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番外編
告白【完】
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「…ケタロウ様は…何の取柄も無い僕でも…好きで居てくれる…?」
不安そうに、黒い瞳を揺らせるメゴロウに俺は目元を緩めて頷く。
「お前だから、好きなんだよ。俺の為にがむしゃらに頑張ってくれたお前も好きだし、俺の手から美味しそうに食べてくれるのも好きだし、俺の為にコーヒーを淹れてくれるのも好きだし、朝、俺の腕の中で目覚めて笑ってくれるのも好きだし、お前が育てた野菜も美味しくて好きだし…」
「わっ!?」
言いながら、俺は両手を伸ばしてメゴロウの腕を掴み、身体を引き寄せた。
倒れない様にと踏ん張ったメゴロウの片膝が、俺の脚の間に沈む。
「あ、危ないです!」
近付いた焦るメゴロウの頬を、腕から離した両手で俺は包み込む。自由になったメゴロウの両手は、俺を挟む様にして、ソファーの背凭れに置かれた。
「うん、こんな風に慌てるお前も可愛くて好きだ。取柄だなんて、お前がお前らしく居る事。それ以外に何か必要か?」
取柄なんて、それこそ俺には何もない。
いや、笑顔が凶悪だと云うのは取柄になるのか?
何の取柄も無くて、良い。
ただ、お前が笑っていてくれたら、それで良い。
何時か、お前が実家の農園を継いで、その隣に俺が居れば、それで良い。
「不思議な力なんて要らない。それが取柄だって言うなら、無くて良い。俺は…ただ、お前と先の解らない未来にドキドキしながら歩いて行きたい…それだけで良い…お前が俺の隣に居てくれたら、それで良いんだ」
「…ケタロウ様…」
メゴロウの揺れる瞳から、ボロボロと涙が零れて俺の手の上を流れて行く。
ごめんな、もっと早くに言ってやれば良かったな。
俺がお前がその力を好ましく思っていない事は、帰り道の発言で気付いたんだろう。だから、メゴロウは視線を泳がせて、渋々と頷いた。きっと、怖かったんだと思う。その力があったから、俺を助ける事が出来た。その力が無ければ、自分はただの、何の取柄も無いガキだと思っているのかも知れない。そんな事は無い。お前が俺を好きになってくれたから、俺は、ここに居る。それで良いじゃないか。シンプルに行こうぜ?
「俺と、同じ時間を生きてくれ」
顔を引き寄せて、ポロポロと涙を流す目尻に口付ければ、メゴロウは擽ったそうに笑って『はい』と、頷いた。
◇
「…そう言えば…」
あれから夕食の時間になって、腿上げと泣いた事で腹に余裕の出来たメゴロウにご飯を食べさせて、部屋に戻ってのコーヒータイム中、隣に並んで座るメゴロウに、俺は気になっていた事を聞いた。
「先輩の誘いを受けた日、殿下は君に何を言ったんだい?」
うん、やっぱり、この話し方の方が落ち着く。
元の話し方に戻った俺に、メゴロウはちょっと残念そうな顔をした。
ま、まあ、たまには、あの話し方をするから許して欲しい。
「…えっと…『男のけじめをつけるんだよ。黙って、送ってくれない? 君も、何時までもやきもきしたくないでしょ?』って…それから…『ついでに、トイセ君の泣き顔が見られるかも知れないよ?』って…」
ゴンべ王子、鬼だな!?
てか、それって、端から、メゴロウを巻き込んで覗き見する気満々だったって事だよな!?
メゴロウも、そんな誘いにホイホイ乗るんじゃない!
誰か知らない人にご飯奢るって言われて、その誘いに乗ったりしないよな?
「…あの…ごめんなさい…」
「いや…君が謝る事はないよ…悪いのは殿下だからね…」
まあ、けど、それで俺は意外な事実を知ったし…メゴロウのもやもやも晴れたんなら、それはそれで良いけどさ…。…先輩には悪いと思うが、入学した時から好きだったと言われても、俺はやっぱり、先輩には友愛以上の想いは抱けない。その気持ちが嬉しかった事に、間違いは無い。だから、ありがとうってお礼を言った。もしかしたら、それは酷い言葉だったのかも知れない。
けど、でも…。
「…君が好きだよ、メゴロウ」
誰を傷付けても構わない。
万人に好かれようだなんて思わない。
俺は、ただ、メゴロウが好きだから。
俺が好きなメゴロウが、俺を好きで居てくれるのなら、それで良い。
「はい、僕もです!」
隣に並ぶメゴロウの左手を取って、その手の甲に口付けて言えば、メゴロウは顔を真っ赤にしたけど、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
だから、俺も笑う。
「ありがとう」
会計の時に、ゴンべ王子が『店長を呼んで貰えるかな? 話があるんだ』って魅せた、本物の王子様スマイルを頭に浮かべて。
軽く首を傾げて、少しだけ目を細めた上目遣いで、唇は緩やかに弧を描いていて…。
「…っ!! ケ、ケタロウ様は笑わないで下さいっ!! 皆、死にますっ!!」
しかし、メゴロウは両手を俺の顔に押し付けて、そう叫んだ。
何でっ!?
不安そうに、黒い瞳を揺らせるメゴロウに俺は目元を緩めて頷く。
「お前だから、好きなんだよ。俺の為にがむしゃらに頑張ってくれたお前も好きだし、俺の手から美味しそうに食べてくれるのも好きだし、俺の為にコーヒーを淹れてくれるのも好きだし、朝、俺の腕の中で目覚めて笑ってくれるのも好きだし、お前が育てた野菜も美味しくて好きだし…」
「わっ!?」
言いながら、俺は両手を伸ばしてメゴロウの腕を掴み、身体を引き寄せた。
倒れない様にと踏ん張ったメゴロウの片膝が、俺の脚の間に沈む。
「あ、危ないです!」
近付いた焦るメゴロウの頬を、腕から離した両手で俺は包み込む。自由になったメゴロウの両手は、俺を挟む様にして、ソファーの背凭れに置かれた。
「うん、こんな風に慌てるお前も可愛くて好きだ。取柄だなんて、お前がお前らしく居る事。それ以外に何か必要か?」
取柄なんて、それこそ俺には何もない。
いや、笑顔が凶悪だと云うのは取柄になるのか?
何の取柄も無くて、良い。
ただ、お前が笑っていてくれたら、それで良い。
何時か、お前が実家の農園を継いで、その隣に俺が居れば、それで良い。
「不思議な力なんて要らない。それが取柄だって言うなら、無くて良い。俺は…ただ、お前と先の解らない未来にドキドキしながら歩いて行きたい…それだけで良い…お前が俺の隣に居てくれたら、それで良いんだ」
「…ケタロウ様…」
メゴロウの揺れる瞳から、ボロボロと涙が零れて俺の手の上を流れて行く。
ごめんな、もっと早くに言ってやれば良かったな。
俺がお前がその力を好ましく思っていない事は、帰り道の発言で気付いたんだろう。だから、メゴロウは視線を泳がせて、渋々と頷いた。きっと、怖かったんだと思う。その力があったから、俺を助ける事が出来た。その力が無ければ、自分はただの、何の取柄も無いガキだと思っているのかも知れない。そんな事は無い。お前が俺を好きになってくれたから、俺は、ここに居る。それで良いじゃないか。シンプルに行こうぜ?
「俺と、同じ時間を生きてくれ」
顔を引き寄せて、ポロポロと涙を流す目尻に口付ければ、メゴロウは擽ったそうに笑って『はい』と、頷いた。
◇
「…そう言えば…」
あれから夕食の時間になって、腿上げと泣いた事で腹に余裕の出来たメゴロウにご飯を食べさせて、部屋に戻ってのコーヒータイム中、隣に並んで座るメゴロウに、俺は気になっていた事を聞いた。
「先輩の誘いを受けた日、殿下は君に何を言ったんだい?」
うん、やっぱり、この話し方の方が落ち着く。
元の話し方に戻った俺に、メゴロウはちょっと残念そうな顔をした。
ま、まあ、たまには、あの話し方をするから許して欲しい。
「…えっと…『男のけじめをつけるんだよ。黙って、送ってくれない? 君も、何時までもやきもきしたくないでしょ?』って…それから…『ついでに、トイセ君の泣き顔が見られるかも知れないよ?』って…」
ゴンべ王子、鬼だな!?
てか、それって、端から、メゴロウを巻き込んで覗き見する気満々だったって事だよな!?
メゴロウも、そんな誘いにホイホイ乗るんじゃない!
誰か知らない人にご飯奢るって言われて、その誘いに乗ったりしないよな?
「…あの…ごめんなさい…」
「いや…君が謝る事はないよ…悪いのは殿下だからね…」
まあ、けど、それで俺は意外な事実を知ったし…メゴロウのもやもやも晴れたんなら、それはそれで良いけどさ…。…先輩には悪いと思うが、入学した時から好きだったと言われても、俺はやっぱり、先輩には友愛以上の想いは抱けない。その気持ちが嬉しかった事に、間違いは無い。だから、ありがとうってお礼を言った。もしかしたら、それは酷い言葉だったのかも知れない。
けど、でも…。
「…君が好きだよ、メゴロウ」
誰を傷付けても構わない。
万人に好かれようだなんて思わない。
俺は、ただ、メゴロウが好きだから。
俺が好きなメゴロウが、俺を好きで居てくれるのなら、それで良い。
「はい、僕もです!」
隣に並ぶメゴロウの左手を取って、その手の甲に口付けて言えば、メゴロウは顔を真っ赤にしたけど、それでも嬉しそうに笑ってくれた。
だから、俺も笑う。
「ありがとう」
会計の時に、ゴンべ王子が『店長を呼んで貰えるかな? 話があるんだ』って魅せた、本物の王子様スマイルを頭に浮かべて。
軽く首を傾げて、少しだけ目を細めた上目遣いで、唇は緩やかに弧を描いていて…。
「…っ!! ケ、ケタロウ様は笑わないで下さいっ!! 皆、死にますっ!!」
しかし、メゴロウは両手を俺の顔に押し付けて、そう叫んだ。
何でっ!?
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紘様。
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