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ギャル親父は壁になりたい
03.次男です
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「あれ…?」
休みが明けて月曜日。何時ものベンチで、風がいい加減冷たくなったと思いながら昼を食べ終え、スマホを見たら、何だかエライ事になっていた。
「何だ? この人型アイコンにハートマークに矢印は?」
ほうじ茶が入っている水筒を横に置き、空いた右手でアイコンをタップすると、青い鳥が起動する。そこにあるアイコンは『バナナチーズ揚げ』前世の俺、澄を示す物だ。
「…は…?」
俺の目は、今、間違いなく点になった事だろう。それ程の衝撃だった。
起動された青い鳥のベルアイコンの処に、数字が表示されていた。その数36。
「な、何だこれ?」
これまでに見た事の無い現象に、俺は戸惑うしかない。
そのベルをタップすれば『通知』と書かれた画面に移動した。
「成程。お知らせって事か。えーと…"しまあつさんが〇件のツイをよっしゃしました"、"しまあつさんが〇件の発言を拡散しました"、"しまあつさんがあなたをフォローしました"、"田中征爾さんが…"って、田中!?」
田中征爾は、昨日読んだ小説を書いた人だ。昨日、澄の感情のまま、叫んだあの…。
「は? フォローされた!? え? 何か返信(?)が来てる!? え、何時の間に!? って、他にも来てる!?」
朝、スマホを見た時は何も無かった。
平日の俺のスマホは、基本的に朝の目覚めのアラームでしか、ない。たまに昼休みに、気になった事を調べる以外は放置だ。
「朝5時にアラームを止めて、それから約7時間の間に…SNS…いや、ネットは怖いな…純文学の方は何も無いから知らなかった…えーと…『率直な意見感謝する。これからも気になった事があれば叫んでくれ。過去の~』、『あんた面白いからフォローした! あ、眼鏡の、魔王勇者シリーズは止めておけ! 脳みそ破壊されるから!』、『澄さん初めまして~。しまあつ君がフォローしたから、私もフォローしちゃった』、『その叫び、良く解るわ! 私もおっくんと同じで、しまあつ君がフォローしたからフォローしたった♡ よろしくね!』って、ええと…どうすれば良いんだ? って、新しい発言を表示? 何だこれは!?」
「…おい…」
落ち着け、落ち着け俺。
貰ったメッセージに返信をしなければ。
「おい」
こんな時、前世の俺ならどう返す?
澄なら…。
「的場っ!!」
「うおっ!?」
ガンッとベンチに衝撃が走り、俺の身体が揺れた。
驚いてスマホから顔を上げれば、俺の目の前には不機嫌そうな矢田が、相変わらず購買のパンとペットボトルの烏龍茶を持ち、右足をベンチの背凭れに乗せて居た。
「びっ…くりしたぞ。行儀が悪いぞ足を下ろせ。って、声を掛けるなら普通に掛けてくれ。あと『先生』を忘れているぞ」
「…声は掛けたし。スマホに夢中で気付かなかったのは的場だろ」
俺が内心で冷や汗を掻きながらそう言えば、矢田はむすっと面白く無さそうな顔と声で、隣に腰掛けた。
「え? あ、そうだったのか。悪いな。昔から集中すると周りの声が聞こえなくなってなあ、良く親や…って、こら」
そう。読むのに集中すると、周りの声が聞こえなくなるのだ。それで、何度怒られたのか解らない。と、言おうとした処で俺の手からスマホが消えた。
「何を熱心に見てたんだよ? まさか、噂の恋人と遣り取り…って、アオッター? …澄? 何だこの名前? 的場の下の名前、次郎太だろ? 何だよ、誰の名前だよ? やっぱ恋人か? あれか? 最近変わったのは恋人が出来たからって本当なのか? 恋人なんて何時出来たんだよ?」
「おい、そんなに目くじら立てて矢継ぎ早に訊いて来るな。落ち着け」
スマホの画面を俺に向けて、目を吊り上げた矢田がグイグイと身体を寄せて聞いて来るから、俺は開いた両手を肩の高さまで上げて、降参のポーズを取って仰け反ってしまう。ただでさえ、眼光が鋭いこいつに睨まれたら堪らない。気の弱い奴なら、裸足で逃げ出す事請け合いだ。
いや、待て。
矢田は何て言った?
恋人? 俺が変わった? 何だ、それは? そんなの俺は知らんぞ? 恋人なんて、ここに来る事になった時に振られて、それっきり出来た事なんかない、ゼロだ。強いて言えば、本が恋人か? って、何でこんなに怒っているんだ?
「…っそ…身だしなみさえ整えなけりゃ…」
目を丸くする俺をじっと睨んだ後、矢田はがくりと肩を落として俯き、ついでに俺の膝の上にスマホをポトリと落とした。
「な、何だ? いきなり落ち込むなよ? 青少年の情緒は激しいな?」
返されたスマホをトートバックに仕舞いながら、俺は矢田の頭にポンと左手を置いた。その下で、矢田がもぞもぞと頭を動かす。
「…落ち込んでねーし…そりゃ的場は大人だし…」
「大人? それが何か関係あるのか? それより、俺が変わったって…恋人って、噂って何だ?」
「そんなの、的場が一番良く知ってんだろ」
「いや、全く知らないし、身に覚えが無いから訊いているんだが?」
「…髪…」
「髪?」
言われて俺は左手を置いている矢田の頭を見る。
「ん? 根元が大分黒くなっているぞ? 染めなくて良いのか? あ、太い毛が出ているな? 煙草止めたのか?」
「俺じゃねーっ!!」
休みが明けて月曜日。何時ものベンチで、風がいい加減冷たくなったと思いながら昼を食べ終え、スマホを見たら、何だかエライ事になっていた。
「何だ? この人型アイコンにハートマークに矢印は?」
ほうじ茶が入っている水筒を横に置き、空いた右手でアイコンをタップすると、青い鳥が起動する。そこにあるアイコンは『バナナチーズ揚げ』前世の俺、澄を示す物だ。
「…は…?」
俺の目は、今、間違いなく点になった事だろう。それ程の衝撃だった。
起動された青い鳥のベルアイコンの処に、数字が表示されていた。その数36。
「な、何だこれ?」
これまでに見た事の無い現象に、俺は戸惑うしかない。
そのベルをタップすれば『通知』と書かれた画面に移動した。
「成程。お知らせって事か。えーと…"しまあつさんが〇件のツイをよっしゃしました"、"しまあつさんが〇件の発言を拡散しました"、"しまあつさんがあなたをフォローしました"、"田中征爾さんが…"って、田中!?」
田中征爾は、昨日読んだ小説を書いた人だ。昨日、澄の感情のまま、叫んだあの…。
「は? フォローされた!? え? 何か返信(?)が来てる!? え、何時の間に!? って、他にも来てる!?」
朝、スマホを見た時は何も無かった。
平日の俺のスマホは、基本的に朝の目覚めのアラームでしか、ない。たまに昼休みに、気になった事を調べる以外は放置だ。
「朝5時にアラームを止めて、それから約7時間の間に…SNS…いや、ネットは怖いな…純文学の方は何も無いから知らなかった…えーと…『率直な意見感謝する。これからも気になった事があれば叫んでくれ。過去の~』、『あんた面白いからフォローした! あ、眼鏡の、魔王勇者シリーズは止めておけ! 脳みそ破壊されるから!』、『澄さん初めまして~。しまあつ君がフォローしたから、私もフォローしちゃった』、『その叫び、良く解るわ! 私もおっくんと同じで、しまあつ君がフォローしたからフォローしたった♡ よろしくね!』って、ええと…どうすれば良いんだ? って、新しい発言を表示? 何だこれは!?」
「…おい…」
落ち着け、落ち着け俺。
貰ったメッセージに返信をしなければ。
「おい」
こんな時、前世の俺ならどう返す?
澄なら…。
「的場っ!!」
「うおっ!?」
ガンッとベンチに衝撃が走り、俺の身体が揺れた。
驚いてスマホから顔を上げれば、俺の目の前には不機嫌そうな矢田が、相変わらず購買のパンとペットボトルの烏龍茶を持ち、右足をベンチの背凭れに乗せて居た。
「びっ…くりしたぞ。行儀が悪いぞ足を下ろせ。って、声を掛けるなら普通に掛けてくれ。あと『先生』を忘れているぞ」
「…声は掛けたし。スマホに夢中で気付かなかったのは的場だろ」
俺が内心で冷や汗を掻きながらそう言えば、矢田はむすっと面白く無さそうな顔と声で、隣に腰掛けた。
「え? あ、そうだったのか。悪いな。昔から集中すると周りの声が聞こえなくなってなあ、良く親や…って、こら」
そう。読むのに集中すると、周りの声が聞こえなくなるのだ。それで、何度怒られたのか解らない。と、言おうとした処で俺の手からスマホが消えた。
「何を熱心に見てたんだよ? まさか、噂の恋人と遣り取り…って、アオッター? …澄? 何だこの名前? 的場の下の名前、次郎太だろ? 何だよ、誰の名前だよ? やっぱ恋人か? あれか? 最近変わったのは恋人が出来たからって本当なのか? 恋人なんて何時出来たんだよ?」
「おい、そんなに目くじら立てて矢継ぎ早に訊いて来るな。落ち着け」
スマホの画面を俺に向けて、目を吊り上げた矢田がグイグイと身体を寄せて聞いて来るから、俺は開いた両手を肩の高さまで上げて、降参のポーズを取って仰け反ってしまう。ただでさえ、眼光が鋭いこいつに睨まれたら堪らない。気の弱い奴なら、裸足で逃げ出す事請け合いだ。
いや、待て。
矢田は何て言った?
恋人? 俺が変わった? 何だ、それは? そんなの俺は知らんぞ? 恋人なんて、ここに来る事になった時に振られて、それっきり出来た事なんかない、ゼロだ。強いて言えば、本が恋人か? って、何でこんなに怒っているんだ?
「…っそ…身だしなみさえ整えなけりゃ…」
目を丸くする俺をじっと睨んだ後、矢田はがくりと肩を落として俯き、ついでに俺の膝の上にスマホをポトリと落とした。
「な、何だ? いきなり落ち込むなよ? 青少年の情緒は激しいな?」
返されたスマホをトートバックに仕舞いながら、俺は矢田の頭にポンと左手を置いた。その下で、矢田がもぞもぞと頭を動かす。
「…落ち込んでねーし…そりゃ的場は大人だし…」
「大人? それが何か関係あるのか? それより、俺が変わったって…恋人って、噂って何だ?」
「そんなの、的場が一番良く知ってんだろ」
「いや、全く知らないし、身に覚えが無いから訊いているんだが?」
「…髪…」
「髪?」
言われて俺は左手を置いている矢田の頭を見る。
「ん? 根元が大分黒くなっているぞ? 染めなくて良いのか? あ、太い毛が出ているな? 煙草止めたのか?」
「俺じゃねーっ!!」
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