移動先は三食昼寝デザート付き

三冬月マヨ

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【三】

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 愛を語るつもり等無かった。
 そんな物等、見た事も無ければ、与えられた覚えも無い。
 ホウを産んだ蜘蛛は、その直ぐ後に死んだから。
 母と呼ぶのが正しいのかは解らないが、子を産んだ者が母になるのなら、それが男だろうと間違いでは無いのだろう。

『あ、い…?』

「…ああ…そうだ…愛している、だ…」

 女の様に柔らかい身体では、無い。
 だが、その肉体をホウは掻き抱く。
 平素の彼からは考えられないぐらいに、優しく、丁寧に。
 彼の硬かった蕾は、今では信じられない程に柔らかく、ホウの男根を包み込む。
 塊羅かいらの黒く柔らかい髪に指を差し込み、梳いて行けば、髪と同じ黒い瞳が擽ったそうに細められる。
 目尻に口付けて、浮かぶ涙を舐めてやれば、唇が弧を描き、薄く開き、熱を求めて来る。
 口付けて、ゆっくりと腰を回せば、もっと強くと塊羅はホウの首に腕を回し、脚を腰に回し、強請って来る。
 ぱっとしない奴だと思った。
 髪と瞳の色を除けば、何処にでも転がっている平凡な男だった。
 しかし、蝶に世話を任せ、ホウの物を受け入れられる様に慣らして行けば、平凡な男は見事に化けた。
 男を…獲物を誘う、蜘蛛に。
 複雑な紋様の糸を張り巡らせ、そこに掛かった獲物を決して逃さず、仕留め、捕食する蜘蛛に。

『…あっ、あ…っ…!』

 それに自ら飛び込んだホウは、塊羅を手放す気等、到底無い。
 この蜘蛛が、他の男の形を覚える等許せない。
 自分以外の男根を銜える事等、許さない。
 その身の内に、他の男の種等入れさせない。

『…あ、愛して…っ…!』

 出逢う前までなら、取り決めは守るつもりでは居た。子を成した後は、他家へやり、一巡して戻って来た処で、使い物にはならないだろうし、生きて戻って来るかも解らないが、それで良かった。その筈だった。
 だが。

「…っ…」

 絞り取る様にホウの男根に絡み付く肉に、その熱に、そんな考え等、絵空事でしか無かったとホウは知った。
 塊羅の口から、熱い吐息が零れる度、濡れた瞳で見詰められる度、貪欲に求められる度、果たして、捕まえたのはどちらだったのだろうかと思う。

『うぁ…っ!』

 一際強く、腰を打ち付ければ、塊羅は白い首を見せて、背中を仰け反らせた。それと同時に、もう二度と誰の肚にも収まる事の無い、白濁が噴き出し、塊羅の腹とホウの腹を汚す。
 
『あ…あ…ま…っ…』

 ビクビクと痙攣を繰り返す塊羅に構わずに、ホウは激しく腰を打ち付けた。
 震える胎内が気持ち良い。
 早く早くと強請る様に蠢く肉が堪らない。

(欲しがったのはお前だろう?)

「…愛している…」

 そう囁けば、塊羅は嬉しそうに微笑む。この顔を見るのは、不思議と嫌いでは無い。
 だから、ホウは何度もその言葉を繰り返す。
 その抱いた感情が何であるのか、考えもせずに。
 蜂でも、蜘蛛でも、蝶でも無い、何の特徴を持たない、ただの人間が性交渉の度に囁く言葉だと言われている、それに何の意味があるのか、ホウは考えない。考えもしない。ただ、その言葉で蜘蛛を繋ぎ止める事が出来るのだから、繰り返すだけだ。
 
『あ…あ…』

 何度も繰り返して、中に吐き出してやれば、塊羅の身体は心底嬉しそうに震え、また、絡み付いて来るのだ。一滴も逃すまいと、ぎゅうぎゅうと吸い付いて来るのが、堪らなく気持ち良い。
 意識を弾き飛ばす瞬間の塊羅の表情は、堪らなく美しいと、ホウは思う。

(…壊したくねぇ…)

 それが、どんな感情から湧き上がるのか、ホウは知らない。
 ただ、この蜘蛛が、塊羅が、この腕の中に居れば、それで良い。それだけで、良い。
 誰が何を言おうとも、手放す気は無い。
 力尽くで奪おうとする者が居れば、消すだけだ。
 しかし。
 それは、やがてホウへと返って来る事になる。
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