けの能力ね。あの体制でバランスを取りながら、あれだけプレイを続けられるなんて、かなりの身体能力だわ。ねえ、姉さん。この金髪美女をスカウトしたら」
「彼女ロザリー・グロッサー公爵令嬢でしょ。グロッサー家の長女は、王子の婚約者じゃなかったかしら」
そう言いアンナ姉さんは、週刊誌を出してきた。週刊誌の王室特集には、王子の似顔絵が描かれている。熊のように毛深くて厳つい第一王子の似顔絵と、すらりとした細身で整った顔立ちの第2王子の似顔絵が一面を飾っていた。
「そういえば、白豚が婚約者だとか言っていたけど、全然王子とは似てないわ。それにしてもこの似顔絵、おかしくない?第2王子ってこんなにハンサムなの。まあ全然タイプじゃないけど」
「そうねえ。私も第2王子には会った事がないのよね。噂はよく聞くのだけど。女に人気があって凄く遊んでいるらしいから、見た目はいいのでしょ?でも、これってナリミア王妃が書かせた記事だと思うわ。息子に優位になるようにちょっと盛っているかもしれないわね」
「ねえ、見て。凄いわよ。公爵令嬢が一回転したわ。なんなのあの縛り方!」
「凄い。激しい。こんなプレイ見た事ないわ。ほら姉さん見て」
「まあ、面白いわね。本当に、ここを改修する時、この部屋を作って良かったわ。ふふふふ」
私は、アンナ姉さんに同意して、頷きながらシャンパンと高級食材の軽食を楽しんだ。
ロザリー公爵令嬢とジンのプレイは数時間続いた。終わったのか、特別室の電気が消え静まり返っている。夜も深まり、仕事の為や、睡眠をとる為、姉さん達は自分の持ち場に帰っていった。
私は、特別室の隣室で一人ウトウトと仮眠を取っていた。
ずっと母を殺した犯人を捜してきた。
もう少しで見つけられると思っていたのに。
結局自分の父が誰なのかもわからない。
母はもう亡くなってしまった。
母に尋ねる事も出来ない。
どうして?どうして母は私に父を教えてくれなかったのだろう。母はどうして私を置いて逝ってしまったのだろう。
気を紛らわそうと思ってここに来たけれど、やっぱり寂しくて辛い。
どうしても、母の仇を見つけてあの女を…
ガチャリ。
うつらうつらしていると、ドアが開く音が聞こえた。
「アンナ姉さん?」
私は、暗闇の中、目を閉じたまま声をかけた。
急に、大きくて硬い何かに覆いかぶされ、驚いた私は叫び声を上げようとした。
私の口は大きな堅い手に覆われて声を出す事ができなかった。
「お前、ずっと覗いていただろ。俺が気づかないとでも思ったのか?」
暗闇の中、私に覆いかぶさり、私を固定するジンの黄土色の瞳が猛獣のように輝いた。
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