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第一章
皇子
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時折、逃れる樫の木では、皇子と話をする事があった。
そのうち、皇后からの使いが訪れる頻度が減り、私は二人目を出産する時期が迫ってきた。
皇女を産んだ時より、強い腹痛に見舞われた。
ズギン、ズギン、ズギン
何度経験しても慣れない強い痛みに、思わずうめき声をあげる。
周囲には侍医や産母が控えている。
(大丈夫。前に経験したわ。我慢していたら終わる。)
オギャーーー、オギャーーーー
「元気な皇子ですぞ。妃様。おめでとうございます。」
「はあ、はあ、はあ、はあ」
酷い疲れに頭が朦朧とする。まだ全身が痛いが、皇子の鳴き声に無事に産めたと安心した。産婆に抱きかかえられて連れてこられた皇子を見て、私は思わず笑みをこぼした。
(皇子だわ。念願の皇子)
私は安心して眠りについた。
出産後私の元を訪れた大王は大変喜んだ。
「よくやった。皇子を産んでくれてありがとう。竹田皇子と名付けよう。私の嫡子だ。次の大王だぞ。」
私は違和感を覚える。大王にはすでに嫡子の広彦皇子がいるはずだ。
「まあ、そんなに喜んでいただけて嬉しいです。ですが、皇后様の皇子がおられるでしょう。」
大王は表情を固めて私に言う。
「あれは、ダメだ。そのうち本宮から出す。父親の物に手を出そうとするなど以ての外だ。」
私は驚く。広彦皇子は、広姫と違い優秀だと評判だったはずだ。いつのまにか大王の反感をかっていたらしい。
「まあ、そうなのですね。広彦皇子とはお会いした事がありませんが、思っていたより変わった方なのですね。」
大王は私を見て豪快に笑った。
「其方は本当に愛しいな。彼奴もかわいそうに、気づかれてさえいないとは。」
大王の最後の言葉は小声でうまく聞き取れなかった。機嫌が良さそうな夫を見て私も微笑む。あの広姫の皇子がどうなろうと私には関係ない。できれば、あの皇后には関わりたくない。もし広彦皇子が本宮を出されるなら、私の皇子が次の大王になる可能性も出てくる。
(ああ、うれしい。私の竹田皇子が次の大王なれるかもしれない。)
新しく生まれた皇子は私の希望、私の未来だ。私は愛おしい息子を大事に守り育てようと心に決めた。
そのうち、皇后からの使いが訪れる頻度が減り、私は二人目を出産する時期が迫ってきた。
皇女を産んだ時より、強い腹痛に見舞われた。
ズギン、ズギン、ズギン
何度経験しても慣れない強い痛みに、思わずうめき声をあげる。
周囲には侍医や産母が控えている。
(大丈夫。前に経験したわ。我慢していたら終わる。)
オギャーーー、オギャーーーー
「元気な皇子ですぞ。妃様。おめでとうございます。」
「はあ、はあ、はあ、はあ」
酷い疲れに頭が朦朧とする。まだ全身が痛いが、皇子の鳴き声に無事に産めたと安心した。産婆に抱きかかえられて連れてこられた皇子を見て、私は思わず笑みをこぼした。
(皇子だわ。念願の皇子)
私は安心して眠りについた。
出産後私の元を訪れた大王は大変喜んだ。
「よくやった。皇子を産んでくれてありがとう。竹田皇子と名付けよう。私の嫡子だ。次の大王だぞ。」
私は違和感を覚える。大王にはすでに嫡子の広彦皇子がいるはずだ。
「まあ、そんなに喜んでいただけて嬉しいです。ですが、皇后様の皇子がおられるでしょう。」
大王は表情を固めて私に言う。
「あれは、ダメだ。そのうち本宮から出す。父親の物に手を出そうとするなど以ての外だ。」
私は驚く。広彦皇子は、広姫と違い優秀だと評判だったはずだ。いつのまにか大王の反感をかっていたらしい。
「まあ、そうなのですね。広彦皇子とはお会いした事がありませんが、思っていたより変わった方なのですね。」
大王は私を見て豪快に笑った。
「其方は本当に愛しいな。彼奴もかわいそうに、気づかれてさえいないとは。」
大王の最後の言葉は小声でうまく聞き取れなかった。機嫌が良さそうな夫を見て私も微笑む。あの広姫の皇子がどうなろうと私には関係ない。できれば、あの皇后には関わりたくない。もし広彦皇子が本宮を出されるなら、私の皇子が次の大王になる可能性も出てくる。
(ああ、うれしい。私の竹田皇子が次の大王なれるかもしれない。)
新しく生まれた皇子は私の希望、私の未来だ。私は愛おしい息子を大事に守り育てようと心に決めた。
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