旦那様と僕~それから~

三冬月マヨ

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それぞれの絆

【雪】七つの温もり

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 ことこと、ことことと静かな音がお茶の間に響きます。
 ふわふわ、ふわふわと柔らかな湯気がお茶の間を漂っています。

「…うん、こちらも良い感じですね」

 ストーブの上に置いた土鍋の蓋を開けて、僕は頬を緩ませます。
 セリ・ナズナ・ゴギョウ・ハコベラ・ホトケノザ・スズナ・スズシロ。
 春の七草と呼ばれますこちらは、健康に良いと…滋養強壮の効能があると言われています。
 新しい年になりまして、本日で七日目の今日、ゆかり様は隊員の皆様と新年会へと行かれています。皆様方と、お久し振りの酒宴です。年越し前にも忘年会をされていますが、天野様が去られたのが大きかったのでしょう。粛々と行われたとお聞き致しました。その様な事でしたので、年が変わりましたので『心機一転、羽目を外させてやる』と、紫様は張り切っていらっしゃいましたが、どうなりました事でしょうか。

「さて、と」

 鍋つかみを手に嵌めまして、僕はストーブの上から土鍋を下ろします。卓袱台に敷いてあります鍋敷きの上に置きまして、台所へと向かいます。
 ことこと、ことことと、こちらも良い音を立てています。瓦斯台にありますお鍋の中では、橙色の南瓜がほくほくと煮えています。さやえんどうと煮まして、緑との色合いがとても綺麗に映えています。
 そちらを掌大のお皿に盛りました時、からからと玄関の戸の開く音が聞こえました。
 卓袱台の上にお皿を置きまして、ぱたぱたと玄関へと向かいます。

「お帰りなさいませ、紫様」

「ああ。…いい匂いがするな。まだ食ってなかったのか? 先に食って良いと言っただろう?」

 お昼のお弁当箱と、水筒が入った風呂敷包みを受け取りながら、僕は笑います。

「紫様お一人で、食べさせる訳にはいきませんから」

「む…」

 呑み会に行きましても、紫様はお腹がいっぱいになる程にお食べにはなりません。
 それは、僕が作った物を食べる為だと気付いたのは、何時の事でしょうか?

「今日は、七草の日です。胃に優しいので、今の紫様にぴったりですよ。後は、南瓜の煮物としじみのお吸い物を用意しています」

「ああ、有り難い」

 お茶の間へと、並んで歩きながら僕がそう言えば、紫様は細い目を更に細めて笑います。
 本当に、心からそう思って笑って下さる、この笑顔がとても好きです。
 ずっとずっと、この笑顔と共に在りたいと思います。
 ことことと、ふわふわと優しく漂う湯気の様な、その様な温もりを、何時までも大切にして行きたいです。
 紫様も、どうかその様に思っていて下さいます様にと思いながら、僕はお茶碗に七草粥を掬いまして紫様へと渡しました。
 優しく温かな気持ちになれます様に、と。
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