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第一章
衰弱
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実兄の大兄王子が、新しい大王に選ばれた。
兄には、既に数人の皇子や皇女が産まれている。中でも厩戸皇子は神童として、才覚を表していた。
だけど、兄と私の母は妃で、皇后ではない。正式な嫡男は正妻の皇子でなければいけない。亡くなった夫の嫡男は、あの広姫の息子の広彦皇子と、私の竹田皇子と幼い尾張皇子になる。兄の次の大王は、私の竹田皇子が選ばれるはず。そう思っていた。
兄は、大王になってからよく体調を崩すようになった。
蘇我出身の母を持ち、正妻も蘇我一族の姫を娶っている兄に対して、蘇我以外の豪族の目が厳しい。今では国で一番影響力がある蘇我一族だが、ただの豪族である事には変わりがない。
兄は、蘇我と他の豪族に挟まれて上手く纏め上げる事ができていないようだった。
兄の調子が悪いと聞き、私は兄を尋ねて行った。
兄は窶れ、眼の下には隈ができていた。
私は兄に声をかける。
「兄様。お加減はいかがでしょうか?」
大兄大王は私を見て言った。
「額田部。すまない。もう私は、大王を続けれそうにない。私は大王の器ではなかった。」
私は、兄に言った。
「何をおっしゃいます。兄様。まだ頑張っていただかないと、皇子達はどうなります。お願いです。兄様。」
大兄大王は言う。
「額田部。蘇我はやりすぎた。蘇我への恨みはどんどん強くなっている。それに、穴穂部は蘇我を裏切ったようだ。守屋と手を組みなにやら企んでいる。あいつはお前に執着していた。気を付けろ。」
兄の手はやせ細り骨と皮だけになっていた。
食事も満足に取れていないらしい。
私は、兄の手を両手で持ち上げ、頭をつけて懇願する。
「本当に、もう無理なのでしょうか?」
兄は、かすかに微笑み言った。
「すまない。額田部。私の子供達を頼む。蘇我の叔父は信用できない。太后である其方にしか頼めない。」
私は、目を潤ませながら頷いた。
結局、兄は2年間大王の位につき亡くなった。亡くなる前の半年間、体調を崩した兄は、蘇我の叔父に政を任せて療養の為に本宮を離れた。
殯宮で、私を助けてくれた三輪逆は、穴穂部皇子と、物部守屋に殺された。
政を私物化する蘇我一族と、穴穂部皇子を援助する物部一族との対立が明確化していた。
大王の地位を争う戦争になる。
もし、穴穂部皇子が大王になったら、、、
その事を想像して私は震えた。
守らないといけない。私の皇子や皇女を。
たとえ、幼馴染の従弟を殺す事になったとしても、、、、
兄には、既に数人の皇子や皇女が産まれている。中でも厩戸皇子は神童として、才覚を表していた。
だけど、兄と私の母は妃で、皇后ではない。正式な嫡男は正妻の皇子でなければいけない。亡くなった夫の嫡男は、あの広姫の息子の広彦皇子と、私の竹田皇子と幼い尾張皇子になる。兄の次の大王は、私の竹田皇子が選ばれるはず。そう思っていた。
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兄は、蘇我と他の豪族に挟まれて上手く纏め上げる事ができていないようだった。
兄の調子が悪いと聞き、私は兄を尋ねて行った。
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私は、兄に言った。
「何をおっしゃいます。兄様。まだ頑張っていただかないと、皇子達はどうなります。お願いです。兄様。」
大兄大王は言う。
「額田部。蘇我はやりすぎた。蘇我への恨みはどんどん強くなっている。それに、穴穂部は蘇我を裏切ったようだ。守屋と手を組みなにやら企んでいる。あいつはお前に執着していた。気を付けろ。」
兄の手はやせ細り骨と皮だけになっていた。
食事も満足に取れていないらしい。
私は、兄の手を両手で持ち上げ、頭をつけて懇願する。
「本当に、もう無理なのでしょうか?」
兄は、かすかに微笑み言った。
「すまない。額田部。私の子供達を頼む。蘇我の叔父は信用できない。太后である其方にしか頼めない。」
私は、目を潤ませながら頷いた。
結局、兄は2年間大王の位につき亡くなった。亡くなる前の半年間、体調を崩した兄は、蘇我の叔父に政を任せて療養の為に本宮を離れた。
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