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ルミアはロンと一晩中一緒にいた。
何度も体を合わせ繋げる。
久しぶりに出会ったはずなのに、ずっと一緒にいたようにも感じる。
コンコン
ドアを叩く音がしてルミアは薄っすらと瞳を開けた。
薄暗闇の中、隣で寝ていたロンが起きてドアへ向かう気配がする。
けだるい体を持て余しながらルミアは横になっていた。
ロンは、昨日食事を運んできた女使用人と話をしているようだ。
「ご主人様。彼女はどういう事ですか!婚約者様が待っているというのに、どうされるおつもりですか?その娘は誰にも認められません」
「余計な事をいうな。やっと逢えた子だ。必ず連れて帰る。」
「貴方様の相手にはふさわしくありません。この事は母君様に報告させていただきます」
「好きにしてくれ」
バタバタバタバタ
足音と低い男性の声が聞こえてきた。
「主。痕跡を見つけました。やはり襲撃はインダルア王国の仕業みたいです。山小屋で潜伏していた実行犯を捉えています。」
ロンが言った。
「分かった。すぐに向かう。」
衣擦れの音が聞こえてくる。ロンが着替えているようだ。
ルミアは、覚めた頭で瞳を閉じたまま身動きできずにいた。
(ロンには婚約者がいる。国でロンの事を待っている。)
ルミアはずっと待っていた。ロンの事を想っていた。毎日、何度も。
ああ、そうか。私だけじゃなかったのだ。
正式な約束もなく、身分もなく、家族もいない私はロンにはふさわしくない。
彼の婚約者には、きっと家族の信頼と確かな約束、安定した居場所だってある。
ルミアには、どうしても手に入れられない物だ。いくら頑張っても砂のように指から零れ落ちる。
(私はロンの側にいてもいいの?。)
結婚なんてできなくてもいい。ただ側にいるだけでいい。
でも、、、
「ルミア。まだ寝ている?」
考え事をしているルミアの頭をそっとロンが撫でてきた。
ルミアは、小さなかすれた声で答えた。
「…ロン。まだ夜でしょ。どうしたの?」
「少し用事ができたから行ってくるよ。一日もかからないと思う。必ずここで待っていて。」
ロンは、ルミアの左手のシルバーの指輪にキスをした。
約束を確かめるように。
「・・・」
ルミアは、胸が苦しく、どうしても返事をする事ができなかった。
ドアの向こうから声がする。
「主、急いでください」
「分かった。今行く」
ガシャーン。
ドアが閉まる音が酷く大きく聞こえた。
ロンの側にはいられないかもしれない。やっと出会えたのに。こんなに想っているのに。
側にいれば触れたくなる。触れたらもっと欲しくなる。
ただの使用人として彼の側で働きながら、ロンと婚約者の姿を見るなんて、今はもう耐えられそうにない。
ルミアは、ベッドの中で体を丸め一粒の涙を流した。
何度も体を合わせ繋げる。
久しぶりに出会ったはずなのに、ずっと一緒にいたようにも感じる。
コンコン
ドアを叩く音がしてルミアは薄っすらと瞳を開けた。
薄暗闇の中、隣で寝ていたロンが起きてドアへ向かう気配がする。
けだるい体を持て余しながらルミアは横になっていた。
ロンは、昨日食事を運んできた女使用人と話をしているようだ。
「ご主人様。彼女はどういう事ですか!婚約者様が待っているというのに、どうされるおつもりですか?その娘は誰にも認められません」
「余計な事をいうな。やっと逢えた子だ。必ず連れて帰る。」
「貴方様の相手にはふさわしくありません。この事は母君様に報告させていただきます」
「好きにしてくれ」
バタバタバタバタ
足音と低い男性の声が聞こえてきた。
「主。痕跡を見つけました。やはり襲撃はインダルア王国の仕業みたいです。山小屋で潜伏していた実行犯を捉えています。」
ロンが言った。
「分かった。すぐに向かう。」
衣擦れの音が聞こえてくる。ロンが着替えているようだ。
ルミアは、覚めた頭で瞳を閉じたまま身動きできずにいた。
(ロンには婚約者がいる。国でロンの事を待っている。)
ルミアはずっと待っていた。ロンの事を想っていた。毎日、何度も。
ああ、そうか。私だけじゃなかったのだ。
正式な約束もなく、身分もなく、家族もいない私はロンにはふさわしくない。
彼の婚約者には、きっと家族の信頼と確かな約束、安定した居場所だってある。
ルミアには、どうしても手に入れられない物だ。いくら頑張っても砂のように指から零れ落ちる。
(私はロンの側にいてもいいの?。)
結婚なんてできなくてもいい。ただ側にいるだけでいい。
でも、、、
「ルミア。まだ寝ている?」
考え事をしているルミアの頭をそっとロンが撫でてきた。
ルミアは、小さなかすれた声で答えた。
「…ロン。まだ夜でしょ。どうしたの?」
「少し用事ができたから行ってくるよ。一日もかからないと思う。必ずここで待っていて。」
ロンは、ルミアの左手のシルバーの指輪にキスをした。
約束を確かめるように。
「・・・」
ルミアは、胸が苦しく、どうしても返事をする事ができなかった。
ドアの向こうから声がする。
「主、急いでください」
「分かった。今行く」
ガシャーン。
ドアが閉まる音が酷く大きく聞こえた。
ロンの側にはいられないかもしれない。やっと出会えたのに。こんなに想っているのに。
側にいれば触れたくなる。触れたらもっと欲しくなる。
ただの使用人として彼の側で働きながら、ロンと婚約者の姿を見るなんて、今はもう耐えられそうにない。
ルミアは、ベッドの中で体を丸め一粒の涙を流した。
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