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攻略していたのは、僕
【35】※
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一人、取り残された花壇で、僕はモヤモヤしながら使っていた道具を片付けていた。
片付けと言っても、スコップやカマやハサミに付いた土を落として、花壇の近くにある水道で洗ってタオルで拭って、花壇の脇に置いてある道具箱にしまうだけだ。手袋も洗って干して置けば、今の時期なら明日の朝には乾いている。
咄嗟に、ああ言ってしまったけれど、ケタロウ様とあの紫が会うのは嫌だ。
あの噴水に落ちて、保健室じゃなくて救護室に行った時の、あの紫のケタロウ様を見る気持ちの悪い目。あれを忘れた訳じゃない。あの、気持ちの悪い声も。
あれは…。
この時間になるまでに嫌って言う程聞いた。
…あれは…情を欲しがる女の声だ。
これまでの時間で、僕の情を欲しがって来た女の子達の気持ちの悪い姿が浮かぶ。
気持ちの悪い目。
気持ちの悪い声。
気持ちの悪い体温。
力が欲しくて。
力を強くしたくて。
何度も何度も情を貰って来た。
でも、それは間違いだった。
だって、僕は彼女達を何とも想っていないから。
だって、彼女達はケタロウ様を殺して来たから。
そんな彼女達に、どうして情を、想いをあげる事が出来る? 出来る筈がない。
僕は、ずっとずっと、最初からケタロウ様だけが好き。
だから、間違いに気付いてからは、ずっとケタロウ様だけ。
冷たいケタロウ様だけに、情を、想いをあげて来た。
僕の思った事は間違っていなくて、それから力は強くなって行った。
時間を止めていられる時間は長くなって行ったし、意識すれば、誰か一人の時間を戻したり、進める事も出来る様になった。それは、生きている相手にだけ、だけど…。
…こんなに力を使える様になったのに…あの卒業式では…あの時だけは…ケタロウ様が死ぬまでは…何も出来なかった…。それは、きっと…それが、ケタロウ様の『運命』だから…。
そこまで考えて、僕はぶんぶんと頭を振って、止めていた手を動かしてハサミを洗う。
今の時間は大丈夫なんだから。
ケタロウ様は、僕とずっと一緒に居てくれるんだから。
「…生徒会長が居るから、紫が何かをするとは思えないんだけど…」
でも、それでも、あの気持ち悪い紫にケタロウ様を見られるのは嫌だ。
具合が悪そうだったから、つい、ああ言ってしまったけれど…時間を戻せば良かったのかも…。
「…そうだよ…今からでも遅くはないよね?」
今日は天気が良いし気温も高いから、きっと暑さにやられたんだ。ケタロウ様の身体の時間を作業を始める前に戻せば良いんだ。
「そうだ、そうしよう」
水を止めて、手にハサミを持ったまま、僕は保健し…救護室へと向かって走り出した。
誰か一人の時間を戻したり、進めたりするのなら、その相手が目の前に居ないと駄目だから。
もう、救護室に着いたと思うけど、少しでも早く、紫のあの目から離したい。あんな目でケタロウ様を見るなんて許せない。
「え?」
校舎の中に入ってすぐに、僕は生徒会長を見た。
一人で、こっちに向かって歩いて来る。
「何してるの!?」
どうして一人なの!? ケタロウ様は!?
「あ、ああ…。彼が…自分の心配は要らないから、君の手伝いをしてくれと…」
生徒会長を睨んで言えば、彼は目を泳がせながら片手で口元を押さえて、顔を少しだけ赤くしてもごもごと言った。
「…っ…! 役立たずっ!!」
「は!? おい!?」
「道具っ! 洗って出しっぱなしだから、片付けて置いて!!」
生徒会長に思い切り怒鳴って、僕はまた走り出した。
ケタロウ様の馬鹿っ!! 僕の心配なんか要らないのにっ!! 今、心配なのはケタロウ様の方なのに…っ…!!
相手は、気持ちの悪い女なんだ。
気になる相手が居たら、どんな手でも使う女なんだよ…っ…!!
これまでの時間で、女の武器を使われそうになった事が何回かあった。
その度に、時間を止めたり、巻き戻したりして逃げて来たけど。
でも、ケタロウ様はそれが出来ない。
人気の無い場所に呼び出されて、二人きりになったり、わざと閉じ込められたりした。そうなると、女は自分から服を脱ぎ出してこう言うんだ。
『…今、私が叫べばどうなるか解る?』
って、気持ちの悪い顔で笑うんだ。
僕の情が欲しいからって、情をくれなければ、襲われたって言うって。
そうやって、僕に罪を負わせようとして来た。
いつかの時間では、生徒会長と生徒会室に閉じ込められて、外に見張りを何人かつけられた。時間を止めて逃げたら、生徒会長はその見張り達に犯されて…自殺した。涙なんか出なかった。自業自得だ。
「…嫌だ…っ…!」
きっと、ケタロウ様はそんな目に遭ったら、抵抗なんかしない。
優しいから。
人が良いから。
家の事を考えて、きっと従ってしまう…!
「ケタロウ様…っ…!!」
ケタロウ様が汚れちゃう!
汚されてしまう…!!
綺麗なケタロウ様が…っ…!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!
…時間よ、止まって――――――――!!
片付けと言っても、スコップやカマやハサミに付いた土を落として、花壇の近くにある水道で洗ってタオルで拭って、花壇の脇に置いてある道具箱にしまうだけだ。手袋も洗って干して置けば、今の時期なら明日の朝には乾いている。
咄嗟に、ああ言ってしまったけれど、ケタロウ様とあの紫が会うのは嫌だ。
あの噴水に落ちて、保健室じゃなくて救護室に行った時の、あの紫のケタロウ様を見る気持ちの悪い目。あれを忘れた訳じゃない。あの、気持ちの悪い声も。
あれは…。
この時間になるまでに嫌って言う程聞いた。
…あれは…情を欲しがる女の声だ。
これまでの時間で、僕の情を欲しがって来た女の子達の気持ちの悪い姿が浮かぶ。
気持ちの悪い目。
気持ちの悪い声。
気持ちの悪い体温。
力が欲しくて。
力を強くしたくて。
何度も何度も情を貰って来た。
でも、それは間違いだった。
だって、僕は彼女達を何とも想っていないから。
だって、彼女達はケタロウ様を殺して来たから。
そんな彼女達に、どうして情を、想いをあげる事が出来る? 出来る筈がない。
僕は、ずっとずっと、最初からケタロウ様だけが好き。
だから、間違いに気付いてからは、ずっとケタロウ様だけ。
冷たいケタロウ様だけに、情を、想いをあげて来た。
僕の思った事は間違っていなくて、それから力は強くなって行った。
時間を止めていられる時間は長くなって行ったし、意識すれば、誰か一人の時間を戻したり、進める事も出来る様になった。それは、生きている相手にだけ、だけど…。
…こんなに力を使える様になったのに…あの卒業式では…あの時だけは…ケタロウ様が死ぬまでは…何も出来なかった…。それは、きっと…それが、ケタロウ様の『運命』だから…。
そこまで考えて、僕はぶんぶんと頭を振って、止めていた手を動かしてハサミを洗う。
今の時間は大丈夫なんだから。
ケタロウ様は、僕とずっと一緒に居てくれるんだから。
「…生徒会長が居るから、紫が何かをするとは思えないんだけど…」
でも、それでも、あの気持ち悪い紫にケタロウ様を見られるのは嫌だ。
具合が悪そうだったから、つい、ああ言ってしまったけれど…時間を戻せば良かったのかも…。
「…そうだよ…今からでも遅くはないよね?」
今日は天気が良いし気温も高いから、きっと暑さにやられたんだ。ケタロウ様の身体の時間を作業を始める前に戻せば良いんだ。
「そうだ、そうしよう」
水を止めて、手にハサミを持ったまま、僕は保健し…救護室へと向かって走り出した。
誰か一人の時間を戻したり、進めたりするのなら、その相手が目の前に居ないと駄目だから。
もう、救護室に着いたと思うけど、少しでも早く、紫のあの目から離したい。あんな目でケタロウ様を見るなんて許せない。
「え?」
校舎の中に入ってすぐに、僕は生徒会長を見た。
一人で、こっちに向かって歩いて来る。
「何してるの!?」
どうして一人なの!? ケタロウ様は!?
「あ、ああ…。彼が…自分の心配は要らないから、君の手伝いをしてくれと…」
生徒会長を睨んで言えば、彼は目を泳がせながら片手で口元を押さえて、顔を少しだけ赤くしてもごもごと言った。
「…っ…! 役立たずっ!!」
「は!? おい!?」
「道具っ! 洗って出しっぱなしだから、片付けて置いて!!」
生徒会長に思い切り怒鳴って、僕はまた走り出した。
ケタロウ様の馬鹿っ!! 僕の心配なんか要らないのにっ!! 今、心配なのはケタロウ様の方なのに…っ…!!
相手は、気持ちの悪い女なんだ。
気になる相手が居たら、どんな手でも使う女なんだよ…っ…!!
これまでの時間で、女の武器を使われそうになった事が何回かあった。
その度に、時間を止めたり、巻き戻したりして逃げて来たけど。
でも、ケタロウ様はそれが出来ない。
人気の無い場所に呼び出されて、二人きりになったり、わざと閉じ込められたりした。そうなると、女は自分から服を脱ぎ出してこう言うんだ。
『…今、私が叫べばどうなるか解る?』
って、気持ちの悪い顔で笑うんだ。
僕の情が欲しいからって、情をくれなければ、襲われたって言うって。
そうやって、僕に罪を負わせようとして来た。
いつかの時間では、生徒会長と生徒会室に閉じ込められて、外に見張りを何人かつけられた。時間を止めて逃げたら、生徒会長はその見張り達に犯されて…自殺した。涙なんか出なかった。自業自得だ。
「…嫌だ…っ…!」
きっと、ケタロウ様はそんな目に遭ったら、抵抗なんかしない。
優しいから。
人が良いから。
家の事を考えて、きっと従ってしまう…!
「ケタロウ様…っ…!!」
ケタロウ様が汚れちゃう!
汚されてしまう…!!
綺麗なケタロウ様が…っ…!
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だっ!!
…時間よ、止まって――――――――!!
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