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新しい世界の始まり

依頼達成

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宿に戻り、ルーシャをつれ、依頼主であるシルバのもとへと足を進めた。

広い建物、長い屋敷への道。
執事に案内されるままに着いていき、ようやくシルバの部屋の前に着いた。


「旦那様、失礼します・・・ゼノン様が到着されました」

「入ってくれ」


執事の方に扉を開けられ、中に入るように促された。

そしてソファーにルーシャとゼノンが腰掛ける。

シルバは仕事中だったのか窓際の離れた席で書類を整理していたが、それを置いて、すぐにゼノンたちの方に顔を向けた。


「それで、依頼の方はどうだったろうか?やはりだめであったか?」

「えっと・・・ルーシャさんなら見つかりましたよ」


ゼノンの言い方に違和感を感じたのか、シルバは首を傾げながらゼノンとその横に座る美しい女性に視線を向けた。


「・・・・・・白銀の髪・・・・・・赤い瞳・・・・・・・・」


何かを悟ったのかシルバは驚きながらソファーに座るゼノンたちの向かいに座り直した。


「ま・・・まさかとは思うが・・・」


疑いつつも敢えて此処は聞かねばならない。


「・・・・そのまさかです」

「!!」


言い終える前にシルバが言わんとすることをくみ取りゼノンが肯定した。


「人獣族だそうです・・・」

「!!」

「・・・依頼は達成、で大丈夫・・・ですかね?」


おずおずとゼノンが聞く。


「なんと・・・・ルーシャが・・・・ああ・・・こんなことって・・・」


シルバが呟いている。


(これは、ショックだったのだろうか?それとも・・・喜んでる?)


『うーむ・・・どうじゃろうな・・・長年ペットとして飼われていたのなら・・・・ショックかもしれぬの』


(なるほど・・・・・人権みたいな・・・・・・)


「ルーシャ・・・・すまない・・・私たちは・・・・知らなくてその・・・」


ルーシャはニコリと微笑んで口を開いた。


「大丈夫です、私は、2人とも大好きです、今でも側に居たいと思っています」

「!!」


シルバはそのまま涙を溜めつつ、ルーシャの手をとり強く握りしめた。


「もう、離さない・・・すまなかった」

「いいえ、私の方こそ・・・これからも宜しくお願いしますね」

「・・・・」


2人のそんな和やかな雰囲気に置いてけぼりを食らったゼノンは必死で空気になろうと努めた。

暫くしてシルバは依頼完了のサインをした紙をゼノンに手渡してきた。


「これを、ギルドに提出したら依頼は完了する、本当にありがとう」

「こちらこそ、ありがとうございます」


そういって屋敷を後にしたゼノンはそのまま再びギルドへと向かった。

中に入るとざわついていた者たちが一斉にシンと黙った。


「・・・・」

(なんだこれ・・・・気まずいなあ)


うさぎ耳のルミネのカウンター前に並ぼうとしたら、前に居た冒険者たちが何も言わずに道を空けた。

(え・・・えええええ?何これ・・・・)

尊敬の眼差しや恐怖するような視線が感じられる中、開いた道を進み、ルミネに完了の紙をとギルドカードを手渡した。

受けるときや完了するときにもギルドカードが必要らしいから。

カウンターの上に置かれた銀色のカード・・・。

周りの者たちの息を呑む音が聞こえた気がした。
登録して一週間足らずでランクがBになった期待の新人。周囲ではそんな噂が飛び交っていた。


「・・・本当にお疲れ様でした、ゼノンさん・・・これで完了です、依頼料はどうしますか?銀行にも預けられますよ」

「銀行・・・?」

「銀行と言ってもこのカードが鍵となる個人用保管庫なのです、どこのギルドからでも取り出し可能ですし、買い物する際もこのカードを提示するだけで自動引き落としなのです」

「なら、それでお願いします」

「分かりましたです」


ピコピコ動くうさぎ耳に癒やされながら、処理が終わるのを待っていた。

カードを受け取り、足早に宿へと戻った。

何だか色々疲れた。

軽く食事を済ませ、部屋に戻るとすぐに眠りに落ちた。








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お気に入り登録してくださっている方々ありがとうございます!!(>_<)

進むのが遅く申し訳ないです。

色々な場所に冒険にいこうと思っています・・・思っては居るのです・・・

気長にお付き合い頂けたら嬉しいです(*'▽'*)




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