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攻略されていたのは、俺
【05】
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何がどうしてこうなった。
「君は何時も彼にばかり食べさせて、自分の食事を疎かにするから、体力が無いと思われる。この機会に自分の食を優先するべきだ」
いや、俺、食べてるけどな? メゴロウと一緒だから、食が細いって思われているだけだろう?
若干遠い目をする俺の前に座るのは、生徒会長。そして、ここは寮の食堂だ。コーヒーを淹れている間に、食堂が開く時間になっていたらしい。ぶっちゃけ食欲が無かったから、晩飯は無しでも良いかと思っていたんだが、どうやら生徒会長にはお見通しだったらしい。
「彼に頼まれたからな。食べて、その鬱陶しい顔を何とかしろ」
しかし、この物言いである。
鬱陶しいって、何だ、この眼鏡。
お前の方が鬱陶しいだろう。
見ろ。食堂に入って来る奴ら、俺達を見て一瞬固まって、で、そろ~っと視線を外して、決してこっちを見ない様にしながら料理を選んだり注文したりして、俺達から一番遠いテーブルに逃げて行っているからな? 何だよ、ここは魔の海域かよ。バミューダトライアングルかよ。
「…そうは言われましても、この顔は生まれながらの物ですので、どうにかするには整形するしか無いと思いますが。両親、いえ、先祖代々継がれて来た物に手を加えるとは、それは冒涜以外の何物でもありません」
前世の俺の母親がテレビで整形のCMとか、整形したとかのニュースとか、ドラマとか観る度に良く言ってたな。
『親からの授かり物に手を加えるなんて』
って。今の世代はどうかは知らないけど、俺の親世代は整形には嫌悪感を露わにしていた。何でかな? 整形して、それで悩む事が減って気が楽になるんなら、それはそれで良いと思うけどな。その為の整形じゃないのか? と、俺は思うのだが、ここは親の言葉を使わせて貰おう。なんて、単純にムカついたからだが。頼まれたって何だよ? 何時、メゴロウが俺の飯の世話までしろって頼んだよ? メゴロウが頼んだのは、俺を送り届ける事だけ、だろ? あの『お願いします』に、それ以上の意味があったとは、到底思えないんだが?
「何故、そんな答えが返って来るのか理解に苦しむが」
苦しめ、こんにゃろ。
「君が、彼の交友関係が広がるのが良い事だと思う様に、彼も、そう思っているのではないのか?」
「…は…?」
「入学してから、君は誰とも深く係る事をしなかった。誰も寄せ付けなかった。人当たりは良いが、それだけだ。一定以上の距離から近付く事は無かった。それが、彼が来てから君は変わった。…何故だ?」
「…何故って…」
何故って、それは前世を思い出したからだ。大体、俺は他人と距離を取った事なんかない。皆が寄って来ないだけだ。ゲームでのケタロウは、そうだったじゃないか。上辺だけ、見た目だけ、それだけだろう? 大体、ゲームではキャラの感情なんて、事細かく描かれないし、その判断はプレイヤーに委ねられるし、それに、俺は死ぬのが決まってる悪役だし、周りと必要以上に仲良くなる必要なんて無いだろう? …だから、私は…――――――――。
「まあ、そんな今にも死にそうな顔をしていては、周りにも影響が出る。君はもっと自分の事を理解するべきだ」
「…っ…!?」
生徒会長の呆れた様な溜め息と吐き出された言葉に、俺は、はっとなった。
…何だ? 俺は、今、何を考えた…?
"何か"を思い出しそうになった。
ずっと、引っ掛かっていた"何か"。
が、それは生徒会長に話し掛けられた事で霧散して行った。
「とにかく、食べて良く寝て英気を養え」
「…そうですね…。…ありがとうございます」
まあ…何だかんだで、生徒会長は俺の心配をしてくれているのだろう。
流石にここまで言われて反発するのも、大人気が無いか。
生徒会長の言葉を信じるのなら、メゴロウは俺の心配をしてくれている。
あの可愛いメゴロウに、心労を負わせるのは本意じゃない。
メゴロウには、大きな役割があるんだ。
俺から離れるのも、きっと、その為だろう。
俺と一緒に居ても、成長しない…そう、悟ったんだろう。
熱中症で倒れる自分の体調もコントロール出来ない俺じゃ、仕方が無い。
仕方が無いが…。
「…寂しいな…」
それは小さく、ぽつりと、するりと、零れ落ちて行った言葉だった。目の前に座る生徒会長にだって、届く事は無いだろう。現に顔色を変えずに、黙々とシチューを食べてるし。だから、俺もバゲットにエビグラタンを乗せて、口の中へと運んだ。
◇
「…眠れない…」
ベッドで横になり、俺はぼそっと呟いた。
食べ終わった後、生徒会長は本当にコーヒーを飲みに来た。で、生徒会長が自分の部屋へ帰る時に、メゴロウが帰って来た。ご飯は食べたのかと聞かれたから、食べたと答えたら『良かった』って、小さく笑われて、生徒会長が言った事は本当だったんだなって、改めて思った。俺も食べたのかと聞けば、何々が美味しかったですって、返事が返って来て『そうか、良かったね』って笑った。
まあ、それは置いといて。
眠れない。
腹も膨れてるし、それなりに疲れてる筈なのに、眠れない。
ギンギンに目が冴えてる。
眠らないと、朝起きられないだろうが。
遠足を前にした子供かよ。
いや、エロゲ発売前の俺か。
「…エロゲ…か…」
前世では眠れない時は、エロ動画観たり、エロゲして一発抜いてから寝てたよな…。
そう思った俺は、むくりと身体を起こした。
「君は何時も彼にばかり食べさせて、自分の食事を疎かにするから、体力が無いと思われる。この機会に自分の食を優先するべきだ」
いや、俺、食べてるけどな? メゴロウと一緒だから、食が細いって思われているだけだろう?
若干遠い目をする俺の前に座るのは、生徒会長。そして、ここは寮の食堂だ。コーヒーを淹れている間に、食堂が開く時間になっていたらしい。ぶっちゃけ食欲が無かったから、晩飯は無しでも良いかと思っていたんだが、どうやら生徒会長にはお見通しだったらしい。
「彼に頼まれたからな。食べて、その鬱陶しい顔を何とかしろ」
しかし、この物言いである。
鬱陶しいって、何だ、この眼鏡。
お前の方が鬱陶しいだろう。
見ろ。食堂に入って来る奴ら、俺達を見て一瞬固まって、で、そろ~っと視線を外して、決してこっちを見ない様にしながら料理を選んだり注文したりして、俺達から一番遠いテーブルに逃げて行っているからな? 何だよ、ここは魔の海域かよ。バミューダトライアングルかよ。
「…そうは言われましても、この顔は生まれながらの物ですので、どうにかするには整形するしか無いと思いますが。両親、いえ、先祖代々継がれて来た物に手を加えるとは、それは冒涜以外の何物でもありません」
前世の俺の母親がテレビで整形のCMとか、整形したとかのニュースとか、ドラマとか観る度に良く言ってたな。
『親からの授かり物に手を加えるなんて』
って。今の世代はどうかは知らないけど、俺の親世代は整形には嫌悪感を露わにしていた。何でかな? 整形して、それで悩む事が減って気が楽になるんなら、それはそれで良いと思うけどな。その為の整形じゃないのか? と、俺は思うのだが、ここは親の言葉を使わせて貰おう。なんて、単純にムカついたからだが。頼まれたって何だよ? 何時、メゴロウが俺の飯の世話までしろって頼んだよ? メゴロウが頼んだのは、俺を送り届ける事だけ、だろ? あの『お願いします』に、それ以上の意味があったとは、到底思えないんだが?
「何故、そんな答えが返って来るのか理解に苦しむが」
苦しめ、こんにゃろ。
「君が、彼の交友関係が広がるのが良い事だと思う様に、彼も、そう思っているのではないのか?」
「…は…?」
「入学してから、君は誰とも深く係る事をしなかった。誰も寄せ付けなかった。人当たりは良いが、それだけだ。一定以上の距離から近付く事は無かった。それが、彼が来てから君は変わった。…何故だ?」
「…何故って…」
何故って、それは前世を思い出したからだ。大体、俺は他人と距離を取った事なんかない。皆が寄って来ないだけだ。ゲームでのケタロウは、そうだったじゃないか。上辺だけ、見た目だけ、それだけだろう? 大体、ゲームではキャラの感情なんて、事細かく描かれないし、その判断はプレイヤーに委ねられるし、それに、俺は死ぬのが決まってる悪役だし、周りと必要以上に仲良くなる必要なんて無いだろう? …だから、私は…――――――――。
「まあ、そんな今にも死にそうな顔をしていては、周りにも影響が出る。君はもっと自分の事を理解するべきだ」
「…っ…!?」
生徒会長の呆れた様な溜め息と吐き出された言葉に、俺は、はっとなった。
…何だ? 俺は、今、何を考えた…?
"何か"を思い出しそうになった。
ずっと、引っ掛かっていた"何か"。
が、それは生徒会長に話し掛けられた事で霧散して行った。
「とにかく、食べて良く寝て英気を養え」
「…そうですね…。…ありがとうございます」
まあ…何だかんだで、生徒会長は俺の心配をしてくれているのだろう。
流石にここまで言われて反発するのも、大人気が無いか。
生徒会長の言葉を信じるのなら、メゴロウは俺の心配をしてくれている。
あの可愛いメゴロウに、心労を負わせるのは本意じゃない。
メゴロウには、大きな役割があるんだ。
俺から離れるのも、きっと、その為だろう。
俺と一緒に居ても、成長しない…そう、悟ったんだろう。
熱中症で倒れる自分の体調もコントロール出来ない俺じゃ、仕方が無い。
仕方が無いが…。
「…寂しいな…」
それは小さく、ぽつりと、するりと、零れ落ちて行った言葉だった。目の前に座る生徒会長にだって、届く事は無いだろう。現に顔色を変えずに、黙々とシチューを食べてるし。だから、俺もバゲットにエビグラタンを乗せて、口の中へと運んだ。
◇
「…眠れない…」
ベッドで横になり、俺はぼそっと呟いた。
食べ終わった後、生徒会長は本当にコーヒーを飲みに来た。で、生徒会長が自分の部屋へ帰る時に、メゴロウが帰って来た。ご飯は食べたのかと聞かれたから、食べたと答えたら『良かった』って、小さく笑われて、生徒会長が言った事は本当だったんだなって、改めて思った。俺も食べたのかと聞けば、何々が美味しかったですって、返事が返って来て『そうか、良かったね』って笑った。
まあ、それは置いといて。
眠れない。
腹も膨れてるし、それなりに疲れてる筈なのに、眠れない。
ギンギンに目が冴えてる。
眠らないと、朝起きられないだろうが。
遠足を前にした子供かよ。
いや、エロゲ発売前の俺か。
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