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攻略されていたのは、俺?
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「こうして、間引いてあげると良く育つんですよ」
緑もより青々として来て、陽射しに晒されていると、じんわりと汗ばむ季節になって来た。
「へえ。流石詳しいな。この芽は食べられるのか?」
「家ではサラダに使ってました」
スッポスッポと、ニョキニョキ出て来た芽を抜いている俺の横で、メゴロウと生徒会長がそんな会話をしている。そう、俺ではなく、生徒会長とだ。
花ではなく、野菜と聞いて生徒会長は目を瞬かせていたが、俺が『大地の恵みを、自然の豊かさを』と、何処かのキャッチコピーみたいのを口にしていたら、失礼にも噴き出して『まあ、自然と触れ合うのは悪い事ではないな』と、申請を却下される事無く、部費の話になった。それで、必要な道具やら、種やら苗やらを買って、無事に活動しているんだが。何故か、生徒会長が頻繁にやって来る。やって来るのは、ヒロインだけで良いんだって。これが正規の会長のルートなら、ゲーム通りで問題無いし、大歓迎だが。だが。今、ここに居る会長は、男なのだ。男装の麗人ではなく、紛うことなき男なのだ。男に用は無い。今直ぐ、ウーゴ教諭とチェンジしてくれ。
メゴロウもメゴロウで、そんなのに愛想を振り撒かなくて良いんだぞ? その笑顔はヒロインに取っておけ。懐くな。いや、仲良くなるのは良いのか? 俺だけにべったりして交友関係が狭まるよりは、広がる方が良いに決まってる…よな…?
「…しかし…来ないな…」
園芸部を起ち上げて、一ヶ月が経ったが未だウーゴ教諭は姿を見せない。ヒロインなら、来て然るべきだと思うのだが。何か条件があるのか?
生徒会長が来るのは、許可を出した手前、怪我等しやしないか気になるからだろうし。鍬や鋤は危険だからと却下されて、スコップにハサミと鎌だけで、本当に家庭菜園だ。鎌だって最初は反対されたけどな。けど、頑固な蔓があって、ハサミじゃ無理だとぶーぶー文句を言ったら、渋々だが許可が下りた。何だかんだで悪い奴じゃないんだよな。最初のメゴロウへの態度は、まだ許せないけどな。もしかしたら、それの謝罪の意味も兼ねて、こうちょくちょく来てたりするのかな…? …松竹梅が邪魔して、素直に謝れない…とか? だとしたら、ちょっと…ちょっとは良い奴かもな。
「誰が来ないんですか?」
「わ!」
いきなり耳元でメゴロウの声が聞こえて、驚いた俺は芽をブチブチと引き千切ってしまった。
後ろから、身を屈めて覗き込む様にしているのだろう。俺の顔の直ぐ傍にメゴロウの唇が見える。な、何だ? 心臓がバクバクしてる。不整脈か? 過呼吸か? 落ち着け、俺。息を吸え、止めるな。
「新入部員だろう。しかし、花ならまだしも、菜園では見込みは薄いだろうな。処で俺はとうもろこしが好きなんだが…」
必死で息を吸おうとしてる俺の耳に、やたら冷静な声が届いた。
「あ、そうなんですか? じゃあ、あちらの花壇で作りましょうか。とうもろこしは肥料食いですから…」
生徒会長の図々しい希望に、メゴロウが立ち上がって、まだ手を付けていない花壇を指差した。
…た、助かった…。…死ぬかと思った…。
…いや…たまに…まだ見るんだよ…メゴロウにヤられる夢を…。性懲りも無く、見せて来るんだよ、意地悪な女神様が…。相変わらず、メゴロウは熱く蕩けそうな声で…。
「…っ…」
って、思い出したら、身体の一部が…落ち着け、俺。鎮まれ、俺。メゴロウは親友だ。運命共同体なんだ。幸せな未来が約束されている奴なんだ。そんなメゴロウを俺が穢したら駄目だ。もしかしたら、これが女神様の策かも知れない。メゴロウに有り得ない事をさせて、俺に罪悪感を抱かせようとしているのかも知れない。後ろめたさから、挙動不審になり、メゴロウから俺が離れるのを待っているのかも知れない。
あ。
そして、俺との距離が開いた処でヒロインをぶつけて来るのか? え? じゃあ、俺、メゴロウと距離を取った方が良いのか? え? それは嫌だな…。
「…ん…?」
嫌って、何だ?
メゴロウの幸せの為だぞ?
離れた処で、俺がメゴロウを虐める筈が無いし。
メゴロウの幸せを祝福するだけだろう?
親友の幸せを喜べない奴が居るか? いや、居ない。
「どうした? 具合が悪いのか?」
「え?」
考え込んで俯いていたせいか、肩に手を置かれるまで気付かなかった。目の前に、心配そうに俺を覗き込む生徒会長が居た。しゃがみ込んで、俺と目線を合わせている。
な、何だこのイケメン兄ちゃんは。
いや、ゲームでの生徒会長も、張り切るメゴロウを気に掛けていたけど、俺はメゴロウじゃないから、そんな心配は要らない。
「大丈夫です。ご心配を…」
「無理は駄目です! まだ、ウーゴ先生居ますよね? 救護室へ行って下さい! 後は僕がやりますから!」
心配を掛けたと言おうとして、間引きを再開しようとしたら、メゴロウに止められた。
「彼一人だと行かないかも知れないから、俺が連れて行こう」
え?
「お願いします!」
は?
「い、いや、私は…」
な、何だ、その阿吽の呼吸は。
「倒れられでもしたら、活動に支障が出る。部を維持したいのなら、大人しく従え」
「…解りました…」
くそ。そう言われたら行くしかないだろう。生き生きと土いじりをするメゴロウの楽しみを、俺が奪う訳にはいかない。
けど。
これって、メゴロウのフラグじゃないのか?
いや、救護室に行ったらウーゴ教諭の姿は無くて、ふらっと菜園予定の花壇に行ってたりとかするのか?
緑もより青々として来て、陽射しに晒されていると、じんわりと汗ばむ季節になって来た。
「へえ。流石詳しいな。この芽は食べられるのか?」
「家ではサラダに使ってました」
スッポスッポと、ニョキニョキ出て来た芽を抜いている俺の横で、メゴロウと生徒会長がそんな会話をしている。そう、俺ではなく、生徒会長とだ。
花ではなく、野菜と聞いて生徒会長は目を瞬かせていたが、俺が『大地の恵みを、自然の豊かさを』と、何処かのキャッチコピーみたいのを口にしていたら、失礼にも噴き出して『まあ、自然と触れ合うのは悪い事ではないな』と、申請を却下される事無く、部費の話になった。それで、必要な道具やら、種やら苗やらを買って、無事に活動しているんだが。何故か、生徒会長が頻繁にやって来る。やって来るのは、ヒロインだけで良いんだって。これが正規の会長のルートなら、ゲーム通りで問題無いし、大歓迎だが。だが。今、ここに居る会長は、男なのだ。男装の麗人ではなく、紛うことなき男なのだ。男に用は無い。今直ぐ、ウーゴ教諭とチェンジしてくれ。
メゴロウもメゴロウで、そんなのに愛想を振り撒かなくて良いんだぞ? その笑顔はヒロインに取っておけ。懐くな。いや、仲良くなるのは良いのか? 俺だけにべったりして交友関係が狭まるよりは、広がる方が良いに決まってる…よな…?
「…しかし…来ないな…」
園芸部を起ち上げて、一ヶ月が経ったが未だウーゴ教諭は姿を見せない。ヒロインなら、来て然るべきだと思うのだが。何か条件があるのか?
生徒会長が来るのは、許可を出した手前、怪我等しやしないか気になるからだろうし。鍬や鋤は危険だからと却下されて、スコップにハサミと鎌だけで、本当に家庭菜園だ。鎌だって最初は反対されたけどな。けど、頑固な蔓があって、ハサミじゃ無理だとぶーぶー文句を言ったら、渋々だが許可が下りた。何だかんだで悪い奴じゃないんだよな。最初のメゴロウへの態度は、まだ許せないけどな。もしかしたら、それの謝罪の意味も兼ねて、こうちょくちょく来てたりするのかな…? …松竹梅が邪魔して、素直に謝れない…とか? だとしたら、ちょっと…ちょっとは良い奴かもな。
「誰が来ないんですか?」
「わ!」
いきなり耳元でメゴロウの声が聞こえて、驚いた俺は芽をブチブチと引き千切ってしまった。
後ろから、身を屈めて覗き込む様にしているのだろう。俺の顔の直ぐ傍にメゴロウの唇が見える。な、何だ? 心臓がバクバクしてる。不整脈か? 過呼吸か? 落ち着け、俺。息を吸え、止めるな。
「新入部員だろう。しかし、花ならまだしも、菜園では見込みは薄いだろうな。処で俺はとうもろこしが好きなんだが…」
必死で息を吸おうとしてる俺の耳に、やたら冷静な声が届いた。
「あ、そうなんですか? じゃあ、あちらの花壇で作りましょうか。とうもろこしは肥料食いですから…」
生徒会長の図々しい希望に、メゴロウが立ち上がって、まだ手を付けていない花壇を指差した。
…た、助かった…。…死ぬかと思った…。
…いや…たまに…まだ見るんだよ…メゴロウにヤられる夢を…。性懲りも無く、見せて来るんだよ、意地悪な女神様が…。相変わらず、メゴロウは熱く蕩けそうな声で…。
「…っ…」
って、思い出したら、身体の一部が…落ち着け、俺。鎮まれ、俺。メゴロウは親友だ。運命共同体なんだ。幸せな未来が約束されている奴なんだ。そんなメゴロウを俺が穢したら駄目だ。もしかしたら、これが女神様の策かも知れない。メゴロウに有り得ない事をさせて、俺に罪悪感を抱かせようとしているのかも知れない。後ろめたさから、挙動不審になり、メゴロウから俺が離れるのを待っているのかも知れない。
あ。
そして、俺との距離が開いた処でヒロインをぶつけて来るのか? え? じゃあ、俺、メゴロウと距離を取った方が良いのか? え? それは嫌だな…。
「…ん…?」
嫌って、何だ?
メゴロウの幸せの為だぞ?
離れた処で、俺がメゴロウを虐める筈が無いし。
メゴロウの幸せを祝福するだけだろう?
親友の幸せを喜べない奴が居るか? いや、居ない。
「どうした? 具合が悪いのか?」
「え?」
考え込んで俯いていたせいか、肩に手を置かれるまで気付かなかった。目の前に、心配そうに俺を覗き込む生徒会長が居た。しゃがみ込んで、俺と目線を合わせている。
な、何だこのイケメン兄ちゃんは。
いや、ゲームでの生徒会長も、張り切るメゴロウを気に掛けていたけど、俺はメゴロウじゃないから、そんな心配は要らない。
「大丈夫です。ご心配を…」
「無理は駄目です! まだ、ウーゴ先生居ますよね? 救護室へ行って下さい! 後は僕がやりますから!」
心配を掛けたと言おうとして、間引きを再開しようとしたら、メゴロウに止められた。
「彼一人だと行かないかも知れないから、俺が連れて行こう」
え?
「お願いします!」
は?
「い、いや、私は…」
な、何だ、その阿吽の呼吸は。
「倒れられでもしたら、活動に支障が出る。部を維持したいのなら、大人しく従え」
「…解りました…」
くそ。そう言われたら行くしかないだろう。生き生きと土いじりをするメゴロウの楽しみを、俺が奪う訳にはいかない。
けど。
これって、メゴロウのフラグじゃないのか?
いや、救護室に行ったらウーゴ教諭の姿は無くて、ふらっと菜園予定の花壇に行ってたりとかするのか?
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