攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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攻略されていたのは、俺?

【06】

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「わ、あ…」

「さあ、遠慮無く入っておいで。ここは、今日から君の部屋なのだから」

 うん。
 寮監に言ってやった。
 俺とメゴロウを同室にしろと。

 あんな部屋じゃ、健全な精神なんて育つ筈が無い。メゴロウが病んだらどうしてくれる? そうなったら、クラス委員長の俺が、気付かなかったせいだと言われるに決まっている。そうなったら、間違いなく絞首台送りになる。強引かも知れないが、そうなるかも知れない可能性は潰しておきたい。

「すご…広いですね…」

「本来なら、君もこれと同じ部屋になる筈だったんだけどね。…空きが無いって有り得ない…」

 そう、本来ならある筈のメゴロウの部屋が無かったのだ。ゲーム内では、ちゃんとしたメゴロウの部屋があったのに。けど、これはチャンスもチャンス、大チャンスだ。メゴロウとの距離を縮めるのに、これ以上の御膳立てがあるだろうか? いや、無い。
 広々としたリビングに、寝室、バスルーム、トイレ、簡易キッチンに、ゲストルームまである豪華仕様だ。家賃お幾らだよ、馬鹿野郎。前世の俺には無理だよ、こんな部屋。まあ、そんな訳で、そのゲストルームをメゴロウに使って貰う事にした。

「ふかふか…うわ…」

 部屋の広さにビクビクと怯えるメゴロウの手を引いて、ゲストルームにあるベッドに座らせれば、その柔らかさに目を丸くしていた。

「慣れないかも知れないが、我慢して欲しい」

「我慢だなんて、こんな立派な部屋! 本当に良いんですか?」
 
 良いに決まってる。

「どうせ、使う事の無い部屋だ。使う人間が居る方が部屋にも良いだろう?」

 うん。
 悲しいかな、ケタロウにはこのゲストルームに泊まる様な友人は居ないからな。
 外面は良いのに、気心の知れた友人は居ない。寂しい奴だ。

「…それに。君は私の運命だ。その君に不便な思いはさせたくないんだよ」

 うん。メゴロウを不幸にしたら、俺もきっと巻き添えだ。だから、メゴロウには幸せでいて貰わないと困る。俺達は運命共同体なんだ。

「…う、んめい…」

 ベッドに腰掛けるメゴロウと視線を合わせようと、ふかふかの絨毯に膝をつけば、ちょっと見上げる感じになったけど、まあ、良いか。見下ろすよりは良いだろ。
 真っ直ぐとメゴロウの目を見て居たら、段々とその目線が合わなくなった。

 ん?
 もしかして、俺、睨んでると思われた?
 まあ、涼やかな目と云えば聞こえは良いが、笑わなければ、切れ長のそれは冷たい印象を与えてしまうか。
 うん、良し。
 笑顔が凶悪問題もある事だし、今夜から笑顔の練習をしよう。
 メゴロウを怖がらせてしまっては意味が無いからな。
 俺の視線が不快とか思われたら、正に目も当てられない。

 俯いてしまったメゴロウの膝の上に置いてある手に、俺は自分の手をそっと重ねた。ぴくりと震えたその手を俺はそっと撫でる。

 怖くない、怖くないぞ。青い服の女の子も、ボールを顔面で受け止めた男の子も、そう言ってただろ? それに、触られるのは嫌じゃないって、言ってたしな。

「突然でびっくりしただろう? でも、私も正直驚いているんだ…」

 ああ、驚いたさ、本当に。
 前世を思い出さなければ、このゲームをプレイしていなければ、俺は最低最悪な人間のまま短い生涯を終える処だったんだからな。本っ当に思い出した切っ掛けはアレだが…あんなシーン、ゲームには無かったよな? 大人の男の子向けゲームだぞ? あんなのラッキースケベにもならないじゃないか。あれは、事故だ、誤爆だ。俺が転生した事で変わったり…してる、な…今のこんなのもゲームにはないしな。まあ、良い。俺は死にたくない。この棚ぼたを有効活用するんだ。

 ゆっくりと顔を上げるメゴロウに、俺はふわりと優しく微笑む(想像では出来てる筈だ)。

「…すまないね…。ああ、君がそう思う必要はないよ? 押し付けるつもりは無いんだ。私が、そう思っている事を知っていて欲しい」

 だから、俺と仲良くしてくれ。俺を嫌わないでくれ。乙女じゃないが『命短し恋せよ乙女』なんて冗談じゃない。『命長く恋せよ男子』だ。

「…は、い…」

 それは消え入りそうな声だったし、メゴロウは直ぐにまた俯いてしまったけど、その前に一瞬見えた笑顔はとても嬉しそうだった。

 ◇

「…え…?」

 翌朝、目が覚めたら隣でメゴロウが健やかな寝息を立てていた。

 …何で?
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