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それぞれの絆
【猛】波に揺られて
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ザン…ザザンと、青い空と白い雲の下で、その色を映した大量の水が揺れていた。
海なんて見たのは、どれぐらいぶりかなあなんて思いながら、俺は見るとも無しに見ていた。
そんな俺の直ぐ前には、縄がピンと張られていて『立ち入り禁止』の札が下げられていた。それは、つい一週間前に、この崖から身を投げた女性が居たからだ。
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』と云う、とても綺麗な女性だったらしい。
愛する夫を亡くし、死地への旅路を求めて来たのだろうと云う噂だ。
そんな事を思う俺の隣では、一人の女性が涙を流している。
「…さよなら、アタイ…元気でね…」
うん、みくちゃんなんだけどな!
因みにその噂を流したのは、俺だけどな!
一週間前に、みくちゃんとこの街に来た。まあ、俺はみくちゃんに姿を見えない様にして貰っていたから、この街に降り立ったのは、みくちゃん一人だけにしか見えなかっただろう。
みくちゃんは、愛する夫の遺骨の入った壺を胸に抱いてふらふらと力なく歩き、この崖に辿り着き、暫く海を見た後にそこから飛び降りた。
まあ、その遺骨は熊の腕だし、元妖のみくちゃんは、こんな崖…高さにして二十メートルぐらいか? から飛び降りた処で、ピンピンしているけどな。人体の不思議ってか、妖の不思議? 泡食ったのは、それを目撃した奴らだ。すまん。
みくちゃんが崖に辿り着いた処で、俺の存在が見える様になり、少し離れた場所で、崖を指差して俺は声を張り上げた。あそこに誰か居るぞ、と。岩場で釣りをしていた奴らが、それを見て騒然としたのは言うまでもない。誰かが警察を呼びに行き、何人かはみくちゃんを止めに崖へと向かう。俺もその中に混じって走り、途中で身を隠した。皆からの呼び掛けも虚しく、みくちゃんの身体は海の中へと吸い込まれて行った。警察が来て、救助の船も出て、海に潜り捜索も続けられたが、それは昨日で打ち切られた。みくちゃんは遺書を残しているから、それを頼りにして、朱雀へと連絡が行くだろう。葬儀やら何やらは、五十嵐司令が指揮を取ってくれる筈だ。いや、ゆかりんに押し付けられるかもな。里へ行ったら、ゆずっぺか杜川さんに聞こう。
「ほら、みくちゃん。あまり潮風に当たっていると身体がベタベタして来るぞ。顔を見られていなくても、長居は拙い」
悲劇のヒロインとかをやってみたいって、みくちゃんが言い出して、静かになったここに来たんだが、縄の手前には花束やら、供え物が置いてあって、何か申し訳ないなと思ってしまう。
海に飛び込んだみくちゃんは、その身体能力で深く潜り、泳ぎ出し、三キロ程先に見える小さな島へと姿を隠した。夜になり、暗くなった処でそこから離れ、隣の街で宿を取った俺の元へ『やっほ、お待たせ』と笑顔でやって来た。後から連れが来ると宿の主人に伝えていたから、この合流を疑われる事は無かった。みくちゃんの着物も、すっかり乾いていたしな。そして、その街で過ごしながら崖の様子も見つつ、適当に噂も流したりした。
自殺の名所らしい、その場所を選んだのは正解だったと思う。当日は、そりゃ騒然としていたが、今は、割と落ち着いていた。まあ、お陰でこうしていても、ここで身を儚くした人を哀れに思っているのだろうと思われているのか、誰も声を掛けて来ない。
「うん、そうだね! これで、アタイ達は自由だよね! 次は何処の街に行くんだい? 温泉のある街だっけ?」
「ああ。ゆかりん達が行った温泉街だ。土産に貰った酒、美味かったよな? 沢山仕入れて里に送ろう」
俺の言葉に、みくちゃんが自分の顔をペタペタ触りながら、笑う。
朱雀で居た頃は、何処にも連れてってやれなかったから、暫くはあちこちを巡る予定だ。
まあ、朱雀として遠征で行った場所は避けるが。
「うん、それ良いね!」
「みくちゃんは、他に何処に行きたい?」
肩を並べ歩きながらみくちゃんに聞けば、う~んと、軽く唇を尖らせてそこに人差し指をあてる。
「何処でも良いかな。アンタ…タケルと一緒なら、オレ、何処でも良い!」
「そっか!」
そう言って、甘える様に俺の右腕にしがみついて来たみくちゃんの頭を、俺は白い歯を見せて笑いながら、左手でわしゃわしゃと撫でる。
今日は、宿にもう一泊して明日移動だな。
明日、動けるぐらいには加減してくれよな、あーちゃん?
崖に当たる波の音を聴きながら、俺はちょっと苦笑した。
海なんて見たのは、どれぐらいぶりかなあなんて思いながら、俺は見るとも無しに見ていた。
そんな俺の直ぐ前には、縄がピンと張られていて『立ち入り禁止』の札が下げられていた。それは、つい一週間前に、この崖から身を投げた女性が居たからだ。
『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』と云う、とても綺麗な女性だったらしい。
愛する夫を亡くし、死地への旅路を求めて来たのだろうと云う噂だ。
そんな事を思う俺の隣では、一人の女性が涙を流している。
「…さよなら、アタイ…元気でね…」
うん、みくちゃんなんだけどな!
因みにその噂を流したのは、俺だけどな!
一週間前に、みくちゃんとこの街に来た。まあ、俺はみくちゃんに姿を見えない様にして貰っていたから、この街に降り立ったのは、みくちゃん一人だけにしか見えなかっただろう。
みくちゃんは、愛する夫の遺骨の入った壺を胸に抱いてふらふらと力なく歩き、この崖に辿り着き、暫く海を見た後にそこから飛び降りた。
まあ、その遺骨は熊の腕だし、元妖のみくちゃんは、こんな崖…高さにして二十メートルぐらいか? から飛び降りた処で、ピンピンしているけどな。人体の不思議ってか、妖の不思議? 泡食ったのは、それを目撃した奴らだ。すまん。
みくちゃんが崖に辿り着いた処で、俺の存在が見える様になり、少し離れた場所で、崖を指差して俺は声を張り上げた。あそこに誰か居るぞ、と。岩場で釣りをしていた奴らが、それを見て騒然としたのは言うまでもない。誰かが警察を呼びに行き、何人かはみくちゃんを止めに崖へと向かう。俺もその中に混じって走り、途中で身を隠した。皆からの呼び掛けも虚しく、みくちゃんの身体は海の中へと吸い込まれて行った。警察が来て、救助の船も出て、海に潜り捜索も続けられたが、それは昨日で打ち切られた。みくちゃんは遺書を残しているから、それを頼りにして、朱雀へと連絡が行くだろう。葬儀やら何やらは、五十嵐司令が指揮を取ってくれる筈だ。いや、ゆかりんに押し付けられるかもな。里へ行ったら、ゆずっぺか杜川さんに聞こう。
「ほら、みくちゃん。あまり潮風に当たっていると身体がベタベタして来るぞ。顔を見られていなくても、長居は拙い」
悲劇のヒロインとかをやってみたいって、みくちゃんが言い出して、静かになったここに来たんだが、縄の手前には花束やら、供え物が置いてあって、何か申し訳ないなと思ってしまう。
海に飛び込んだみくちゃんは、その身体能力で深く潜り、泳ぎ出し、三キロ程先に見える小さな島へと姿を隠した。夜になり、暗くなった処でそこから離れ、隣の街で宿を取った俺の元へ『やっほ、お待たせ』と笑顔でやって来た。後から連れが来ると宿の主人に伝えていたから、この合流を疑われる事は無かった。みくちゃんの着物も、すっかり乾いていたしな。そして、その街で過ごしながら崖の様子も見つつ、適当に噂も流したりした。
自殺の名所らしい、その場所を選んだのは正解だったと思う。当日は、そりゃ騒然としていたが、今は、割と落ち着いていた。まあ、お陰でこうしていても、ここで身を儚くした人を哀れに思っているのだろうと思われているのか、誰も声を掛けて来ない。
「うん、そうだね! これで、アタイ達は自由だよね! 次は何処の街に行くんだい? 温泉のある街だっけ?」
「ああ。ゆかりん達が行った温泉街だ。土産に貰った酒、美味かったよな? 沢山仕入れて里に送ろう」
俺の言葉に、みくちゃんが自分の顔をペタペタ触りながら、笑う。
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まあ、朱雀として遠征で行った場所は避けるが。
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「何処でも良いかな。アンタ…タケルと一緒なら、オレ、何処でも良い!」
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