星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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1章~石版の伝承~

23.~決戦1~

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城で石版の情報を探るほうが早いと、無闇に動かずに一行は城で過ごしていた。
あれから3日、有力な情報は特に入ってこない。

『すっごいな!』

ヴィルは辺りを見回しながら何もかも、目にするたびにそんなことを呟き目を輝かせていた。

『珍しい物ばっかりだ!』

「そうなんだ?」

『ああ!すごいよ!!』

中庭で麻衣がヴィルと楽しそうに笑って話をしていた。
ジンは窓からそんな2人の様子を見ながら微笑む。
嘘のように穏やかな日常、陰謀が渦巻いていて世界を滅ばすなどとは到底思えないような…それほど穏やかに時間が過ぎていくのだ。

「?!」

何か嫌な波動を感じた。

結界を張った結界内でそれはあり得ない筈、なのに何故…?

「きゃ!」

麻衣の声に反応してヴィルがジンを呼んだ。

『魔王様!』

麻衣が石版を入れていたバッグが激しい光を放っていたのだ。
全ての石版は回収時に力を奪っていたのに何故?発動している?
慌てて中庭に降り、バッグを逆さまにして中の石版を確認した。

「1つ…増えてる」

「あ、エレナさんに貰った石版!」

「……」

光を放つ石版に右手を翳してみる。

バチッ

激しい音と共に全てを拒絶するように、力を奪おうとしたジンの右手を弾いた。

「ジン?」

「…共鳴している…」

光はやがてある一点にむけ伸びていく。

『これは…?』

「……この光の先に奴らがいる…」

「!」

「それをたどれば、全ての元凶を叩けるのだな?」

ライドが3人を覗き込むように立っていた。

「ライド!」

「敵の本拠地なのでしょう?ならば我ら四天王と魔王軍も共にいきますよ!」

「危険だ!」

ジンがすかさず叫んだ。

「ならなおさら、王と麻衣様たちだけでは行かせられません!」

「……勝手にしろ…」

溜息混じりに俯くジンに、ライドが嬉しそうに微笑んだ。

「王は、昔から変わりませんね…傷付けたくないからと遠ざけて…貴方はそれでいいと思っているようですが…」

「………」

「それがどんなに、悲しかったか分かりますか?王、もっと周りを頼ってください…何もかも1人で背負って、1人で傷付いて…そんな姿、もう見たくないんですッ」

長年の秘めていた心を一気に吐き捨てるように叫んでからライドは荒く肩で呼吸を繰り返した。
キョトンとする麻衣とヴィル。

「……馬鹿だな…」

苦笑しながらジンはライドを見上げた。

「頼りにしている…十分すぎるほど支えられてきた、遠ざけたのは、傷付けたくないと本気で思えるほど大切な親友だから…」

「……」

ライドは黙ったままジンを見据えて次の台詞を静かに待った。

「…それが逆にお前を傷つけていたなんて…すまなかったなライド」

「いえ…」

「ねぇ、いい所で悪いんだけど…この光あっちにもこの場所…分かるのよね?」

『攻め込まれる?!』

ヴィルが少し怯えたように麻衣を見る。

「…早速、他の四天王に連絡を取ってみます!」

「ああ、後は任せる、一足先に俺達は向かう」

ジンは石版をバッグに戻し麻衣に渡すと、光っているのだけ布にくるみ手に持った。

「分かりました、お気をつけて!」

3人は1頭の飛龍に跨り、一気に空へと飛び出す。

『こ、こえええええッ!!とんでるぅぅぅ!!』

「あははは」

麻衣はビクビクするヴィルに大丈夫だよ!と笑いかける。
流石に風の隙間を察知するだけあって早い。

「このあたりだ」

『何か来る!』
黒い針のような物が数本地上から飛龍に向かって飛んできた。

グァァァァ!

「!!」

その幾つかが飛龍の体を傷つけ、羽根までも引き千切った。
飛龍と3人は一気に凄いスピードで地上に落下した。

「きゃあああ?!」

「ッ……」

一瞬で魔力を集め辺りの風を支配し、落下を抑えて静かに飛龍と3人は着陸した。
飛龍は怪我で動けないようだ。
とりあえず飛龍をその場に置いて、辺りを探してみた。
攻撃してきた者を探し出さないと、また不意をつれて致命傷を負いかねない。

『隠れてないで出て来い!俺が相手だ!』

「ヴィル?!」

「………」

『魔王様達は、石版の光の先へ…此処は俺に任せて』

真剣なヴィルの赤い目を見せられては、何もいえなくなる。

「では、任せた…死ぬなよ?」

『誰にものを言ってるんです?俺は誇り高いヒューガウォルフだッ』

苦笑してジンは麻衣を連れ、石版の光が射す方へ急いだ。
薄暗く、緑の光る苔が生い茂った辺境の地、石版の示す光だけを信じ前へ進む。

「みゃ…」

リアンが怯えたように体を震わせて少しだけ顔を出した。

「大丈夫だ…」

「み…みゅぅ…」

再び顔を埋めて目を閉じて丸まる。

「まだつかないの?」

麻衣が前を歩くジンに問い詰めた。
石版の光はまだ先を射している。

「まだだ…」

「何かをお探しなのかな?手伝うですか?」

「「?!」」

麻衣とジンは声のした方に直ぐに視線を向けた。

「はじめまして…僕はリウラっていいますよ」

黒いフードを被ったまだ幼さの残る顔つきの少女で、金色の髪に青い目をしていた。

「……ユシカの仲間か?」

此処で都合よく出会うということは敵なのだろうけど、見た目と口調からして聞かずにはいられなかった。

「ユシカさんのお知り合いなのです?」

調子が狂う。
話をあわせとけば、楽に案内でもしてもらえるだろうか?

「……まぁな」

そんなとき、また別の声がした。

「知り合いなんかじゃないッ!…リウラ、何だまされてるのよ?!」

「え…ユシカさん!お知り合いではないのです?」

「違うって言ってるだろう?さっさとやってしまいな!」

ユシカが苛立ちを秘めて言うと、リウラはジンたちを見据えた。

「嘘付く人は駄目なんですよ!」

仕方ない、麻衣を庇う様に立ち、黒晶石の傷を受けた左手に魔力を集めていく。右手には漆黒の刀身の刀を握った。
魔力を炎と化してリウラに向けた。
リウラはよける処か、口元に笑みを浮かべ、その魔力を受け止めた。

「な、何ッ」

「リウラ!それをあの方に献上したら、喜んでくれるかもしれないね…」

「…そうなのですか?」

そう言うなり姿が水のように消え、炎と化した魔力を伝わり左手の癒えない傷を通りそれは侵食してきた。

「ぐぁッ!?」

辺りに散っていた水のような物も、口や目、耳などを通り体の中へ流れ込んでいく。

「ジン?!」

右手にしていた刀を地に突き刺し、それに重心をかけ、苦痛に耐えるように俯いた。

「や、止めろ…来るな……ッ…ぅ゛あああぁぁぁぁぁッ!!」

頭を両手で押さえて激痛に耐えるが、体の中の神経が、細胞が侵され自分の物ではないような変な感覚に陥る。

「ジン?!」

麻衣が駆け寄ろうとしたのをユシカが遮るように立ちはだかると、麻衣の鳩尾に肘で1撃を食らわせた。そのまま麻衣はその場に倒れこみ気を失ってしまった。
ジンは大きく目を見開いたまま動きを止め、深紅の目をユシカに向けた。

「…どうなのリウラ?」

『…少し抵抗しているけど、やがては墜ちるのです』

「では、あの方のもとへ戻るとしますか」

『はいなのです』

「…その顔で…その口調…違和感ありすぎだわ!やめてくれない?!」

『そうなのですか?僕は結構気に入ってますよ?』

麻衣をその場に残し、2人は自分達のアジトへと戻っていった。
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