星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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1章~石版の伝承~

13.~魔花1~

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「…」

顔に容赦なく照りつける朝日の光を遮るように腕で目を覆い、ふと部屋の戸に視線を向けた。
誰かいる?
勢いよく戸が開いた。むしろ壊れたというのが正しいようだ。ドォンと音がして倒れたのだから。

「!」

「随分、柔だな」

「また壊したの?!」

ミユカの怒鳴り声、はっはっはと豪快に笑う初めて聞く声。
その男はいきなり戸を壊して部屋に入ってくるなり、ジンを観察する様にじっくりと見た後男は口を開いた。

「大丈夫そうだな?」

「…えっと…」
困惑しているジンにミユカがわけ入ってきた。

「…父よ、あなたを此処まで運んでくれたの」

そういわれてみると確かに、豪快な性格はいいとして、凄い筋力と力を持っているようだった。
日に焼けた褐色の肌が更に健康的に強そうに見せているのかもしれない。
…似てないけど…。

「ありがとう…」

「いや、礼なんて要らない、むしろ感謝したいのはこっちだ」

「え?」

「俺が留守にしている間、娘1人だったから、心配だったんだ」

余計‥心配要素増えてないだろうか?娘1人のとこに魔族の自分を放り込むなんて…。
…娘1人…やはりロディは…。
苦笑しているジンに豪快な張り手が背中を直撃した。

「!!ッぅ、あ゛?!」

あまりの激痛にベッドに倒れこんでしまった。顔を歪めてミユカとその父に目を向けた。

「と、父さん!!怪我人に何てことするの?!」

すぐに介抱するようにミユカが仲裁にはいってくれた。

「え、あ、いや、あまりに景気の悪そうな、面してたから‥悪気があったわけでは…ないぞ?」

気まずそうに殺伐とし乱れた髪をかき上げ、必死に弁解する。

「…だ、大丈夫」

ジンは苦笑して2人に微笑みかけた。

「ミユカ、腹減ったな?なにか作って持ってきてくれ?」

「…朝食もって来るけど、ジンに乱暴なことしないでよ?」

ミユカは父に厳重にそう告げ、部屋を出て行った。

「…すまなかったな?」

「平気です、それより何か話があるのでしょう?」

わざわざミユカを部屋から出すということは。
伏せ目がちにジンは翠色の双眸を目の前の男に向けた。

「この町人は、魔族を嫌っている、というのは分かるだろう?」

畏怖する目や感情がながれてきてて、見ていれば嫌でもわかる。此処に居るだけで、それは感じられる。
静かに頷く。

「最近更に、それが酷くなったんだ」

男は静かに続けた。

「?」

「近くの森に、魔物が出るようになって…人々を襲っているから…」

魔物…自分の管轄のものだろうか?話し合いで済めばいいのだが…。

「人間では太刀打ちできなくてな、魔族のあんたにこうして頼んでいる」

「お前たちは魔族だと、気付いていて、俺を匿い介抱していたのか?」

「…ああ」

「はじめから利用するために?」

これには男は言葉を詰まらせ俯いて黙りこんでしまった。酷い質問だったかな?
口元に小さな笑みを刻み男に近付いた。

「…いいだろう、利用されてやる」

「!」

ジンは男の頬に触れる、驚いて顔をあげた男のその瞳を覗き込む。
恐怖などの感情は感じられない、曇ってもいない。ただ、何か…罪悪感めいたものが感じられた。
この人間は汚れていない…純粋な心を持っている。

「?」

「名を聞いておこう」

「…俺は、ガイト」

「ガイトか、いい名だ覚えておく、…道案内は頼んでもいのだろう?」

ガイトの頬に触れたまま、ニヤリと口元に笑みを作った。

「あっ、ああ、ありがとう!」

ガイトは自分の頬に触れていたジンの手をとり頭を下げた。

「何してるの?」

ミユカが食事の乗ったお盆を手に部屋に戻ってきた。
2人分。
果物にはリアンが飛びついた。
それにつられるようにジンとガイトも寄越された朝食を口に運んだ。
パンとスープは作り立てなのかホカホカと温かくて、とても美味しい。
食べ終わると、ジンとリアンは魔石を齧りながらガイトに視線を向けた。

「さて、案内してもらおう」

「ああ」

剣を取り腰に下げガイトは家を出た。

「父さん?‥ジン?どこ行くの?!」

ミユカは慌てて追いかけた。

深い森の中2人はどんどん奥へと足を踏み入れた。

「あれは?」

こんなところに、あんな巨大な綺麗な花が咲くだろうか?
白い光を放っていてとても美しい。

「…魔花(マカ)の一種だ」

「え、あんな綺麗なのにか?」

「…こんな土地にあんなの普通に咲くと思うか?」

いわれてみれは不可思議すぎる。

「ここで待っていろ」

そう言いジンは魔花に近付いていく。
むせ返るような強烈な匂い、吐き気がする。
空間から剣を取り出し花に剣先をむけた。

「うぁぁ!?」

叫び声のほうを振り返ると、蔦のような触手がガイトの足首にからまっていた。
粘液のような液を纏った触手につかまった足首の周辺の衣類がとけ皮膚が焼けじょじょに溶けていっている。

「ちッ」

ジンは小さく舌打ちをして、一気にガイトの足首のあるその触手を真っ二つに切った。

「あ、すまない‥」

「もういい、離れていろ!」

「あ、あぁ、‥ッ危ない!」

ガイトが叫ぶと同時に幾重にも伸びた触手がジンの自由を奪った。

「くッ…」

動けない。
衣服が溶けて肌があらわになる。
…・気持ち悪い…。
ぬめぬめした触手が体を締め付けながら這う。触手に触れたところが火傷した様にヒリヒリして痛い。

「ぅぐ、…ぅッ」

締め付けられ、手から剣が落ち地面に落ちる前に消えた。

「ジン?!父さん?!」

「!」

ガイトは驚いて声のほうを見つめて言葉を失った。
ミユカが息を切らして立っていたのだ。

「な、何でこんなとこに?!」

「行き先も告げないで、2人で何処か行くみたいだったから心配して…それよりこれ何?!」

ガイトの台詞をかき消すようにそういい、今の状況を見据えた。

「ジン!今助けるわ!」

「ッぅ…来る、な!」

ガイトの剣を取って助けに行こうとしたミユカを制した。
ビクッと体を強張らせてミユカは踏みとどまった。
こんな触手何本斬っても、本体を叩かない限り何度でも再生する。

「さがっていろ、何もしなくて、いい」

ジンは苦痛そうな表情でミユカにその目を向け叫んだ。

「…・」

ミユカはガイトを抱え離れたところでじっと見守る。
それを見届けてから、ジンは辺りを見回した。本体らしい姿は見えない。
触手はジンの頬に触れた。

「…ぅ…ッ」

何かを探すように頬や体を締め付けながら嘗め回していく。
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