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カエデ
3.下飛
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カエデは、妻が「土家アケビ」の強盗傷害容疑で警察に連れて行かれた後、会社へ向かった。アヤメが、誰かに危害を加えるなんて信じられない。絶対に間違っている。今更ながら、昨晩コンビニに行くと出かけたアヤメに付き添わなかった自分の行動が悔やまれた。
「おはようございます。」
カエデは、病気の為通院する事が増えた母鬼柳ウメに代わりに鬼柳財閥の経営していた。半年前に副社長に任命され、それなりの成果を上げている。
副社長室に秘書の風姿ワタが数冊の書類を持って入ってきた。母は時折会社に訪れるが、現在はほとんどの業務をカエデが引き継ぎ遂行していた。
「風姿君。妻が強盗傷害容疑で警察に連れて行かれた。被害者の土屋アケビという名の人物を調べてくれ。一緒に土屋アケビの親族についても。アヤメがそんな事をするなんて信じられない。必要なら被害者の親族と交渉してでも、早々にアヤメが警察から解放されるようにしたい」
「アヤメ様が?確か昨晩は結婚記念日を祝うとおっしゃっていましたよね」
「ああ、いろいろあって、妻と一緒にいなかった。君は美澤エリカという人物を知っているか?数か月前の事故の時に、俺と関りがあったみたいだが」
「美澤エリカですか?いえ、ウメ様の指示を受けカエデ様に私がコンタクトを取るにあたって、貴方様の周辺人物は一通り調査を行いました。美澤エリカという人物は、カエデ様の周辺に存在しなかったはずです。美澤エリカについても調べた方がよろしいですか?」
「イヤ。まずは妻が解放される事を優先してほしい。被害者の土屋アケビは意識を失っていると聞いた。彼女の親戚が見つかれば、先に交渉しようと思っている」
「分かりました」
風姿ワタが去って行った副社長室は、静まり返った。
天井まで続く巨大なガラス張りの窓から、外を眺める。
遙か下の建物の上を、複数の鳥が飛びながら旋回している。
アヤメが、犯人ではない。そう信じている。彼女が警察署へ行く必要なんてなかったはずだ。でも、なぜか妻がカエデから離れようとしているような気がする。こんな状況なのに、妻に避けられているような気がして落ち着かない。
以前にも同じような事があったような…
カエデは、デスクへ戻り、書類に目を通していった。
コンコン。
ドアがノックされ開かれる。
「カエデ。アヤメさんが警察へ連行されたと聞いたわ。何があったの?」
副社長室に入って来たのは、母の鬼柳ウメだった。癌を患っている母の治療は順調で、最近は体調が良さそうだ。元々細身だった母は、複数回の抗がん剤治療で体重が激減した。今でも、毎週通院している。
「今朝土屋アケビという人物への強盗傷害容疑で、警察につれていかれました。土屋家についてご存じでしょうか?」
「土屋家?確か、かなりの土地を所有している地主一家だわ。数年前に跡取り息子が亡くなってから、疎遠になった娘と、その子供を探していたはずよ。見つかったという話は聞かないけれど」
プルルルル、プルルルル、プルルルル。
その時、社用スマホが鳴った。
カエデは、スマホ画面をスライドして電話に出る。
「副社長。受付に来てください。どうしても社長に合わせてくれと暴れている女性がいます」
カエデは、母の方を見て言った。
「社長に?」
「はい。鬼柳家に関りがあると主張していて、どうしても社長に会うと。本当に社長の親戚でしたら、私共は手が出せません」
「わかった。すぐに向かう」
カエデは、母と目配せをしてエントランスホールの受付へ向かった。
「おはようございます。」
カエデは、病気の為通院する事が増えた母鬼柳ウメに代わりに鬼柳財閥の経営していた。半年前に副社長に任命され、それなりの成果を上げている。
副社長室に秘書の風姿ワタが数冊の書類を持って入ってきた。母は時折会社に訪れるが、現在はほとんどの業務をカエデが引き継ぎ遂行していた。
「風姿君。妻が強盗傷害容疑で警察に連れて行かれた。被害者の土屋アケビという名の人物を調べてくれ。一緒に土屋アケビの親族についても。アヤメがそんな事をするなんて信じられない。必要なら被害者の親族と交渉してでも、早々にアヤメが警察から解放されるようにしたい」
「アヤメ様が?確か昨晩は結婚記念日を祝うとおっしゃっていましたよね」
「ああ、いろいろあって、妻と一緒にいなかった。君は美澤エリカという人物を知っているか?数か月前の事故の時に、俺と関りがあったみたいだが」
「美澤エリカですか?いえ、ウメ様の指示を受けカエデ様に私がコンタクトを取るにあたって、貴方様の周辺人物は一通り調査を行いました。美澤エリカという人物は、カエデ様の周辺に存在しなかったはずです。美澤エリカについても調べた方がよろしいですか?」
「イヤ。まずは妻が解放される事を優先してほしい。被害者の土屋アケビは意識を失っていると聞いた。彼女の親戚が見つかれば、先に交渉しようと思っている」
「分かりました」
風姿ワタが去って行った副社長室は、静まり返った。
天井まで続く巨大なガラス張りの窓から、外を眺める。
遙か下の建物の上を、複数の鳥が飛びながら旋回している。
アヤメが、犯人ではない。そう信じている。彼女が警察署へ行く必要なんてなかったはずだ。でも、なぜか妻がカエデから離れようとしているような気がする。こんな状況なのに、妻に避けられているような気がして落ち着かない。
以前にも同じような事があったような…
カエデは、デスクへ戻り、書類に目を通していった。
コンコン。
ドアがノックされ開かれる。
「カエデ。アヤメさんが警察へ連行されたと聞いたわ。何があったの?」
副社長室に入って来たのは、母の鬼柳ウメだった。癌を患っている母の治療は順調で、最近は体調が良さそうだ。元々細身だった母は、複数回の抗がん剤治療で体重が激減した。今でも、毎週通院している。
「今朝土屋アケビという人物への強盗傷害容疑で、警察につれていかれました。土屋家についてご存じでしょうか?」
「土屋家?確か、かなりの土地を所有している地主一家だわ。数年前に跡取り息子が亡くなってから、疎遠になった娘と、その子供を探していたはずよ。見つかったという話は聞かないけれど」
プルルルル、プルルルル、プルルルル。
その時、社用スマホが鳴った。
カエデは、スマホ画面をスライドして電話に出る。
「副社長。受付に来てください。どうしても社長に合わせてくれと暴れている女性がいます」
カエデは、母の方を見て言った。
「社長に?」
「はい。鬼柳家に関りがあると主張していて、どうしても社長に会うと。本当に社長の親戚でしたら、私共は手が出せません」
「わかった。すぐに向かう」
カエデは、母と目配せをしてエントランスホールの受付へ向かった。
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