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攻略されていたのは、俺?
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モニター見ながら『は?』って思ったね。何、こいつって。
切れ長の青い目で冷ややかにメゴロウを見て来て、手を差し伸べながら、甘く低い声だが、それはとても冷たく刺さった。
ゲーム内でメゴロウの表情が表示される事は無かったが、きっと震えていた筈だ。
今、俺の目の前で顔を赤くしてわたわたしてるメゴロウは、そんな俺を知らない。知られたくない。知られたら、間違いなく絞首台まっしぐらだ。走るのは美味しいご飯だけで良い。
良かったなあ、本当に。その前に思い出す事が出来て。
「…兄君の居ない寂しさを紛らわす事が出来るのなら…今は、それで我慢するけれど、何時かは名前で呼んで欲しいね。…兄君の代わりでは無く、君の傍に居たいから」
「…っは、あっ、うっ…」
ローテーブルに置いてあった紙ナプキンを手に取り、噴き出したメゴロウの口の周りを拭きながら、俺は小さく笑う。
可愛いよな、本当に。歳の離れた弟って、こんな感じなんだろうな。メゴロウの兄貴は、こんな子を置いて行くなんて、本当に馬鹿で酷い奴だ。
「それで、話は戻るけれど、マスターベ」
「わあああああああっ!? ケ、ケ、ア、アニ、キの入浴中に、自分の部屋でしてますから…っ…!! どうか、その様な発言は…っ…!! アニキの品位が疑われてしまいますっ!!」
品位なんて、そんなもん。メゴロウとの距離を広げる奴なら必要無いな、うん。
「そうなのかい? 無理はしていないかい?」
「していませんっ!!」
そっか。ちゃんと抜いてるのか。なら、心配要らないか? ウーゴ教諭と、そんな雰囲気になった時に、がっついて引かれたりしやしないか心配になったが、ここまで言うのなら、問題ないか? まさか、メゴロウが抜いているかどうか確認する訳にもいかないしな。幾ら親友や運命共同体でも、抜き合いとかしたりはしないだろう、多分。
…って、何考えてんだ俺。こんなメゴロウに、がっつくとか、抜き合いとか出来る訳がないだろう。エロゲとは云え、主人公なんだ。誰からも好かれる…まあ、当たり障りが無いとも云うか? 普通の平々凡々、等身大、まあ、そんなのが普通の恋愛シミュレーションの主人公の姿だよな。メゴロウは、ちょっと可愛いが過ぎる気もするが。
「っ、あっ、ほら、食堂へ行きましょう!」
「ああ、そうだね」
居た堪れなくなったのか、話題を変える為か、単に空腹を我慢出来なくなったのか、壁にある時計を指差して、メゴロウが言う言葉に俺は頷いた。食堂は朝は六時から。夜は十八時から利用出来る。授業が無い休みの日は、昼も十一時から利用出来る。本当に便利だ。
◇
「あ」
「どうかしたのかい?」
あれから、また数日が過ぎた。
移動教室からの帰りで廊下を二人で並んで歩いていたら、不意にメゴロウが窓の外を見て立ち止まった。
「あ、いえ。あの、あそこって、今は使われていないのでしょうか?」
「ん?」
メゴロウが指差す方を見れば、そこには荒れた花壇があった。
えーと…と、俺は記憶を手繰り寄せる。
「…ああ…私が入学した時から、既にあの状態だったね…。校舎の裏手になるし、人目に付きにくいから廃れて行った…と聞いた覚えがあるね」
こんな坊ちゃん嬢ちゃんの通う処で、進んで花の世話をする奴も居ないもんな。
うん、そうだ。そうだった。
それで主人公が園芸部を発足するんだった。
生徒会長に会いに行って…お? おお? そうだ、そうだよ。
生徒会長は、ヒロインの一人だ。背中までの青い髪をおさげにして、眼鏡を掛けててちょっとクールな子だ。何だ、ウーゴ教諭ではなくて、生徒会長ルートなのか? そうか、そう云う事か。まあ、どちらにしても、綺麗なお姉さんだけど。
「…そうなんですか…」
「花に興味があるのかな?」
返事は知ってるが、敢えてそう訊いてみた。
「あっ、いえ…あの…菜園が出来るかな、って」
メゴロウの答えに、俺は堪らず噴き出した。ゲームと同じ事言ってるよ。もっと美味しい野菜が食べたいって、ゲームで言ってたし、自分なら作れるってな。
「そ、そんなに笑わなくても…っ…!」
「いや、悪かったね。生徒会長に話してみようか? どうせ使われていないんだ。君が有効活用してくれるなら、あっさりと承認されるさ」
顔を赤くして唇を尖らせるメゴロウの頭を軽く撫でながら言えば『むう…』と、涙目で軽く睨まれてしまった。こんな可愛い事されたら、綺麗なお姉さんはイチコロだろうな。
ようやくヒロインに会えるよと、俺はウキウキしながら放課後を待った。
メゴロウと二人で生徒会室へと行き、そこで俺は固まってしまった。
「…園芸部、か」
長い髪を一つの三つ編みし胸の前に垂らし、低い声で呟いて、眼鏡の奥を細めて呟いたのは、生徒会長だ。生徒会長が腕を置く机の上には『生徒会長』と書かれた黒い三角のアレがある。アレはアレだ。
けど、俺が知る生徒会長とは明らかに違っていた。
「まあ、確かに使われてはいないし、あのままにして置くよりは景観も良くなるし…」
人差し指と親指を顎にあてて、マ○ダムポーズを決めながら呟く生徒会長は、何処からどう見ても男だった。
…何で…?
切れ長の青い目で冷ややかにメゴロウを見て来て、手を差し伸べながら、甘く低い声だが、それはとても冷たく刺さった。
ゲーム内でメゴロウの表情が表示される事は無かったが、きっと震えていた筈だ。
今、俺の目の前で顔を赤くしてわたわたしてるメゴロウは、そんな俺を知らない。知られたくない。知られたら、間違いなく絞首台まっしぐらだ。走るのは美味しいご飯だけで良い。
良かったなあ、本当に。その前に思い出す事が出来て。
「…兄君の居ない寂しさを紛らわす事が出来るのなら…今は、それで我慢するけれど、何時かは名前で呼んで欲しいね。…兄君の代わりでは無く、君の傍に居たいから」
「…っは、あっ、うっ…」
ローテーブルに置いてあった紙ナプキンを手に取り、噴き出したメゴロウの口の周りを拭きながら、俺は小さく笑う。
可愛いよな、本当に。歳の離れた弟って、こんな感じなんだろうな。メゴロウの兄貴は、こんな子を置いて行くなんて、本当に馬鹿で酷い奴だ。
「それで、話は戻るけれど、マスターベ」
「わあああああああっ!? ケ、ケ、ア、アニ、キの入浴中に、自分の部屋でしてますから…っ…!! どうか、その様な発言は…っ…!! アニキの品位が疑われてしまいますっ!!」
品位なんて、そんなもん。メゴロウとの距離を広げる奴なら必要無いな、うん。
「そうなのかい? 無理はしていないかい?」
「していませんっ!!」
そっか。ちゃんと抜いてるのか。なら、心配要らないか? ウーゴ教諭と、そんな雰囲気になった時に、がっついて引かれたりしやしないか心配になったが、ここまで言うのなら、問題ないか? まさか、メゴロウが抜いているかどうか確認する訳にもいかないしな。幾ら親友や運命共同体でも、抜き合いとかしたりはしないだろう、多分。
…って、何考えてんだ俺。こんなメゴロウに、がっつくとか、抜き合いとか出来る訳がないだろう。エロゲとは云え、主人公なんだ。誰からも好かれる…まあ、当たり障りが無いとも云うか? 普通の平々凡々、等身大、まあ、そんなのが普通の恋愛シミュレーションの主人公の姿だよな。メゴロウは、ちょっと可愛いが過ぎる気もするが。
「っ、あっ、ほら、食堂へ行きましょう!」
「ああ、そうだね」
居た堪れなくなったのか、話題を変える為か、単に空腹を我慢出来なくなったのか、壁にある時計を指差して、メゴロウが言う言葉に俺は頷いた。食堂は朝は六時から。夜は十八時から利用出来る。授業が無い休みの日は、昼も十一時から利用出来る。本当に便利だ。
◇
「あ」
「どうかしたのかい?」
あれから、また数日が過ぎた。
移動教室からの帰りで廊下を二人で並んで歩いていたら、不意にメゴロウが窓の外を見て立ち止まった。
「あ、いえ。あの、あそこって、今は使われていないのでしょうか?」
「ん?」
メゴロウが指差す方を見れば、そこには荒れた花壇があった。
えーと…と、俺は記憶を手繰り寄せる。
「…ああ…私が入学した時から、既にあの状態だったね…。校舎の裏手になるし、人目に付きにくいから廃れて行った…と聞いた覚えがあるね」
こんな坊ちゃん嬢ちゃんの通う処で、進んで花の世話をする奴も居ないもんな。
うん、そうだ。そうだった。
それで主人公が園芸部を発足するんだった。
生徒会長に会いに行って…お? おお? そうだ、そうだよ。
生徒会長は、ヒロインの一人だ。背中までの青い髪をおさげにして、眼鏡を掛けててちょっとクールな子だ。何だ、ウーゴ教諭ではなくて、生徒会長ルートなのか? そうか、そう云う事か。まあ、どちらにしても、綺麗なお姉さんだけど。
「…そうなんですか…」
「花に興味があるのかな?」
返事は知ってるが、敢えてそう訊いてみた。
「あっ、いえ…あの…菜園が出来るかな、って」
メゴロウの答えに、俺は堪らず噴き出した。ゲームと同じ事言ってるよ。もっと美味しい野菜が食べたいって、ゲームで言ってたし、自分なら作れるってな。
「そ、そんなに笑わなくても…っ…!」
「いや、悪かったね。生徒会長に話してみようか? どうせ使われていないんだ。君が有効活用してくれるなら、あっさりと承認されるさ」
顔を赤くして唇を尖らせるメゴロウの頭を軽く撫でながら言えば『むう…』と、涙目で軽く睨まれてしまった。こんな可愛い事されたら、綺麗なお姉さんはイチコロだろうな。
ようやくヒロインに会えるよと、俺はウキウキしながら放課後を待った。
メゴロウと二人で生徒会室へと行き、そこで俺は固まってしまった。
「…園芸部、か」
長い髪を一つの三つ編みし胸の前に垂らし、低い声で呟いて、眼鏡の奥を細めて呟いたのは、生徒会長だ。生徒会長が腕を置く机の上には『生徒会長』と書かれた黒い三角のアレがある。アレはアレだ。
けど、俺が知る生徒会長とは明らかに違っていた。
「まあ、確かに使われてはいないし、あのままにして置くよりは景観も良くなるし…」
人差し指と親指を顎にあてて、マ○ダムポーズを決めながら呟く生徒会長は、何処からどう見ても男だった。
…何で…?
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