旦那様と僕

三冬月マヨ

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向日葵―奇跡の時間―

向日葵の想い【序】

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 ――――――――幸せで楽しかったです――――――――

 ええ、本当に…。

『弟のお嫁さんも見られましたから』

 言葉として、音として届いたかしら…?
 貴方に出逢えて…お妙さんに出逢えて…。
 何よりも…ゆき君に出逢えて…本当に幸福な時間を過ごす事が出来ましたから…――――――――。

 ◇

 桜が綺麗な季節の頃でした。

「はい。え? 子供を…? お寺は…」

 未だ夜も深い頃です。その電話があったのは。

「おたえさん? ゆかり様は何て?」

 花冷えのする空気の廊下を歩き、茶の間へと続く障子に片手を置き、身の回りのお世話をして下さるお妙さんに私はそう問い掛けました。
 漏れ聞こえる会話から、電話のお相手は私の夫の紫様だと解ります。
 今夜は新月の為、紫様は仕事の都合で、人の足りない村へと遠征に行ってらっしゃいます。
 そんな出先から電話だなんて、初めての事です。
 
「奥様! 春とは云え夜は冷えます! 休んでいて下さい!」

 そうすればお妙さんは、カッと目を見開いて手にしていた受話器を戻し、私の方へと小走りで来ました。

「あらあら。そんなに心配せずとも。ほら、こうして毛布も着ていますわ」

 ええ。お妙さんに怒られません様にと、浴衣の上に毛布を羽織って来たのですけれど、結局は怒られてしまいましたわ。

「奥様~。お話はベッドで横になられてからです。今朝、咳き込んでいたではないですか!」

「あらあら」

 ぐいぐいとお妙さんに背中を押されて、私は茶の間から自室へと戻る事になりました。

「旦那様が明日、一人の男の子を連れてらっしゃるとの事です」

 そうして渋々ながらも、暖かなベッドへと身体を横たえましたら、お妙さんが神妙な面持ちで話し始めたのです。

「あらあら。…あやかしに親を…? …お寺は拒否をされたのかしら?」

 その様な事は無いと思うのですけれど…。
 お寺は妖によって親を亡くした子を預かる場所で、その孤児達に学び舎の代わりに、学を教える場所でもあります。成人となる十八歳まで、そこは子供達の"家"となるのです。

「…いいえ…お寺には預けられないと…」

「あら…?」

 小さく首を振るお妙さんに、私は首を傾げました。
 …?
 何やら訳ありの様ですわね?
 これは叔父様への文が捗りますわね?
 いけないとは思いつつもドキドキしてしまいますわね?

「詳しくは、明日お戻りになられてからお話しになるそうです。ですから、どうぞ暖かくしてお休みになって下さい」

「解りましたわ。お妙さんも休んでね?」

「奥様がお休みになられましたら、遠慮なく」

「あらあら」

 そんなに心配しなくても良いのにと思いながら、私は軽く肩を竦めてから目を閉じました。
 
 ――――――――…こうして心配してくれる人が居る事がどれだけ幸せな事なのか、それを知るのは翌日の事でした…――――――――。



☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

書き終わっていないので、
一日~二日置きの更新になりますm(_ _)m
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