攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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おまけ

危機編・15

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 ただの毛むくじゃらやら、ただの巨大化なら、まだ可愛げがあるもんだと思う。
 しかし、目の前に立つ二人からは、生気が感じられず…と云うか、完全に白目を剥いていた。そのガラスの向こうに居る、ダンプマウスも白目を剥いているし、口からは人の手足がはみ出て見えた。

 完っ全にゾンビ化してるだろう、これ!? 
 マバチは何処へ行ったんだ!?
 まさか、食われたのか!?

「メゴロウ!」

 ゆらゆらとふらふらと近付いて来る二人へ、とうもろこしをもいで投げながら、もう一度昨日へと、俺が言う前にメゴロウが大きく頷いて口を開いた。

りますか?」

 と。

「物騒な方へ行かないで良いからねっ!?」

 殺るって、先輩とゴンベ王子をかっ!?
 顔色一つ変えずに…ってか、目からハイライト消えているからっ!!

「私達の話し方が拙かったのかも知れない。もう一度、優しく話そう!」

「え。僕は十二分に気を遣って話しましたけど」

 何処がっ!?
 お前は地の底に突き落として、その上から土を掛けて埋めただろうがっ!!

 渋々と嫌そうにしながらも、メゴロウは時間を戻した。

「…え…どうして…大きい、のか? …その方が…可愛いでしょ…? …僕…背が低いから…高くなり…たくて…」

 それが、どうして全体的にスケールアップするんだよっ!? おかしいだろう!? 

「…マバチ先輩…。マウスが可愛いのは小さいからです…マウス…ネズミが、大きくて許されるのは、カピバラまでです…」

 マバチの後ろを闊歩するカピバラサイズのマウスを見ながら、俺はそう言った。
 …おい…前回は、こんなサイズ居なかったよな…?
 何だよ、これ…。
 災厄なんて、おまけもおまけの筈だよな?
 何でシナリオに変更あるんだよ…。
 
「…あ…そうかあ…普通は…そうなんだぁ…」

 何、照れ臭そうに頭を掻くんだ…。普通じゃない自覚があるのか…?
 …って…普通…?
 …俺はゲームの隠し攻略キャラだ…。
 謂わば、普通ではない…。
 …まさか…。
 隠し攻略普通じゃないキャラだから、災厄の専用シナリオがあるとか言わないよなっ!?
 通常のヒロインのエンディングはどうだった!?
 何で、エンディング垂れ流したんだ、前世の俺―――――っ!!

 ◇

 そして、翌日の事を思いながら、悶々とした夜を過ごし、前回、前々回より早めに大学部へと行った俺は、温室の入口付近の地面に両手をついて項垂れていた。

「…うん…知ってた…」

 腐る程、目に、耳にして来た言葉だが、こんなにもしっくりと、しみじみと使う日が来るなんて…な…。
 …何で…先輩もゴンベ王子も、温室の屋根を突き破る大きさになっているんだよ…何で、ダンプマウスは20トントレーラーサイズになっているんだよ…。
 マバチは、あれか? 天邪鬼なのか? 言われた事と反対の事をしないと気が済まないのか?
 それよりも…。

「…何で、大学部以外の人達は騒がないんだ…」

 あんなデカいマウス、街からでも見えるだろう…? てか、正門に居た守衛もしれっとしてたな? てか、俺達も、正門くぐるまで解らなかったな?

「…ガディシス様が、騒ぎにならないよう、目くらましの術を掛けてるって、今…」

 そんな気遣い要らないっ!!

「そんな事が出来るのなら、ガディシス様が何とかしてくれれば良いのに…」

 と、つい本音が零れてしまう。
 とは云え、基本的に神様は自分では動かない。人間の世界の事は人間に委ねる。余程の事がない限りは動かない。手を貸したりはしない。神託を与えて、人間の判断に、力に任せる…そう、小さい頃にスチャンが言っていたよな…。

「…あ…」

「…まあ、とにかくもう一度昨日に…うん?」

 もう一度昨日に戻って、違うアプローチをと言おうとしたが、メゴロウの何とも情けない様な、呆れた様な、そんな声と被った。

「…今のケタロウ様の…返事と言うか…その…」

 言い難そうにしているメゴロウの頭を、俺はそっと撫でて自称王子様スマイルを浮かべる。

「良いよ? 遠慮しないで言ってごらん?」

 どうせ、試練だとか何だとか言うんだろう? ゲームじゃ良くある話だ。

「…はい…『…べ、別に出来ない訳じゃないんだからねっ!』…と…」

 メゴロウの言葉に、その頭を撫でていた俺の手と自称王子様スマイルが凍り付いた。

 何処のツンデレだよっ!?
 今ので解ったぞ!
 自分でやって出来なかったから、俺達に押し付けたな!?
 あんの、ポンコツ親父女神がっ!!

「…ケタロウ様…どうします?」

「とにかく、昨日へ」

 上目遣いで聞いて来るメゴロウに、痛む頭を片手で押さえながら、俺はそう言った。
 因みに、先輩とゴンベ王子は、温室がジャストフィットしているのか、温室から出られずに、ひたすらに頭を揺らしていた。
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