攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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おまけ

危機編・10※

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「…トイセ先輩…」

「…強化ガラスだから、そう簡単に割られる事は無いと思うが…」

 不安そうな声が出てしまうのも、仕方が無い。
 先輩は何時も通り…では無いが、平静を装って、ずれた眼鏡の位置を人差し指で直しながら、答えてくれた。

「え?」

「あ」

 何とか、この訳の解らない状況を整理しようと思った処で、ゴンベ王子とメゴロウの驚いた様な声が聞こえて来た。
 二人は、ガラスを叩くマバチの後ろを、斃れている巨大マウスをじっと見ていた。
 俺と先輩も、二人の視線に誘われる様に、それを見る。いや、見てしまった。
 ピクリと、地面に垂れて落ちている、巨大マウスの長い尻尾が動いた様に見えた。

 …いや…まさかな…。

 近付いて来る巨大マウスの振動で地面が揺れて、それが伝わっただけだと、思いたかった。思い込みたかった。
 しかし、他の巨大マウス達が、斃れている巨大マウスに触れる距離までになった時、死んで動かない筈のそれが、勢い良く飛び上がり、それの首に噛み付いた事で、それは儚い夢想だったと思い知る。

「うっ!」

「おわっ!?」

「な…っ…!」

「…元気だなぁ」

 俺、ゴンベ王子、先輩、メゴロウの順に声を上げたが…メゴロウ、それ、何か違うから!
 てか、何だよ!?
 この、いきなりの怪獣大戦争みたいなのはっ!?
 てか、お前も死んでいただろう!?
 マバチだって!!
 何で、こんなゾンビみたくなってんだよ…っ…!!

「…って…ゾンビ…?」

 自分の考えにはっとして、それを音にした。
 マバチのサークルは、不老不死の薬を作ろうとしていたんだよ、な…?
 …何か、先輩やゴンベ王子の口振りから察するに、失敗の常習犯らしいし?

「…実験失敗してゾンビになったのか!?」

 好き好んでゾンビになる奴なんて、いない。
 いないはずだ。
 いないと言ってくれ。
 多分、薬をマウスに飲ませて殺して、生き返ったから、実験が成功したと思って、自分も薬を飲んだって事か!? 経過とかを見たりせずに!?

「こんな不老不死があってたまるかっ!!」

 マバチのサークルには、どれだけの人数が所属しているんだ!?
 そいつら、全員して薬を飲んでいないよな!?
 そんな馬鹿ばかりじゃないよな!?
 生き返ったマウスはどうなったんだ!?
 そいつは、普通サイズなのか!? それとも巨大サイズなのか!?
 この巨大マウスは、違う。
 マバチに食われて…噛まれて、死んで、ゾンビ化したから…って、伝染するのかよっ!? それも、個体差があるっぽい? 本っ当に、何で、バイオでハザードな世界になっているんだよ!?

「…って…まさか…」

 嫌な予感がして、ちらりと隣に立つメゴロウを見れば。

「ガディシス様から、啓示を頂いていました。これが災厄で間違い無いそうです」

 メゴロウは、俺の視線を真っ直ぐと受け止めて、大きく頷いた。

 いーやーっ!!

「エロゲだぞっ!? それも学園物!! 何で、そんなエロゲの世界がバイオでハザードな世界になるんだっ!?」

 そりゃ確かに世界を救うってのがあったが、それは、俺が垂れ流した事から解る様に、おまけ程度の物で…! メインは恋愛! エロなんだからな!? 何で、そのおまけにこんな力を入れているんだ!? いや、逆に力を抜いたのか!?

「ケタロウ様、可愛い…」

「え? ケタロウ君、大丈夫? 落ち着いて? ハーブティーでも淹れようか? ちょっと摘んで来るね。トイセ君手伝って」

 叫び出した俺に、ゴンべ王子が目を丸くしたかと思ったら、何やら訳の解らない事を言って先輩の腕を掴んだ。

「いや、今、ガディシス様がどうと…まあ、お茶で心を落ち着けてからの方が良いか」

 お前らが落ち着けーっ!!
 ゾンビ眺めながら、優雅に茶をしばける筈がないだろう!?
 そして、メゴロウ! 腰に腕を回してくるな! 目をハートにするなっ!

『ミシッ…』

 腰に巻き付くメゴロウの腕を解こうとしていたら、そんな嫌な音が聞こえた。
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