110 / 141
おまけ
危機編・10※
しおりを挟む
「…トイセ先輩…」
「…強化ガラスだから、そう簡単に割られる事は無いと思うが…」
不安そうな声が出てしまうのも、仕方が無い。
先輩は何時も通り…では無いが、平静を装って、ずれた眼鏡の位置を人差し指で直しながら、答えてくれた。
「え?」
「あ」
何とか、この訳の解らない状況を整理しようと思った処で、ゴンベ王子とメゴロウの驚いた様な声が聞こえて来た。
二人は、ガラスを叩くマバチの後ろを、斃れている巨大マウスをじっと見ていた。
俺と先輩も、二人の視線に誘われる様に、それを見る。いや、見てしまった。
ピクリと、地面に垂れて落ちている、巨大マウスの長い尻尾が動いた様に見えた。
…いや…まさかな…。
近付いて来る巨大マウスの振動で地面が揺れて、それが伝わっただけだと、思いたかった。思い込みたかった。
しかし、他の巨大マウス達が、斃れている巨大マウスに触れる距離までになった時、死んで動かない筈のそれが、勢い良く飛び上がり、それの首に噛み付いた事で、それは儚い夢想だったと思い知る。
「うっ!」
「おわっ!?」
「な…っ…!」
「…元気だなぁ」
俺、ゴンベ王子、先輩、メゴロウの順に声を上げたが…メゴロウ、それ、何か違うから!
てか、何だよ!?
この、いきなりの怪獣大戦争みたいなのはっ!?
てか、お前も死んでいただろう!?
マバチだって!!
何で、こんなゾンビみたくなってんだよ…っ…!!
「…って…ゾンビ…?」
自分の考えにはっとして、それを音にした。
マバチのサークルは、不老不死の薬を作ろうとしていたんだよ、な…?
…何か、先輩やゴンベ王子の口振りから察するに、失敗の常習犯らしいし?
「…実験失敗してゾンビになったのか!?」
好き好んでゾンビになる奴なんて、いない。
いないはずだ。
いないと言ってくれ。
多分、薬をマウスに飲ませて殺して、生き返ったから、実験が成功したと思って、自分も薬を飲んだって事か!? 経過とかを見たりせずに!?
「こんな不老不死があってたまるかっ!!」
マバチのサークルには、どれだけの人数が所属しているんだ!?
そいつら、全員して薬を飲んでいないよな!?
そんな馬鹿ばかりじゃないよな!?
生き返ったマウスはどうなったんだ!?
そいつは、普通サイズなのか!? それとも巨大サイズなのか!?
この巨大マウスは、違う。
マバチに食われて…噛まれて、死んで、ゾンビ化したから…って、伝染するのかよっ!? それも、個体差があるっぽい? 本っ当に、何で、バイオでハザードな世界になっているんだよ!?
「…って…まさか…」
嫌な予感がして、ちらりと隣に立つメゴロウを見れば。
「ガディシス様から、啓示を頂いていました。これが災厄で間違い無いそうです」
メゴロウは、俺の視線を真っ直ぐと受け止めて、大きく頷いた。
いーやーっ!!
「エロゲだぞっ!? それも学園物!! 何で、そんなエロゲの世界がバイオでハザードな世界になるんだっ!?」
そりゃ確かに世界を救うってのがあったが、それは、俺が垂れ流した事から解る様に、おまけ程度の物で…! メインは恋愛! エロなんだからな!? 何で、そのおまけにこんな力を入れているんだ!? いや、逆に力を抜いたのか!?
「ケタロウ様、可愛い…」
「え? ケタロウ君、大丈夫? 落ち着いて? ハーブティーでも淹れようか? ちょっと摘んで来るね。トイセ君手伝って」
叫び出した俺に、ゴンべ王子が目を丸くしたかと思ったら、何やら訳の解らない事を言って先輩の腕を掴んだ。
「いや、今、ガディシス様がどうと…まあ、お茶で心を落ち着けてからの方が良いか」
お前らが落ち着けーっ!!
ゾンビ眺めながら、優雅に茶をしばける筈がないだろう!?
そして、メゴロウ! 腰に腕を回してくるな! 目をハートにするなっ!
『ミシッ…』
腰に巻き付くメゴロウの腕を解こうとしていたら、そんな嫌な音が聞こえた。
「…強化ガラスだから、そう簡単に割られる事は無いと思うが…」
不安そうな声が出てしまうのも、仕方が無い。
先輩は何時も通り…では無いが、平静を装って、ずれた眼鏡の位置を人差し指で直しながら、答えてくれた。
「え?」
「あ」
何とか、この訳の解らない状況を整理しようと思った処で、ゴンベ王子とメゴロウの驚いた様な声が聞こえて来た。
二人は、ガラスを叩くマバチの後ろを、斃れている巨大マウスをじっと見ていた。
俺と先輩も、二人の視線に誘われる様に、それを見る。いや、見てしまった。
ピクリと、地面に垂れて落ちている、巨大マウスの長い尻尾が動いた様に見えた。
…いや…まさかな…。
近付いて来る巨大マウスの振動で地面が揺れて、それが伝わっただけだと、思いたかった。思い込みたかった。
しかし、他の巨大マウス達が、斃れている巨大マウスに触れる距離までになった時、死んで動かない筈のそれが、勢い良く飛び上がり、それの首に噛み付いた事で、それは儚い夢想だったと思い知る。
「うっ!」
「おわっ!?」
「な…っ…!」
「…元気だなぁ」
俺、ゴンベ王子、先輩、メゴロウの順に声を上げたが…メゴロウ、それ、何か違うから!
てか、何だよ!?
この、いきなりの怪獣大戦争みたいなのはっ!?
てか、お前も死んでいただろう!?
マバチだって!!
何で、こんなゾンビみたくなってんだよ…っ…!!
「…って…ゾンビ…?」
自分の考えにはっとして、それを音にした。
マバチのサークルは、不老不死の薬を作ろうとしていたんだよ、な…?
…何か、先輩やゴンベ王子の口振りから察するに、失敗の常習犯らしいし?
「…実験失敗してゾンビになったのか!?」
好き好んでゾンビになる奴なんて、いない。
いないはずだ。
いないと言ってくれ。
多分、薬をマウスに飲ませて殺して、生き返ったから、実験が成功したと思って、自分も薬を飲んだって事か!? 経過とかを見たりせずに!?
「こんな不老不死があってたまるかっ!!」
マバチのサークルには、どれだけの人数が所属しているんだ!?
そいつら、全員して薬を飲んでいないよな!?
そんな馬鹿ばかりじゃないよな!?
生き返ったマウスはどうなったんだ!?
そいつは、普通サイズなのか!? それとも巨大サイズなのか!?
この巨大マウスは、違う。
マバチに食われて…噛まれて、死んで、ゾンビ化したから…って、伝染するのかよっ!? それも、個体差があるっぽい? 本っ当に、何で、バイオでハザードな世界になっているんだよ!?
「…って…まさか…」
嫌な予感がして、ちらりと隣に立つメゴロウを見れば。
「ガディシス様から、啓示を頂いていました。これが災厄で間違い無いそうです」
メゴロウは、俺の視線を真っ直ぐと受け止めて、大きく頷いた。
いーやーっ!!
「エロゲだぞっ!? それも学園物!! 何で、そんなエロゲの世界がバイオでハザードな世界になるんだっ!?」
そりゃ確かに世界を救うってのがあったが、それは、俺が垂れ流した事から解る様に、おまけ程度の物で…! メインは恋愛! エロなんだからな!? 何で、そのおまけにこんな力を入れているんだ!? いや、逆に力を抜いたのか!?
「ケタロウ様、可愛い…」
「え? ケタロウ君、大丈夫? 落ち着いて? ハーブティーでも淹れようか? ちょっと摘んで来るね。トイセ君手伝って」
叫び出した俺に、ゴンべ王子が目を丸くしたかと思ったら、何やら訳の解らない事を言って先輩の腕を掴んだ。
「いや、今、ガディシス様がどうと…まあ、お茶で心を落ち着けてからの方が良いか」
お前らが落ち着けーっ!!
ゾンビ眺めながら、優雅に茶をしばける筈がないだろう!?
そして、メゴロウ! 腰に腕を回してくるな! 目をハートにするなっ!
『ミシッ…』
腰に巻き付くメゴロウの腕を解こうとしていたら、そんな嫌な音が聞こえた。
0
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
透夜×ロロァのお話です。
本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけを更新するかもです。
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑)
大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑)
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード
中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。
目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。
しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。
転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。
だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。
そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。
弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。
そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。
颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。
「お前といると、楽だ」
次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。
「お前、俺から逃げるな」
颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。
転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。
これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。
続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』
かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、
転生した高校時代を経て、無事に大学生になった――
恋人である藤崎颯斗と共に。
だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。
「付き合ってるけど、誰にも言っていない」
その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。
モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、
そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。
甘えたくても甘えられない――
そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。
過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの
じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。
今度こそ、言葉にする。
「好きだよ」って、ちゃんと。
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
お前らの目は節穴か?BLゲーム主人公の従者になりました!
MEIKO
BL
本編完結しています。お直し中。第12回BL大賞奨励賞いただきました。
僕、エリオット・アノーは伯爵家嫡男の身分を隠して公爵家令息のジュリアス・エドモアの従者をしている。事の発端は十歳の時…家族から虐げられていた僕は、我慢の限界で田舎の領地から家を出て来た。もう二度と戻る事はないと己の身分を捨て、心機一転王都へやって来たものの、現実は厳しく死にかける僕。薄汚い格好でフラフラと彷徨っている所を救ってくれたのが完璧貴公子ジュリアスだ。だけど初めて会った時、不思議な感覚を覚える。えっ、このジュリアスって人…会ったことなかったっけ?その瞬間突然閃く!
「ここって…もしかして、BLゲームの世界じゃない?おまけに僕の最愛の推し〜ジュリアス様!」
知らぬ間にBLゲームの中の名も無き登場人物に転生してしまっていた僕は、命の恩人である坊ちゃまを幸せにしようと奔走する。そして大好きなゲームのイベントも近くで楽しんじゃうもんね〜ワックワク!
だけど何で…全然シナリオ通りじゃないんですけど。坊ちゃまってば、僕のこと大好き過ぎない?
※貴族的表現を使っていますが、別の世界です。ですのでそれにのっとっていない事がありますがご了承下さい。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。
藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。
妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、
彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。
だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、
なぜかアラン本人に興味を持ち始める。
「君は、なぜそこまで必死なんだ?」
「妹のためです!」
……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。
妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。
ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。
そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。
断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。
誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる