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それからの絆
【九】ぽかぽかの昼下がり
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「…星が大人になっちゃった…」
「…はあ…おめでとうございます…」
今朝起きたら既に星は居なかった。
四時ぐらいに起きて、笑顔で帰って行ったと雪緒から聞いた。
どんな話をしたのかは聞かなかったが。
やはり星は雪緒の言う事は素直に聞くらしい。
流石雪緒だ。
そして、厄介事が解決した俺は晴れ晴れとした気持ちで出勤して、司令に捕まった。
「朝、帰って来た星が笑顔で起こしてくれたの。あんなに嫌がってたのに、縁談の相手方に会うって言ってくれたの。ねえ、君、星に何をしたの!? まさか、星を手籠め…っ…!!」
「馬鹿な事を言わないで下さいっ!! 私にも選ぶ権利はありますっ!!」
バンッと音を立てて司令が机に両手を置いて立ち上がったから、俺もその机に両手を叩き付けて怒鳴った。
「何かね!? その言い方は!? 星に不満があるとでも!? そもそも君には雪緒君が居るのに、その言い方はないかと思うがね!? 雪緒君に言っちゃうよ!? 君は、そんな機会があれば、ほいほい乗る男だとっ!!」
あまりの物言いに頭が痛いし、眩暈がする。
「何故そうなるのですか!? 過去の事は置いといて、今は雪緒だけですからっ!! 貴方にとやかく言われる筋合いはありませんっ!!」
「本当にそうなのかね!? その割には雪緒君に手を出して居ない様だがね!? 猛君が泣いていたよ!? 欲求不満の解消に隊員達を扱くのは止めてくれとね!!」
天野、あいつっ!!
「それは天野の虚言です!! そんな戯言を司令は信じるのですか!?」
「と云う訳で命令だ。段取りをするから、再来週の土曜日、休みを取りたまえ!」
「はあっ!?」
◇
「ふわあああ~…僕、旅館のお食事処なんて初めてです…百貨店の物とはまただいぶ感じが違いますね…」
白いテーブルクロスの掛けられたテーブル席にて、俺の前に座る雪緒が目を丸くして周囲を見渡していた。
「そうか…」
俺達は旅館…ホテルへと来ていた。
広い空間のここは、ホテル内にあるレストランだ。
天井には目が痛くなる様なシャンデリアが大きな物を中心として、その周りを囲む様に小型の物が幾つかぶら下がっていた。
六年前の日蝕の時に妖に襲撃され壊されて、鉄筋コンクリートの物に建て直されたそうだ。
何故、こんな場所に居るのか?
それは。
『星のお見合いについて来て! 私一人じゃ不安だから!』
と、司令が泣きついて来たからだ。
…幾つだ、あの親父…。
大体、一人ではないだろう。星と二人だろうが。
相手方だって両親と共に来るのだろう? 仲人だって居るのではないのか? 一人では無いだろうが。
俺がそう言えば司令は泣き真似をしながら『雪緒君に無い事ある事無い事言うからねっ!』と、いつぞやみたく脅迫してくれた。
料亭なぞ堅苦しいし、それに『ホテルでランチ気分で気軽に』と、云うのが近年の主流だと教えられた。
レストランは席ごとの間隔が広く屏風で仕切られていて、他の客の様子が解らない様になっていた。
この一角の何処かに、司令達が居るのだが。
恐らくは、奥まった場所の、完全にこちらからは見えない様に屏風が配置されている、あそこに居るのだろう。
まあ、確かに料亭なぞ元気が余りある星には似合わないな。かと言って、こう云った豪奢な雰囲気が似合うのかと問われれば首を傾げるしかないのだが。しかし、見合いでそこいらの食堂や呑み屋を選ぶ訳にもいかないだろう。
窓の外を見れば、僅かに色付いた楓等が見える。
来週には、色とりどりの紅葉が見られる事だろう。
「旦那様、旦那様、見て下さい。綺麗な盛り付けですよね。食べてしまうのが惜しいです」
雪緒がフォークを手に、目の前にあるサラダを見て笑った。
腹の中に入ればどれも同じだと思うのだが。
こんな盛り付けに時間を使わずに、さっさと提供しろと言いたいが、それを口にすればその見た目を楽しんでいる雪緒の気分を害するのは見えているから、俺はただ頷いた。
それに、ここの代金は司令持ちだ。
別段俺達はする事は無い。
ただ、同じ空間に居てくれれば良いと言われた。
まあ、それで司令が安心だと云うのならば、せっかくの機会だし、こちらはこちらで楽しませて貰おう。
目を輝かせて『クルトンが~』とか言っている雪緒を見るのは楽しい。
普段は雪緒が料理をしているから、たまにはこうして外食をするのも悪くは無い。
休日等、外食へと誘っても『僕が作った物を旦那様が残さず食べて下さるのが嬉しいのです』と言われてしまえば、それ以上を口にする事は出来ずに、なかなか機会が無かった。
しかし、こうして料理を目で楽しんで『このソースは~』とか、味の探求をする雪緒を見るのは楽しい。
やはり、もっと強く外食へと誘おう。
「それにしても宜しいのでしょうか…。決断されたのは星様で、僕は特に何もしていませんのに…」
コンソメスープを口に含んだ後で、雪緒が申し訳無さそうに言って来た。
雪緒は司令からの感謝の気持ちだと云う事しか知らない。まあ、実際にそれもあるのだから、間違いでは無い。と云うか最初から素直にそう言えば良い物をあの親父は。
「ああ、気にするな。司令がそう言うのだから、素直に受け取って置け。こうして、お前の食べる姿を見るのは俺も楽しいし、嬉しい」
「ふぁ…い」
雪緒の目を真っ直ぐと見てそう言えば、雪緒は顔を赤くして俯いてしまった。
俺がこう云う事を口にする度に、雪緒は照れて俯いてしまう。
いい加減に慣れてくれと思うのだが、その様が可愛らしく、また愛しくて。
そんな風に思う自分が何故だかむず痒く、俺は手を伸ばして雪緒の鼻を摘まむ。
そうすれば雪緒は眉を下げて、頬を緩ませて顔を上げる。
その瞬間が、また堪らなく幸せだと感じるのだから、本当にどうしようもない。
食事を終えた後は、このホテル自慢の庭を散策してから帰ろう。
「…はあ…おめでとうございます…」
今朝起きたら既に星は居なかった。
四時ぐらいに起きて、笑顔で帰って行ったと雪緒から聞いた。
どんな話をしたのかは聞かなかったが。
やはり星は雪緒の言う事は素直に聞くらしい。
流石雪緒だ。
そして、厄介事が解決した俺は晴れ晴れとした気持ちで出勤して、司令に捕まった。
「朝、帰って来た星が笑顔で起こしてくれたの。あんなに嫌がってたのに、縁談の相手方に会うって言ってくれたの。ねえ、君、星に何をしたの!? まさか、星を手籠め…っ…!!」
「馬鹿な事を言わないで下さいっ!! 私にも選ぶ権利はありますっ!!」
バンッと音を立てて司令が机に両手を置いて立ち上がったから、俺もその机に両手を叩き付けて怒鳴った。
「何かね!? その言い方は!? 星に不満があるとでも!? そもそも君には雪緒君が居るのに、その言い方はないかと思うがね!? 雪緒君に言っちゃうよ!? 君は、そんな機会があれば、ほいほい乗る男だとっ!!」
あまりの物言いに頭が痛いし、眩暈がする。
「何故そうなるのですか!? 過去の事は置いといて、今は雪緒だけですからっ!! 貴方にとやかく言われる筋合いはありませんっ!!」
「本当にそうなのかね!? その割には雪緒君に手を出して居ない様だがね!? 猛君が泣いていたよ!? 欲求不満の解消に隊員達を扱くのは止めてくれとね!!」
天野、あいつっ!!
「それは天野の虚言です!! そんな戯言を司令は信じるのですか!?」
「と云う訳で命令だ。段取りをするから、再来週の土曜日、休みを取りたまえ!」
「はあっ!?」
◇
「ふわあああ~…僕、旅館のお食事処なんて初めてです…百貨店の物とはまただいぶ感じが違いますね…」
白いテーブルクロスの掛けられたテーブル席にて、俺の前に座る雪緒が目を丸くして周囲を見渡していた。
「そうか…」
俺達は旅館…ホテルへと来ていた。
広い空間のここは、ホテル内にあるレストランだ。
天井には目が痛くなる様なシャンデリアが大きな物を中心として、その周りを囲む様に小型の物が幾つかぶら下がっていた。
六年前の日蝕の時に妖に襲撃され壊されて、鉄筋コンクリートの物に建て直されたそうだ。
何故、こんな場所に居るのか?
それは。
『星のお見合いについて来て! 私一人じゃ不安だから!』
と、司令が泣きついて来たからだ。
…幾つだ、あの親父…。
大体、一人ではないだろう。星と二人だろうが。
相手方だって両親と共に来るのだろう? 仲人だって居るのではないのか? 一人では無いだろうが。
俺がそう言えば司令は泣き真似をしながら『雪緒君に無い事ある事無い事言うからねっ!』と、いつぞやみたく脅迫してくれた。
料亭なぞ堅苦しいし、それに『ホテルでランチ気分で気軽に』と、云うのが近年の主流だと教えられた。
レストランは席ごとの間隔が広く屏風で仕切られていて、他の客の様子が解らない様になっていた。
この一角の何処かに、司令達が居るのだが。
恐らくは、奥まった場所の、完全にこちらからは見えない様に屏風が配置されている、あそこに居るのだろう。
まあ、確かに料亭なぞ元気が余りある星には似合わないな。かと言って、こう云った豪奢な雰囲気が似合うのかと問われれば首を傾げるしかないのだが。しかし、見合いでそこいらの食堂や呑み屋を選ぶ訳にもいかないだろう。
窓の外を見れば、僅かに色付いた楓等が見える。
来週には、色とりどりの紅葉が見られる事だろう。
「旦那様、旦那様、見て下さい。綺麗な盛り付けですよね。食べてしまうのが惜しいです」
雪緒がフォークを手に、目の前にあるサラダを見て笑った。
腹の中に入ればどれも同じだと思うのだが。
こんな盛り付けに時間を使わずに、さっさと提供しろと言いたいが、それを口にすればその見た目を楽しんでいる雪緒の気分を害するのは見えているから、俺はただ頷いた。
それに、ここの代金は司令持ちだ。
別段俺達はする事は無い。
ただ、同じ空間に居てくれれば良いと言われた。
まあ、それで司令が安心だと云うのならば、せっかくの機会だし、こちらはこちらで楽しませて貰おう。
目を輝かせて『クルトンが~』とか言っている雪緒を見るのは楽しい。
普段は雪緒が料理をしているから、たまにはこうして外食をするのも悪くは無い。
休日等、外食へと誘っても『僕が作った物を旦那様が残さず食べて下さるのが嬉しいのです』と言われてしまえば、それ以上を口にする事は出来ずに、なかなか機会が無かった。
しかし、こうして料理を目で楽しんで『このソースは~』とか、味の探求をする雪緒を見るのは楽しい。
やはり、もっと強く外食へと誘おう。
「それにしても宜しいのでしょうか…。決断されたのは星様で、僕は特に何もしていませんのに…」
コンソメスープを口に含んだ後で、雪緒が申し訳無さそうに言って来た。
雪緒は司令からの感謝の気持ちだと云う事しか知らない。まあ、実際にそれもあるのだから、間違いでは無い。と云うか最初から素直にそう言えば良い物をあの親父は。
「ああ、気にするな。司令がそう言うのだから、素直に受け取って置け。こうして、お前の食べる姿を見るのは俺も楽しいし、嬉しい」
「ふぁ…い」
雪緒の目を真っ直ぐと見てそう言えば、雪緒は顔を赤くして俯いてしまった。
俺がこう云う事を口にする度に、雪緒は照れて俯いてしまう。
いい加減に慣れてくれと思うのだが、その様が可愛らしく、また愛しくて。
そんな風に思う自分が何故だかむず痒く、俺は手を伸ばして雪緒の鼻を摘まむ。
そうすれば雪緒は眉を下げて、頬を緩ませて顔を上げる。
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