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攻略していたのは、僕
【03】
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別におかしくはないよね? 育ち盛りだし、食べ物に釣られても。
それは、僕にしか出来ない事だと、キヤクさんは言った。
移動中の車の中で、ピザを食べながら僕はその話を聞いていた。
僕が寝ている間に春休みは終わり、新学期が始まっていた。
新学期の始まりと同時に編入の方が、皆と馴染みやすかっただろうって言われたけど、転校生なんてどちらにしても、良い意味でも悪い意味でも目立つものだから、僕は別に気にしないけどな。
それに。学期の始まりに行っても、どちらにしても目立つでしょう? 僕は梅だもの。松以上の人達ばかりが集う学園で底辺の梅なんて、嫌でも目立つに決まってる。きっと、無視されるか、虐められるかのどちらかなんだろうな。でも、食べ放題なんだ。幾らでも食べて良いんだ。食べ放題。何て素敵な言葉なんだろう。学費は総て支払い済みだから、心配は要らないって。それに加えて支度金も渡されたけど、それは多分、口止め料。何時来るか解らない危機の事を話しても、それがガディシス様のお告げだとしても、信じる者は居ないだろう。だから、梅の僕が王立学園に通う本当の理由も、誰にも話してはいけないと言われた。たまたまお忍びで家の農園に来た陛下が、たまたま食べたブルーベリーを気に入って、王室御用達になって…なんちゃらで、降って湧いた金で、息子を名だたる学園へ押し込んじゃいました、てへ。って筋書きらしい。いいのかな、それで? まあ、未曽有の危機と言われるよりは、まだマシなのかな? 多分、きっと。
そんな事だから、どんな人達がガディシス様に選ばれたのか、僕は知らないし、相手も知らない。天啓を受けた大神官も知らない。
『出逢えば、自ずと惹かれあう』
ガディシス様は、そう言った。
その惹かれた相手と…想いを通わせて…じ…情を通わせて…な…何度も繰り返して行けば、力は強力になって、新たな力も…って、言ってたけれど…。い、良いのかな!? 学生の内からそんな事をして!? 怒られない!? 恥ずかしいけど、キヤクさんに初体験はいつですか? って聞いたら、十四歳の時に婚約者とって、顔色一つ変えずに言われてしまった。これだから、上流階級はっ!! 婚約者なんて、見た事も聞いた事もないよ! とにかく、そんな未知の生物がうようよ居る王立学園に通うだなんて、食べ放題が無かったら行きたいだなんて思わないよ、本当に。恋だとか何だかより、美味しい物を食べていたい。お腹いっぱい食べて、昼寝出来ればそれだけで良いんだけどな。けど、国や世界が無くなったら、美味しい物も食べられなくなるから…。それは嫌だなあ。
そして。
僕の力は…――――――――。
「メゴロウ様、学園に到着しました」
そこまで考えた時、車が停まって運転していたキヤクさんが振り返って来た。
「ありがとうございます」
僕はお礼を言って車から降りた。ここからは、僕一人だ。
「今日は陛下と謁見されてお疲れでしょうから、早くに休んで下さいね。明日は…」
うん。ここに来る前に、王宮に行っていた。そこで国王陛下と晩餐を…はっきり言って味なんて解らなかったし、お腹の何処に入ったのかも解らなかった。で、そこから出た後、盛大にお腹を鳴らす僕を見かねたキヤクさんが、ピザを三枚買ってくれて、車の中で食べていたんだよね。キヤクさん良い人過ぎる。
明日の確認をもう一度して、僕とキヤクさんは別れた。
次に会う時は、災厄のその日になるでしょうって言われた。
…本当に、災厄なんて来るのかな?
だって、こんなに平和なのに?
僕がこう思うのだから、確かに、直接ガディシス様のお告げを聞いていない人は信じないだろうな。国王陛下、良く信じたね? あ、大神官に言われたから? それとも陛下の処にも、ガディシス様が現れたのかな?
◇
寮監だと云う人に挨拶をして、案内された部屋は実家の僕の部屋の何倍もあって、眩暈がした。寝室とかゲストルームとか、もう頭が割れるかと思った。その寝室で広いベッドの上、隅の方で仰向けになって、僕は白く綺麗な天井を見ながら呟いた。
「…惹かれあう…かあ…」
それは、どんな人なんだろう?
僕が誰かと恋をして、じ…じょ、じょ、情…を交わすとか、全然想像が付かない。
そんなの考えた事も無かったし。
学校と家の手伝いと、食べるのに忙しくて、他の事なんて考えられなかったし。
…あ、そうか…。
明日からは、早く起きなくて良いんだ…。
そっか…。
「…そっか…」
小さく呟いて、僕は目を閉じた。
それは、僕にしか出来ない事だと、キヤクさんは言った。
移動中の車の中で、ピザを食べながら僕はその話を聞いていた。
僕が寝ている間に春休みは終わり、新学期が始まっていた。
新学期の始まりと同時に編入の方が、皆と馴染みやすかっただろうって言われたけど、転校生なんてどちらにしても、良い意味でも悪い意味でも目立つものだから、僕は別に気にしないけどな。
それに。学期の始まりに行っても、どちらにしても目立つでしょう? 僕は梅だもの。松以上の人達ばかりが集う学園で底辺の梅なんて、嫌でも目立つに決まってる。きっと、無視されるか、虐められるかのどちらかなんだろうな。でも、食べ放題なんだ。幾らでも食べて良いんだ。食べ放題。何て素敵な言葉なんだろう。学費は総て支払い済みだから、心配は要らないって。それに加えて支度金も渡されたけど、それは多分、口止め料。何時来るか解らない危機の事を話しても、それがガディシス様のお告げだとしても、信じる者は居ないだろう。だから、梅の僕が王立学園に通う本当の理由も、誰にも話してはいけないと言われた。たまたまお忍びで家の農園に来た陛下が、たまたま食べたブルーベリーを気に入って、王室御用達になって…なんちゃらで、降って湧いた金で、息子を名だたる学園へ押し込んじゃいました、てへ。って筋書きらしい。いいのかな、それで? まあ、未曽有の危機と言われるよりは、まだマシなのかな? 多分、きっと。
そんな事だから、どんな人達がガディシス様に選ばれたのか、僕は知らないし、相手も知らない。天啓を受けた大神官も知らない。
『出逢えば、自ずと惹かれあう』
ガディシス様は、そう言った。
その惹かれた相手と…想いを通わせて…じ…情を通わせて…な…何度も繰り返して行けば、力は強力になって、新たな力も…って、言ってたけれど…。い、良いのかな!? 学生の内からそんな事をして!? 怒られない!? 恥ずかしいけど、キヤクさんに初体験はいつですか? って聞いたら、十四歳の時に婚約者とって、顔色一つ変えずに言われてしまった。これだから、上流階級はっ!! 婚約者なんて、見た事も聞いた事もないよ! とにかく、そんな未知の生物がうようよ居る王立学園に通うだなんて、食べ放題が無かったら行きたいだなんて思わないよ、本当に。恋だとか何だかより、美味しい物を食べていたい。お腹いっぱい食べて、昼寝出来ればそれだけで良いんだけどな。けど、国や世界が無くなったら、美味しい物も食べられなくなるから…。それは嫌だなあ。
そして。
僕の力は…――――――――。
「メゴロウ様、学園に到着しました」
そこまで考えた時、車が停まって運転していたキヤクさんが振り返って来た。
「ありがとうございます」
僕はお礼を言って車から降りた。ここからは、僕一人だ。
「今日は陛下と謁見されてお疲れでしょうから、早くに休んで下さいね。明日は…」
うん。ここに来る前に、王宮に行っていた。そこで国王陛下と晩餐を…はっきり言って味なんて解らなかったし、お腹の何処に入ったのかも解らなかった。で、そこから出た後、盛大にお腹を鳴らす僕を見かねたキヤクさんが、ピザを三枚買ってくれて、車の中で食べていたんだよね。キヤクさん良い人過ぎる。
明日の確認をもう一度して、僕とキヤクさんは別れた。
次に会う時は、災厄のその日になるでしょうって言われた。
…本当に、災厄なんて来るのかな?
だって、こんなに平和なのに?
僕がこう思うのだから、確かに、直接ガディシス様のお告げを聞いていない人は信じないだろうな。国王陛下、良く信じたね? あ、大神官に言われたから? それとも陛下の処にも、ガディシス様が現れたのかな?
◇
寮監だと云う人に挨拶をして、案内された部屋は実家の僕の部屋の何倍もあって、眩暈がした。寝室とかゲストルームとか、もう頭が割れるかと思った。その寝室で広いベッドの上、隅の方で仰向けになって、僕は白く綺麗な天井を見ながら呟いた。
「…惹かれあう…かあ…」
それは、どんな人なんだろう?
僕が誰かと恋をして、じ…じょ、じょ、情…を交わすとか、全然想像が付かない。
そんなの考えた事も無かったし。
学校と家の手伝いと、食べるのに忙しくて、他の事なんて考えられなかったし。
…あ、そうか…。
明日からは、早く起きなくて良いんだ…。
そっか…。
「…そっか…」
小さく呟いて、僕は目を閉じた。
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