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限界離婚≪再≫
夫と息子
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綾乃は瑠蛇総合病院の院長夫人として暮らしている。
息子夫婦の離婚が決まり、その直後息子の拓也は体調を崩して研修医を休んでいると聞いていた。何度か息子の家を尋ねて行ったが、ほとんど会う事ができていない。どうやら寝込んでいる様子だった。綾乃は息子の事が心配だった。
忙しい夫の修は、綾乃に息子は大丈夫だから、そんなに心配しなくていいと慰めてくれる。
夫の妹の李衣菜さんは、小児科医をしており、李衣菜さんの息子である良明は整形外科医として既に瑠蛇総合病院で働いている。
綾乃の息子は、3回留年してやっと医師試験に合格した。
このままだと、甥に瑠蛇総合病院の院長の地位を盗られるような気がして綾乃は不安を感じていた。
それに、義妹の李衣菜さんは、何度か拓也は医師に向かないのではないかと言ってくる事があった。
その度に、綾乃は息子を馬鹿にされているような気がして、不快感を持っていた。
息子の拓也は優秀だ。
幼い頃から算数や理科を中心に何度も満点を取って帰って来た。
あんなに頭がいい最愛の息子が医師に向かないと言われる事が、綾乃はどうしても納得いかなかった。
息子の家に、身の回りの物を買って持って行った日だった。
今日も会えずに、息子の家の冷蔵庫に買った物を片付けて自宅へ帰る所に電話がかかってきた。
夫の修が倒れたという電話だった。
夫は勤務後医局で机にもたれかかっている所を発見されたらしい。
仮眠をとっているように見えていたが、どうやら様子が可笑しいと残っている職員が気が付き、すぐに入院となった。
沢山の検査が終わり、医師から説明された言葉に綾乃は衝撃を受けた。
医師は、綾乃に説明をした。
「広範囲の脳梗塞です。この黒い部分がわかりますか?後大脳動脈の閉塞です。今後は高次脳機能障害が出現する可能性が高い。しばらく入院して治療とリハビリをしていきましょう。後遺症が残るので、今までと同じように働ける可能性は低いでしょう。」
綾乃は、思わず医師へ詰め寄った。
「そんな。後遺症だなんて、、、先生何とかならないのですか?なにか方法は無いのでしょうか?息子はまだ若く、夫にはまだ働いてもらわないといけないのです。」
医師は、綾乃に言う。
「広範囲な梗塞ですから、仕事どころか日常生活にも支障が出る可能性があります。生活ができるようになってから仕事については考えて行きましょう。ですが、整形外科医として手術をする事はかなり難しいのではないかと思います。整形外科には、優秀な整形外科医がおられましたよね。」
(それは、甥の事だわ。私の息子は今、、、、、、、)
息子は今、うつ病と戦っている。診察には行っているらしいが、服薬を拒否しているらしい。なんでも、心理・認知検査の結果からより詳しい検査をする為、県立病院を紹介される事になったと聞いた。息子のフォローもあるのに、夫がこんな状態になるなんて、、、、
綾乃は項垂れた。
こんな時に、息子に嫁がいてくれたなら、、、、
綾乃はふと、離婚させた麗奈の事を思い出す。
両親を亡くしている麗奈については綾乃は初めから気に入らなかった。
夫が、麗奈の事を気に入って、息子との結婚を了承した事も不快に感じていた。でも、こんな時に麗奈がいてくれたなら、息子の事を麗奈に任せる事ができただろうに、、、、、
過去の自分の行動を後悔する。
だけど、仕方がない。
医師の話が終わり、綾乃は夫がいる病室へ帰った。
個室に入った夫のベッドの周りには沢山の機器が電子音を立てている。
モニター心電図が、画面に規則的な心電図を表示している。
点滴は4本入り、電動シリンダーで注入量を管理されている。
腕には血圧計、指にはパルスオキシメーターが装着され、酸素チューブが鼻から入っていた。
(まさか、こんな事になるなんて、、、、そうね、命が助かった事に感謝しないと、、、、)
夫の姿を見て、綾乃は溜息をついた。
命があるなら、きっとまたよくなるはずだ。夫も息子も命を失ったわけではない。
もう多くは望まない。
病院は、甥へ譲ってもいい。
だから、どうか、、、、
助けてください。
綾乃は、夫のベッドの隣の椅子に座り、両手を組んで頭をつけ、心の底から祈りを捧げた。
息子夫婦の離婚が決まり、その直後息子の拓也は体調を崩して研修医を休んでいると聞いていた。何度か息子の家を尋ねて行ったが、ほとんど会う事ができていない。どうやら寝込んでいる様子だった。綾乃は息子の事が心配だった。
忙しい夫の修は、綾乃に息子は大丈夫だから、そんなに心配しなくていいと慰めてくれる。
夫の妹の李衣菜さんは、小児科医をしており、李衣菜さんの息子である良明は整形外科医として既に瑠蛇総合病院で働いている。
綾乃の息子は、3回留年してやっと医師試験に合格した。
このままだと、甥に瑠蛇総合病院の院長の地位を盗られるような気がして綾乃は不安を感じていた。
それに、義妹の李衣菜さんは、何度か拓也は医師に向かないのではないかと言ってくる事があった。
その度に、綾乃は息子を馬鹿にされているような気がして、不快感を持っていた。
息子の拓也は優秀だ。
幼い頃から算数や理科を中心に何度も満点を取って帰って来た。
あんなに頭がいい最愛の息子が医師に向かないと言われる事が、綾乃はどうしても納得いかなかった。
息子の家に、身の回りの物を買って持って行った日だった。
今日も会えずに、息子の家の冷蔵庫に買った物を片付けて自宅へ帰る所に電話がかかってきた。
夫の修が倒れたという電話だった。
夫は勤務後医局で机にもたれかかっている所を発見されたらしい。
仮眠をとっているように見えていたが、どうやら様子が可笑しいと残っている職員が気が付き、すぐに入院となった。
沢山の検査が終わり、医師から説明された言葉に綾乃は衝撃を受けた。
医師は、綾乃に説明をした。
「広範囲の脳梗塞です。この黒い部分がわかりますか?後大脳動脈の閉塞です。今後は高次脳機能障害が出現する可能性が高い。しばらく入院して治療とリハビリをしていきましょう。後遺症が残るので、今までと同じように働ける可能性は低いでしょう。」
綾乃は、思わず医師へ詰め寄った。
「そんな。後遺症だなんて、、、先生何とかならないのですか?なにか方法は無いのでしょうか?息子はまだ若く、夫にはまだ働いてもらわないといけないのです。」
医師は、綾乃に言う。
「広範囲な梗塞ですから、仕事どころか日常生活にも支障が出る可能性があります。生活ができるようになってから仕事については考えて行きましょう。ですが、整形外科医として手術をする事はかなり難しいのではないかと思います。整形外科には、優秀な整形外科医がおられましたよね。」
(それは、甥の事だわ。私の息子は今、、、、、、、)
息子は今、うつ病と戦っている。診察には行っているらしいが、服薬を拒否しているらしい。なんでも、心理・認知検査の結果からより詳しい検査をする為、県立病院を紹介される事になったと聞いた。息子のフォローもあるのに、夫がこんな状態になるなんて、、、、
綾乃は項垂れた。
こんな時に、息子に嫁がいてくれたなら、、、、
綾乃はふと、離婚させた麗奈の事を思い出す。
両親を亡くしている麗奈については綾乃は初めから気に入らなかった。
夫が、麗奈の事を気に入って、息子との結婚を了承した事も不快に感じていた。でも、こんな時に麗奈がいてくれたなら、息子の事を麗奈に任せる事ができただろうに、、、、、
過去の自分の行動を後悔する。
だけど、仕方がない。
医師の話が終わり、綾乃は夫がいる病室へ帰った。
個室に入った夫のベッドの周りには沢山の機器が電子音を立てている。
モニター心電図が、画面に規則的な心電図を表示している。
点滴は4本入り、電動シリンダーで注入量を管理されている。
腕には血圧計、指にはパルスオキシメーターが装着され、酸素チューブが鼻から入っていた。
(まさか、こんな事になるなんて、、、、そうね、命が助かった事に感謝しないと、、、、)
夫の姿を見て、綾乃は溜息をついた。
命があるなら、きっとまたよくなるはずだ。夫も息子も命を失ったわけではない。
もう多くは望まない。
病院は、甥へ譲ってもいい。
だから、どうか、、、、
助けてください。
綾乃は、夫のベッドの隣の椅子に座り、両手を組んで頭をつけ、心の底から祈りを捧げた。
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