星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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1章~石版の伝承~

2.~フレス村~

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「この先に、フレス村がある」

「フレス村?」

麻衣は先をあるくジンに歩幅をあわせようと足早に走った。
そんな様子の麻衣にジンはさり気無く歩幅を小さくする。

「風達の噂では、たまに出没する盗賊が石版を持っているようだ」

「その盗賊をやっつけるんだね?」

目を輝かせる麻衣にジンは苦笑を浮かべる。
暫く歩くとすぐにフレス村についた。
それほど大きくもない、人口の少ない村だ。村の中には放し飼いの鶏が歩き回っていた。
各家の傍に小さな畑があり、そこで食物を栽培しているのだろう。

「のどかな村だね?」

「ああ」

とりあえず2人は村長に話を聞きに、村の丘の少し大きめの家に向かった。
コンコン
静かに木の扉をたたいた。

「あいとるよ」

奥から声がして先に麻衣から中へ入った。

「おや、旅のお方か、こんな何もないところへわざわざ…」

結構な年の白髪の老人が杖をついて2人の前に姿をあらわした。

「…最近盗賊が出るそうだな?」

ジンはいきなり本題を投げかけた。
麻衣は驚いてジンを見上げる。

「…ええ、不思議な力を持つ盗賊の頭がいて、抵抗もできず…」

いきなりの直球の問いにも村長は気にした素振りを見せずに悲しそうに語った。

「私たちが、その盗賊をやっつけるよ!ね?ジン」

麻衣はジンを見上げて黒いつぶらな瞳を輝かせている。

「おお、ありがたい!」

「…ついで、だがな」

吐き捨てるようにそう言い村長の家を出た。麻衣も慌ててジンの後を追って外へ出た。
 ジンは村の入り口の少し大きい木の上に座って様子を見ていた。
その頃麻衣は、村長たちのもてなしを受けていた。
夕暮れ時、それは現れた。
数名の武器を手にした、がたいのいい厳つい男達が村に侵入してきた。
どうやら頭の姿はないようだが。
木の上から身軽に着地すると何処からか宝剣を取り出して構えた。
こんな奴ら相手に魔力など使う必要もない。

「何者だ?お前、この村のものじゃないな?!」

「さっさとかかってきたらどうだ?」

挑発的なジンの一言で盗賊たちは頭に血が上ったのか一斉にジンに襲い掛かった。
盗賊たちの鈍った攻撃を軽々とかわし、つまらなそうに溜め息を吐いた。

「相手にならん、頭とやらを呼んで来い」

軽く打ちのめし、地面に横たわる盗賊たちを見下ろしたまま吐き捨てた。

「おぼえていろ!!頭には誰も勝てないんだ!後悔するなよ!?」

「首を洗ってまっているんだな!!」

そんな捨て台詞を吐いて盗賊たちは逃げるように村を後にした。

「ジン!」

麻衣が傍にかけよってきた。

「どうした?」

冷ややかにジンは剣を又どこかにしまい麻衣を見つめる。

「どうした?じゃないよ!盗賊でたんでしょ?」

ああ、何故自分を呼ばなかったのかと、そういうのだな…。危険だというのに。
契約で繋がっているから、何かあった時は直ぐに分かる。

「魔力、契約で抑えられているから、私が傍にいないと!」

「大丈夫だ、魔力を使うほどの相手じゃなかった」

心配してくれてるというのは痛いほど分かるから、互いに何も言えない。

「心配いらない、危なくなったら呼ぶから」

宥めるようにジンは麻衣の焦げ茶色の髪を撫でるように優しくたたいた。
くすぐったい、けどこの優しさが時折苦しくなる。
ガサッ
草が僅かに揺れて、さっきの盗賊達を引き連れた頭があらわれた。
なにやら様子がおかしい。黒い霧をその身にまとっている。

「…石版の力に惑わされたようだな…愚かな」

「え?」

「少し厄介だ…麻衣少し離れていろ」

そういって、宝剣で盗賊の頭に攻撃を仕掛けた。

-キィイィィン-

「!!?」

何かに剣がはじかれた。
風だ、黒い風がジンの攻撃をことごとくはじいていた。

「ははは!どんな攻撃も俺には通じない!!」

盗賊の頭が叫びながら、右手を上に上げると4つの黒い風が鋭い刃となってジンを襲った。

「ッ…!」

ぎりぎりのところでかわしたが1発避けれずに右腕を抉った。
鮮血が飛び散る、ジンは不機嫌そうに傷口を見つめてから、盗賊の頭を睨んだ。
麻衣が傍にいるから魔力は使える、この愚かな者を消し炭にしてやろうか…。

「一瞬で消してやろう」

ジンの左手に魔力が渦を巻き集まる、真赤な炎が龍のようにとぐろを巻いているかのようだ。

「!」

「全てを浄化する冥府の業火だ、くらうがいい!」

盗賊の頭に向かってその炎の塊を投げつけた。
黒い風ははじくことができずに炎に飲まれきえた。
本体の頭は、気絶はしているもののどうやら生きてはいるようだ。周囲の黒い風と惑わせていた闇だけを消し去ったらしい。
盗賊たちは頭を引きずって逃げるように立ち去っていった。
ジンは地面に落ちた石版を拾い上げ、右手を翳し石版の力を奪った。

「ジン?何してるの?」

不思議そうに麻衣はジンを見上げている。

「…もし敵の手に落ちても、使えないようにしている」

終わったのか、石版を麻衣に手渡した。
夜村人からはとても感謝され、もてなされた。
麻衣は村では豪勢なベッドに1夜を寝かせてもらった。
ベッドは1つだけだったのでジンは同じ部屋の隅のほうで眠った。
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