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それぞれの絆
【旦】二人で在る事
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「…ああ、やはり雪緒が作る物は旨いな」
「…ありがとうございます…」
味噌汁を一口飲んでから、俺がそう言えば、雪緒は目を泳がせた後、俯いて答えた。
あれから二人で大掃除をして、今は夕餉時だ。照れて拗ねていた雪緒も、俺が作った飯を口にした時に、何とも微妙な顔をした後に笑顔になり『お礼ですものね』と、大掃除で俺をこき使ってくれた。
…いや…まあ…雪緒の事だから、俺が言った『礼』の意味を勘違いしているとは思ったが。本当に期待を裏切らない奴だ。
そして、今はこうして夜になり、落ち着いた時間が来て、俺が日中に口にした事が脳裏を過っているのだろう。
…からかい過ぎた…か?
しかし、どうにもこいつがおかしな事を考えて、それを不安に思っているとしか思えないのだ。ならば、その不安を取り除いてやりたいと思うではないか。それが、二人で居る事、夫夫の在り方だと思うのだが。
雪緒なら解ってくれるだろう、と云うのは甘えだ。それは十年程前に、痛感させられた。だから、雪緒が解ったと頷くまで、何度も言葉にするだけだ。遠慮は要らないと解らせてやる。
「…旨かった。御馳走様。晩酌は風呂の後にする」
箸を置き、顔の前で手を合わせて言えば、雪緒は『はい』と静かに頷いた。
◇
「ふえっ!?」
「やはりな」
風呂から出て、晩酌の用意が出来ている卓袱台に俺が着いた後、雪緒は『ごゆっくり』と、いそいそと風呂へと行った。
誰がゆっくりなぞするか。
手早く俺は用意されていた物を片付け、ここに来た。
「な、何故、僕のお部屋に!?」
そう、雪緒の部屋に、だ。
「お前が逃げると思ったからだ。そら、手拭いを寄越せ。髪を拭いてやろう」
「うっ、あ…ゆ、紫様のお手を煩わす訳には…」
「俺がそうしたいんだ。ほら、座れ」
俺が来た時には、既に敷いてあった布団の上で胡座を掻き、その前に座る様に軽く布団を叩けば、雪緒は俯きながら、大人しく正座をして、手にしていた手拭いを寄越して来た。
風呂上がりのせいだけでは無く、赤く火照った身体に欲が湧かないと言えば嘘になるが。
「…安心しろ。まだ、疲れも取れない処に、大掃除もした。今夜はただ寝るだけだ」
「…で、ですが…その…っ…、こ、とばを…っ…!」
「ああ、お前が眠るまで、この胸に抱き締めながら言ってやる。何を不安に思っているのかは知らんが、俺はどんなお前だろうと愛している。誰に何を言われても、これは変わらん。お前が俺を嫌うと言」
「その様な事は有り得ませんっ! 僕が紫様に嫌われる事はありましても、僕が紫様をお嫌いになるだなんてあり得ませんっ! 神様、いえ、奥様に誓ってっ!!」
嫌うと言っても離すつもりは無いと言う前に、雪緒が顔を上げて俺を睨む様にして言って来た。
「ぶっ!!」
雪緒の髪を拭きながら、俺は思わず噴き出し、そのまま片手で腹を押さえて肩を揺らしてしまう。
神では無く、鞠子に誓うのが、こいつらしい。
「そ…っ、その様にお笑いにならなくても…っ…! 奥様に失礼です…っ…!!」
「いや、すまん。…鞠子も喜ぶだろう。俺も鞠子に誓おう。何があっても、お前から離れる事はないと。ずっと、お前を愛し続けると。俺の隣に居るのは、居て欲しいのは、お前だけだと。お前以外は要らないと。だから、何を不安に思っているのかは知らんが、安心して俺の傍に居ろ」
「…ふが…」
腹を押さえる手を離し、その手で雪緒の鼻を摘まみ、髪を拭いていた手で頭を撫で、真っ直ぐと涙で滲む丸い目を見ながら言えば、雪緒は小さく頷いた。
それから、二人で雪緒の布団で横になって、宣言通りに抱き締めながら、愛していると囁けば、雪緒は眠りに落ちるまで、ひたすら『ふえぇ…』、『ふえぇ~…』と、情けない声を出し続けていた。
…本当に慣れる日が来るのかと、遠い目をした事は秘密にして置こうと思う。
「…ありがとうございます…」
味噌汁を一口飲んでから、俺がそう言えば、雪緒は目を泳がせた後、俯いて答えた。
あれから二人で大掃除をして、今は夕餉時だ。照れて拗ねていた雪緒も、俺が作った飯を口にした時に、何とも微妙な顔をした後に笑顔になり『お礼ですものね』と、大掃除で俺をこき使ってくれた。
…いや…まあ…雪緒の事だから、俺が言った『礼』の意味を勘違いしているとは思ったが。本当に期待を裏切らない奴だ。
そして、今はこうして夜になり、落ち着いた時間が来て、俺が日中に口にした事が脳裏を過っているのだろう。
…からかい過ぎた…か?
しかし、どうにもこいつがおかしな事を考えて、それを不安に思っているとしか思えないのだ。ならば、その不安を取り除いてやりたいと思うではないか。それが、二人で居る事、夫夫の在り方だと思うのだが。
雪緒なら解ってくれるだろう、と云うのは甘えだ。それは十年程前に、痛感させられた。だから、雪緒が解ったと頷くまで、何度も言葉にするだけだ。遠慮は要らないと解らせてやる。
「…旨かった。御馳走様。晩酌は風呂の後にする」
箸を置き、顔の前で手を合わせて言えば、雪緒は『はい』と静かに頷いた。
◇
「ふえっ!?」
「やはりな」
風呂から出て、晩酌の用意が出来ている卓袱台に俺が着いた後、雪緒は『ごゆっくり』と、いそいそと風呂へと行った。
誰がゆっくりなぞするか。
手早く俺は用意されていた物を片付け、ここに来た。
「な、何故、僕のお部屋に!?」
そう、雪緒の部屋に、だ。
「お前が逃げると思ったからだ。そら、手拭いを寄越せ。髪を拭いてやろう」
「うっ、あ…ゆ、紫様のお手を煩わす訳には…」
「俺がそうしたいんだ。ほら、座れ」
俺が来た時には、既に敷いてあった布団の上で胡座を掻き、その前に座る様に軽く布団を叩けば、雪緒は俯きながら、大人しく正座をして、手にしていた手拭いを寄越して来た。
風呂上がりのせいだけでは無く、赤く火照った身体に欲が湧かないと言えば嘘になるが。
「…安心しろ。まだ、疲れも取れない処に、大掃除もした。今夜はただ寝るだけだ」
「…で、ですが…その…っ…、こ、とばを…っ…!」
「ああ、お前が眠るまで、この胸に抱き締めながら言ってやる。何を不安に思っているのかは知らんが、俺はどんなお前だろうと愛している。誰に何を言われても、これは変わらん。お前が俺を嫌うと言」
「その様な事は有り得ませんっ! 僕が紫様に嫌われる事はありましても、僕が紫様をお嫌いになるだなんてあり得ませんっ! 神様、いえ、奥様に誓ってっ!!」
嫌うと言っても離すつもりは無いと言う前に、雪緒が顔を上げて俺を睨む様にして言って来た。
「ぶっ!!」
雪緒の髪を拭きながら、俺は思わず噴き出し、そのまま片手で腹を押さえて肩を揺らしてしまう。
神では無く、鞠子に誓うのが、こいつらしい。
「そ…っ、その様にお笑いにならなくても…っ…! 奥様に失礼です…っ…!!」
「いや、すまん。…鞠子も喜ぶだろう。俺も鞠子に誓おう。何があっても、お前から離れる事はないと。ずっと、お前を愛し続けると。俺の隣に居るのは、居て欲しいのは、お前だけだと。お前以外は要らないと。だから、何を不安に思っているのかは知らんが、安心して俺の傍に居ろ」
「…ふが…」
腹を押さえる手を離し、その手で雪緒の鼻を摘まみ、髪を拭いていた手で頭を撫で、真っ直ぐと涙で滲む丸い目を見ながら言えば、雪緒は小さく頷いた。
それから、二人で雪緒の布団で横になって、宣言通りに抱き締めながら、愛していると囁けば、雪緒は眠りに落ちるまで、ひたすら『ふえぇ…』、『ふえぇ~…』と、情けない声を出し続けていた。
…本当に慣れる日が来るのかと、遠い目をした事は秘密にして置こうと思う。
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