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アヤメ
4.落雫
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アヤメは、電気をつけずに薄暗い寝室のベッドに横になった。
9か月前の事が思い出される。まだ一年も経っていないのに、遥か昔のように感じる。夫とエリカが一緒にいる所を見た後、色んな事があった。警察に連れて行かれ、釈放されてすぐに親友の死、事故で記憶を失った夫、義父鬼柳サカキの殺人容疑と失踪。色んな事があり、義姉の事を忘れていた。
ううん。思い出したくなかっただけかもしれない。
意識的に彼女の事を、彼女と夫の事を考えない様にしていたかもしれない。
なにより彼は覚えていない。
彼に思い出してほしくない。
決心したはずなのに、どんなことがあっても彼と共に生きると自分で決めたのに。
どうしても。
ピポピポーン。
ドアの向こうからインターホンの鳴る音がする。
カエデが呼んだ警察が尋ねてきたのだろう。
なぜか重く怠い体を持てあましながら、アヤメはぼんやりとリビングに続く部屋のドアを見つめた。
(そうだ。あの日、私はあのドアから、このベッドで絡む二人を…)
急に、自分が寝ているベッドが酷く穢く汚らわしい場所のように思え、アヤメは起き上がった。
夫のカエデが、エリカの体を引き寄せベッドで戯れる残像が浮かぶ。
アヤメはベッドから立ち上がり、その場から離れようとする。
ゆっくりと、少しずつ後退り、背中が壁についた。
残像が離れない。ずっと忘れていたのに、気にしない様にしていたのに。
嫌な記憶が目の前で何度も繰り返される。
アヤメは両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んで涙を流した。
「もう、嫌。気持ち悪い。どうすればいいの?」
アヤメの頬を伝い、雫が床にポタリと落ちた。
9か月前の事が思い出される。まだ一年も経っていないのに、遥か昔のように感じる。夫とエリカが一緒にいる所を見た後、色んな事があった。警察に連れて行かれ、釈放されてすぐに親友の死、事故で記憶を失った夫、義父鬼柳サカキの殺人容疑と失踪。色んな事があり、義姉の事を忘れていた。
ううん。思い出したくなかっただけかもしれない。
意識的に彼女の事を、彼女と夫の事を考えない様にしていたかもしれない。
なにより彼は覚えていない。
彼に思い出してほしくない。
決心したはずなのに、どんなことがあっても彼と共に生きると自分で決めたのに。
どうしても。
ピポピポーン。
ドアの向こうからインターホンの鳴る音がする。
カエデが呼んだ警察が尋ねてきたのだろう。
なぜか重く怠い体を持てあましながら、アヤメはぼんやりとリビングに続く部屋のドアを見つめた。
(そうだ。あの日、私はあのドアから、このベッドで絡む二人を…)
急に、自分が寝ているベッドが酷く穢く汚らわしい場所のように思え、アヤメは起き上がった。
夫のカエデが、エリカの体を引き寄せベッドで戯れる残像が浮かぶ。
アヤメはベッドから立ち上がり、その場から離れようとする。
ゆっくりと、少しずつ後退り、背中が壁についた。
残像が離れない。ずっと忘れていたのに、気にしない様にしていたのに。
嫌な記憶が目の前で何度も繰り返される。
アヤメは両手で顔を覆い、その場にしゃがみ込んで涙を流した。
「もう、嫌。気持ち悪い。どうすればいいの?」
アヤメの頬を伝い、雫が床にポタリと落ちた。
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