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おまけ
危機編・19
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「…アニキ…僕よりも…優しかった…」
ぼそっと、唇を尖らせるメゴロウの頭を俺は『まあまあ』と撫でた。
俺とメゴロウは今、キヤクが運転する車の後部座席に二人並んで座っている。
キヤクがどんな人物かは、俺達以外は知らない。から、キヤクはメゴロウの叔父さんと云う体で、俺達に話し掛けて来た。
『私の妻が…君のお母さんの妹が倒れたから、一緒に病院に来て欲しい…!』
訳すと『王様が呼んで居るから、至急王宮へ』だ。メゴロウが『不安だから、ケタロウ様も一緒に』と言えば、キヤクは勿論と頷き、先輩達も『早く行った方が良い』と、背中を押してくれた。
で、正門前に停めてあった車に俺達は乗り込んで、今、王宮へと向かっている。
で、メゴロウが拗ねているのは、ニキタがやたらとマバチを可愛がっていたから…だろう。
俺には、メゴロウ相手の時と変わらない様に見えるが、まあ、本人にしか解らない事があるんだろうな。
良し良しと頭を撫でながら、俺はまたモヤッとしてしまう。
そんなに、ニキタが好きなのかと。
俺が傍にいるのに、そんなにニキタの事ばかり考えるなよって。
…うう…俺って、結構嫉妬するタイプだったんだなあ…。あと、独占欲もか…? うう…。
そんな嫉妬の塊の心と、拗ねて落ち込んだ塊の心の事など知らずに、車は走り続けた。
◇
「…褒美…ですか…」
メゴロウの呟きに、俺達の正面に座る王様が大きく頷いた。
「うむ。今迄、そなた達をこの王都に縛り付けていた。その詫びをしたい」
王宮に連れて来られた俺達は、気を使わせない為だろう、簡素な部屋に通された。
そこで、一つのテーブルを王様、俺、メゴロウが囲っていた。少し離れた場所にキヤクが居て、そのキヤクの傍に大臣とか、まあ、そんなのが数人程立っている。
…良いのか…こんなフレンドリーな感じで…。実家のサロンでティータイムみたいなノリだぞ…。いや、実家でもんぺ姿になったりはしないが…。
王様曰く、あの揺れの後直ぐに、ポンコツ親父女神様が降臨したそうだ。
『恐れる必要はありません。あの光をご覧なさい』
と、執務室に居た王様や、大臣達を外へと連れ出して、白銀の光を見せた。
『あれは、救世主…セ・メゴロウの力…。ウ・ケタロウとの絆を用い、この地に現れ様とした邪神を…災厄を退けたのです』
と、曰ったと。
…いや…頭が痛い…。
…それ、ポンコツ親父女神様の自作自演だろうが…。災厄の内容を知っている俺は、ただ遠い目をするしかない。
あの光、大学部からは離れた位置で光っていただろう…。いや、王宮からだと、大学部の方から上がっている様に見えたのか?
王様達、ポンコツ親父女神様に騙されているからな? とは、言えない。災厄を回避したと言っても、俺とメゴロウ以外は、どう回避したのかは知らないからな。だから、てっとり早く解る様にと、ポンコツ親父女神様が力に物を言わせたんだろう。有り難い様な傍迷惑な様な…。
まあ…知らぬが仏って事で良いか?
それで、礼を言いたいからと、キヤクを使い、俺達を招いたと。
いや、もう、この部屋に入るなり、王様が土下座するわ、大臣達がそんな王様を止めるかと思えば、やっぱり土下座するわで、とにかく椅子に座って下さいと、何でか俺達が、王様に椅子を勧めると云う事態に陥った。
で、感謝の言葉を述べられ、これからは自由に好きな様に過ごせと、何か困った事があれば、何時でも力になると言われた。
いや、それ、もう、褒美なのでは?
「…褒美なんて、僕は必要ありません。…ケタロウ様が居てくれたら…それだけで…。…だから…僕の分もケタロウ様へ…」
そう静かに微笑んで、膝の上にある俺の手をそっと握るメゴロウは、実にゲームの主人公らしく、清廉潔白に見えた。
「…メゴロウ…」
そんなメゴロウの手の上に、俺は空いていた手を重ねる。
「…私も褒美は必要ありません。先の揺れで被害があった場所に使って下さい…。どんな些細な事でも…。…私は…こうして彼と…メゴロウと居る事が出来るのなら、それだけで十分ですので…」
うん…。
こうして、触れ合える場所にメゴロウが居る。
笑って、俺を見てくれる。
笑って、話が出来る。
メゴロウが淹れてくれたコーヒーを飲んで、メゴロウにご飯を食べさせて、一緒に眠って、朝の挨拶をして…俺は、これで十分だ。
だって、俺の最初の…前世を思い出した時に、一番最初に思ったのは…願ったのは、ただ、死にたくない。生きたい。…それだったんだから。それが、こうして大切な人が出来て、この先も生きていける。
…これ以上の褒美なんて、ないだろう?
「…何と…流石はガディシス様が選ばれた…」
いや、何で目頭押さえるんだ…。
って、後ろ…キヤク達が居る方から『立派な』とか『謙虚な』とか言いながら啜り泣く声が聞こえる…いや…男…おっさんも居るが…の、啜り泣きって、軽くホラーだからな? 煩いが、スチャンの男泣きの方がマシだな。
ぼそっと、唇を尖らせるメゴロウの頭を俺は『まあまあ』と撫でた。
俺とメゴロウは今、キヤクが運転する車の後部座席に二人並んで座っている。
キヤクがどんな人物かは、俺達以外は知らない。から、キヤクはメゴロウの叔父さんと云う体で、俺達に話し掛けて来た。
『私の妻が…君のお母さんの妹が倒れたから、一緒に病院に来て欲しい…!』
訳すと『王様が呼んで居るから、至急王宮へ』だ。メゴロウが『不安だから、ケタロウ様も一緒に』と言えば、キヤクは勿論と頷き、先輩達も『早く行った方が良い』と、背中を押してくれた。
で、正門前に停めてあった車に俺達は乗り込んで、今、王宮へと向かっている。
で、メゴロウが拗ねているのは、ニキタがやたらとマバチを可愛がっていたから…だろう。
俺には、メゴロウ相手の時と変わらない様に見えるが、まあ、本人にしか解らない事があるんだろうな。
良し良しと頭を撫でながら、俺はまたモヤッとしてしまう。
そんなに、ニキタが好きなのかと。
俺が傍にいるのに、そんなにニキタの事ばかり考えるなよって。
…うう…俺って、結構嫉妬するタイプだったんだなあ…。あと、独占欲もか…? うう…。
そんな嫉妬の塊の心と、拗ねて落ち込んだ塊の心の事など知らずに、車は走り続けた。
◇
「…褒美…ですか…」
メゴロウの呟きに、俺達の正面に座る王様が大きく頷いた。
「うむ。今迄、そなた達をこの王都に縛り付けていた。その詫びをしたい」
王宮に連れて来られた俺達は、気を使わせない為だろう、簡素な部屋に通された。
そこで、一つのテーブルを王様、俺、メゴロウが囲っていた。少し離れた場所にキヤクが居て、そのキヤクの傍に大臣とか、まあ、そんなのが数人程立っている。
…良いのか…こんなフレンドリーな感じで…。実家のサロンでティータイムみたいなノリだぞ…。いや、実家でもんぺ姿になったりはしないが…。
王様曰く、あの揺れの後直ぐに、ポンコツ親父女神様が降臨したそうだ。
『恐れる必要はありません。あの光をご覧なさい』
と、執務室に居た王様や、大臣達を外へと連れ出して、白銀の光を見せた。
『あれは、救世主…セ・メゴロウの力…。ウ・ケタロウとの絆を用い、この地に現れ様とした邪神を…災厄を退けたのです』
と、曰ったと。
…いや…頭が痛い…。
…それ、ポンコツ親父女神様の自作自演だろうが…。災厄の内容を知っている俺は、ただ遠い目をするしかない。
あの光、大学部からは離れた位置で光っていただろう…。いや、王宮からだと、大学部の方から上がっている様に見えたのか?
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まあ…知らぬが仏って事で良いか?
それで、礼を言いたいからと、キヤクを使い、俺達を招いたと。
いや、もう、この部屋に入るなり、王様が土下座するわ、大臣達がそんな王様を止めるかと思えば、やっぱり土下座するわで、とにかく椅子に座って下さいと、何でか俺達が、王様に椅子を勧めると云う事態に陥った。
で、感謝の言葉を述べられ、これからは自由に好きな様に過ごせと、何か困った事があれば、何時でも力になると言われた。
いや、それ、もう、褒美なのでは?
「…褒美なんて、僕は必要ありません。…ケタロウ様が居てくれたら…それだけで…。…だから…僕の分もケタロウ様へ…」
そう静かに微笑んで、膝の上にある俺の手をそっと握るメゴロウは、実にゲームの主人公らしく、清廉潔白に見えた。
「…メゴロウ…」
そんなメゴロウの手の上に、俺は空いていた手を重ねる。
「…私も褒美は必要ありません。先の揺れで被害があった場所に使って下さい…。どんな些細な事でも…。…私は…こうして彼と…メゴロウと居る事が出来るのなら、それだけで十分ですので…」
うん…。
こうして、触れ合える場所にメゴロウが居る。
笑って、俺を見てくれる。
笑って、話が出来る。
メゴロウが淹れてくれたコーヒーを飲んで、メゴロウにご飯を食べさせて、一緒に眠って、朝の挨拶をして…俺は、これで十分だ。
だって、俺の最初の…前世を思い出した時に、一番最初に思ったのは…願ったのは、ただ、死にたくない。生きたい。…それだったんだから。それが、こうして大切な人が出来て、この先も生きていける。
…これ以上の褒美なんて、ないだろう?
「…何と…流石はガディシス様が選ばれた…」
いや、何で目頭押さえるんだ…。
って、後ろ…キヤク達が居る方から『立派な』とか『謙虚な』とか言いながら啜り泣く声が聞こえる…いや…男…おっさんも居るが…の、啜り泣きって、軽くホラーだからな? 煩いが、スチャンの男泣きの方がマシだな。
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