攻略されていたのは、俺

三冬月マヨ

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番外編

ぱんぷきん・前編

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 九月十四日は、メンズバレンタインデーだ。
 男が好きな女の子にパンツを贈って告白する日らしい。
 なんだそりゃ。普通のバレンタインデーよりハードル高くないか? パンツ贈るって、下心隠してないよな? それって脱がすのが目的だろ? イコール、えっちしましょうって事だよな?
 ってか、そんな文化、俺は知らなかったよ。
 そして、それが、しっかりとこの世界にある事もな。
 だって、ゲームではそんなの出て来な…アレか…俺だからか。ケタロウルートだから、メンズバレンタインデーがあるのか? そう云う事なのか、田中サン?
 ん?
 何で、そんな事を言っているのかって?

「…メゴロウ、これはどう云う事だい?」

 それは、今、現在進行系で俺の身に降り掛かっているからだよっ!!

「はい。ケタロウ様に似合うと思って買いました。思っていた以上に可愛くて可愛くて、見ているだけで、僕、こうなってしまいました」

 ベッドで俺の上に伸し掛かるメゴロウを見上げながら聞けば、ヤツはとってもとっても可愛い笑顔で、自分の膨らんだ股間を指差してくれた。
 いや、お前は何時だって俺を見れば元気になるだろうが。着ている物に左右されないだろ…多分…。
 が…。

「…どうして君もドロワーズを…?」

 そう、俺が今身に付けているのは、真っ白なふわふわで、もこもこのカボチャパンツだ。前世の俺は、カボチャパンツとしか知らないが、ケタロウとしての俺は、しっかりとこれが"ドロワーズ"だと認識していた。裾の長さは膝下まである。腰周りもだが、裾には赤いリボンがあしらってあり、それでキュッと絞られる様になっている。
 そして、メゴロウも、真っ黒なドロワーズを穿いていた。こちらの長さは普通? 脚の付け根と言うか、鼠頸部(だっけか?)を隠す程の長さだ。腰周りと裾の部分には、やはりリボンが。やたら可愛いピンク色のリボンがあった。
 そして、メゴロウのその中心は既に臨戦態勢で、せっかくの可愛いドロワーズに、染みを作っていたりする。

「せっかくですから、お揃いにしたいじゃないですか…似合いませんか?」

 おい、ヤメロ。
 こてんとあざとく首を傾げるな。
 メゴロウの艶のある黒髪に、ブラックオパールの様な輝きの瞳に、その黒いドロワーズは良く似合う。ピンクのリボンも良いアクセントになっている。

「良く似合っていて可愛いよ。でもね? ほんの一瞬前までは、私はゆったりとした膝下までの長袖のシャツを着ていた。下着だってドロワーズでは無かった。…また、時間を止めたね?」

 今の俺が着ているのは、このドロワーズ一枚のみ。俺のシャツとブリーフは何処に消えたんだと視線を泳がせれば…あった。床に雑に投げたな、こんにゃろめ。

「…だって…女性物の下着なんて、ケタロウ様は穿いてくれないと思ったから…店員さんと相談してせっかく買ったのに…」

 いや、店員止めろや。
 女の子に贈ると思ったのか?
 メゴロウは男の俺に贈るって、言ったのか?

「…君からの贈り物を、私が貰って嬉しくないと思ったのかい?」

 プレゼントなんて嬉しいに決まっているだろ。
 メゴロウが俺の為にあれこれ悩んだとか考えたら、踊りだすに決まってるだろ? 何ならフラッシュモブ用意するぞ?
 まあ、ドロワーズ見た瞬間にドン引くかも知れないし、穿けと言われたら躊躇うけど。
 が。
 だがしかし。
『気が付いたら、ドロワーズ穿いてました。てへぺろ』
 よりは、普通に手渡された方がマシだよ、ちくしょうっ!! どんな顔して、俺の着てるもん剥ぎ取って、穿かせたんだよ! 剥ぎ取るのはモンスターからで良いんだよっ!! 時間戻しやがれっ!

「あ…ごめんなさい…」

 なんて思いながら見ていたせいか、メゴロウは俺の上で萎々と萎れてしまった。メゴロウのちんこも。いや、このふわふわもこもこパンツの上から萎れてるのが解るって、どんだけ滾ってたんだよ…。

「…全く…」

 はあ、と軽く息を吐いて俺は指を前髪に差し込んでくしゃくしゃと掻き回した。

「贈り物はね、贈る瞬間も、貰う瞬間も楽しむものだよ? だから…まあ…前後してしまったけれどね? どんな言葉で贈る気だったのか、聞かせてくれるかい?」

 両手を伸ばして、メゴロウの頬を包んでそう言えば、その頬は一気に熱を持ち、パアアッと輝いた様に見えた。

「は、はいっ! ケタロウ様好きです! 昨日よりも、一時間前よりも、一分前よりも好きです! だから、このパンツを穿いて僕とエッチな事をして下さいっ!!」

 愛が重いっ!!
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