攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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おまけ

危機編・完※

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「…っあ、ま、待って…っ…!」

「…待てません…っ…!」

 ザーザーと、音を立ててシャワーのお湯が俺達に降り注ぐ。

 あれから、晩餐だとか言い出した王様の誘いを断る為に、メゴロウの腰を引き寄せて、ついでに手を取って、その指先にキスをしたのがいけなかったのかも知れない。が、後の祭りだ。

『お誘いは光栄な事ですが…憂いが晴れた今、私は彼を労いたいと思うのです』

 なんて、言わなければ良かった。
 そう言って、覗き込む様にして見たメゴロウの目は、正に餌を前にした餓えた獣の様だったのだから。

「…だ、だめ…っ…!」

 寮に帰って来て部屋のドアを閉めたら、速攻でメゴロウに抱き締められて、キスをされた。それに、つい、濃厚なべろちゅーをかましたのが駄目だったのかも知れない。が、それも、やはり後の祭りで。

「ケタロウ様…っ…ケタロウ様…っ…!」

 べろちゅーをした事で、メゴロウのメゴロウが勢い良く着火して、押し倒されそうになって『シャワーを浴びてからっ!!』と、何とかバスルームに来たが。

「…っ、ん…っ…!」

 俺は今、メゴロウに背中を向けて、バスルームの壁に両手を付いて、ただ喘いでいた。

『汚いから! 汗臭いから!』

 と、何度言っても…。

『ケタロウ様に汚いトコなんてありません!』

 と、身体を洗おうとする俺の手を取り、キスをしながら、ちんこを扱かれ…気が付けば、今は指が二本インサートされてるって、もうね、うん。

「…っ…は、あ…っ…メ、ゴロウ…良い子だから…ベッドで…」

 右手は俺の尻の穴を拡張しまくり、左手は俺の乳首を捏ね繰り回すメゴロウに、顔だけを向けて頼み込む。

「…ゆっくりと…愛し合いたいんだ…。だから…ね…?」

 きっと、俺の顔は赤くて、ついでにシャワーを浴びているから、濡れに濡れ濡れで、泣いている様に見えたのだろう。いや、実際涙目だったが。メゴロウはギュッと俺の乳首を摘まんだ後に、尻の穴から指を抜いて『解りました…』と言ってくれた。
 が。

「あぁ…っ…!!」

 メゴロウに強く手を引かれ、身体を拭く事も無く寝室へと連行されて『ふ~○こちゃ~ん!』と、何処かの泥棒さんのように後ろから飛び掛かられて、ベッドへと押し倒されたと思ったら、秒で突っ込まれた。

「あ、んな風に誘われて…っ…! 我慢なんて…っ…!!」

 誘ってない、誘ってない!!
 結果的にそうなっただけで…っ…!
 王様や、キヤク、その他諸々が引き留めようとするから、ドン引きしそうな事を言っただけなんだって…っ…!

「…っあ…! は、げ、し…っ…!!」

 後ろからガンガンと突かれまくって、俺はもう絶頂寸前だ。
 シーツをギュッと掴んで、額を押し付けて、爪先を丸めてそれに備える事しか出来ない。
 …けど…。
 そんな俺の言葉があったとは言え、こんな風に余裕が無いのは、再会した時に教室でめちゃくちゃにされた時以来だ。
 災厄の事…普段は気にしない様に気を張っていたのか…?
 張り詰めていた気が緩んで…そして、弾けた…そんな感じなのか…?
 …そうだよな…。
 …俺を生かす為に、何度も何度も…何度も戻って繰り返して来たんだもんな…一人で…。
 その為に、先送りになっていた問題が解決したんだから…。
 …それなら…これも仕方が無いのかもな…。

「…っん…ぅう…っ…!」

 白く霞が掛かって行く頭で、俺はそんな事を思った。

 ◇

「…う、ん…?」

 カチャリとした音が聞こえ、手首に冷たく硬い物の感触がして、俺は目を開けた。ぼんやりとした視界に、薄い明かりに照らされた天井が映る。

 ああ、何時の間にか眠っていたのか…。

「あ、起きました? お水飲みますか?」

 静かな声が聞こえて顔を動かせば、水の入ったコップを持った、裸のままのメゴロウがベッドの傍に立っていた。

「ああ…ありがと…う?」

 コップを受け取ろうと手を動かそうとしたら、頭の上でガチャッて音がして手を動かせない事に気付いた。

「…え…?」

 完全に意識が覚醒して、俺は自分の腕が頭の上にある事に気付いた。

 …は…?

「ケタロウ様、どうぞ」

 メゴロウが俺の頭を軽く持ち上げて、コップを口元へと持って来たから、口を開けば傾けられたコップから水が流れ込んで来た。ゆっくりと、少しづつ流れ込む冷えた水が、じわりと喉に滲みて行くのが気持ち良い。

 …? 何か…甘いな…?

「…メゴロウ…? はどう云う事かな?」

 まあ、水の味はどうでも良い。
 問題はだ。
 空になったコップを、両手で持って佇むメゴロウを俺は見上げた。
 手を動かせば、カチャカチャとした金属音が聞こえる。
 頭の上でクロスさせた腕、その手首に嵌っているのは…まさかの手錠か…?
 …何で?

「…僕…見たくて…」

 ふっと、目を細めて笑うメゴロウだが…何か…その目のハイライトが消えている様な気がするのは…気のせい…だよ、な?

「な、にを…?」

「…きっと…可愛いから…」

 コトリとベッドの傍にある小さな丸いテーブルにコップを置いて、メゴロウがベッドの上に上がり、俺の身体を跨ぐ。
 
 …ちょっと待て。何で、フル勃起しているんだ?
 今日、いや、もう日付は変わったのか?
 ズコパコやったよな?
 まだ、足りないのか?
 まぢか。
 時間を戻してもう一戦…じゃ済まないだろうが…ヤるのか?

「…ん…っ…」

 そんな事を思う俺の頬をメゴロウが指先でゆっくりと撫でる。
 冷たいコップを持っていたせいか、その指先が冷たくて思わず声が出てしまった。

「…可愛い…けど…きっと…ゾンビになったケタロウ様も可愛い…」

 ――――――――何て?

「…最初の時に、ガディシス様にお願いしていたんです…あの薬が欲しいって…」

 うっそりと微笑みながら、メゴロウは俺の頬から唇をなぞって行く。

「…は…?」

 …薬…? 最初…?

「…世界がどうなろうと、ケタロウ様が居れば僕はそれで良いんだけど…ガディシス様が五月蠅いから…あの薬をくれるなら、協力してあげるって言ったんです…ふふ…」

 メゴロウの手は唇をふにふにと摘まんだ後、顎を撫でて、つぅっと首筋まで下りて来た。

 んんんんっ!?

「…メ、ゴロウ…?」

 待て。
 マテ、マテ、マテマテマテ!!

「…お水…美味しかったですか…?」

 にっこりと、メゴロウはこれ以上ないぐらいに爽やかな笑顔を浮かべた。
 ただし、俺の首に両手を添えて。

 待てや、こら――――――――――――――――っ!!

 ◇

 ギシギシとした音と、カチャカチャとした音が部屋に響いていた。

「あ"あ"あ"あ"あ"っ"!!」

「…ああ…暴れないで…」

 暴れるだろう!
 てか、身体が勝手に動くんだよっ!!
 最初のゾンビマウスの時、ポンコツ親父女神様から啓示を受けたって言った時!
 そう言えば、やけに落ち着いていたよな!?
 お前、俺をゾンビにする為に、あのポンコツと裏取り引きしていたのか!?
 仮にも神だぞ!?
 ポンコツでも神だぞ!?
 ポンコツもポンコツで、そんな取り引きに乗るなよっ!!

「…あ…突き破っちゃった…? …まあ…良いか…」

 良くなああああああああぁいっ!!
 何、ナニ、なになに!?
 突き破ったって、何っ!?

「あ"あ"あ"あ"あ"っ"!!」

「…ああ…凄い…ぬるぬるする…」

 そんな熱い息(多分)を吐きながら、さらりと怖い事を言うなっ!!
 死んだ俺に酷い事をして来たからって、じれったいぐらいに解して来たお前は何処に行った!?
 ゾンビ化した途端、無理矢理捻じ込んで来やがってっ!!
 いや、痛みも何も感じないから良いけど! いや、良く無いっ!!

「…でも…こんなに冷たい…」

 ぺろりと俺の乳首を舐めて、悲しそうにメゴロウは言う。

 違うからっ!
 悲しいのは俺だからっ!!
 もう、何でこうなるんだっ!?

「…手首も…こんなに血が…」

 きっと擦れて切れたんだろう、身体を伸ばして流れる血をメゴロウが舐める。
 生きていれば、きっとその動きに俺の身体は震えたんだろうが…。
 が。
 如何せん、何も感じないんだよっ!!
 ああ、もうっ!!
 早く人間になりたい――――――――――――――――っ!!

 そんな俺の思いなんて無視して、メゴロウはひたすらにゾンビ化した俺を愛で続けた。
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