星の守護龍 ~覚醒と混沌へのカウントダウン~

雪月 光

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1章~石版の伝承~

26.~破滅への暴走2~

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「!これは…」

ゼアルがジンの姿を黙って見据えた。

「!!王?これは一体!」

傷を負い遅くなりながらもウォイドがジン達のもとに駆けつけた。
辺りに転がる死体の山…その中に信じられないものを見つけ我が目を疑った。

「麻衣様…ライド…誰が…」

固まったまま動けなかった。

「古の超魔力が…魔界全てを巻き込んで暴走している…」

ゼアルが呟く。

「……」

麻衣の手元にあった5つの石版が光を帯びて洞窟の中へ跳んで行った。後を追うようにジンの足元にあった石版も共に消えた。

「いよいよのようですね」

洞窟の奥から、静かに歩み寄る影があった。

「ぅ゛ああああッーーーッ!!!」

きつく2人を抱きしめ、ジンは悲痛な叫びをあげ続けている。

「王!魔界を、世界を滅ぼす気ですか?!」

ウォイドの声は届かない。
何もかも…もう…どうでもいい。全て消えてなくなってしまえ…そうしたら、何も感じずに、苦しみも何もかも忘れられるのに。
やがて魔界中の魔族が集まってきた、深い悲しみと絶望に誘われるように。

『魔王様?』

魔族たちはその名を口にする。
虚ろな目、体から放たれる大量の力。

「時は熟した…」

アルゼオンはゆっくりとジンに近付いていく。

「……」

その場にいたもの全てが皆ジンとアルゼオンを見据え、これからの行方を見守る。

「魔王、貴方の願い引き継ぎ、後は私が…」

「……願い?」

俯いていた顔を上げ、涙を溜めた虚ろな目で目の前に立つアルゼオンを見上げた。

「貴方は、大切な者のいない世界など消えてしまえ…とそう望んでいる…」

「………」

否定は出来なかった、確かにそう思った…。何もかもが…ちっぽけな価値のない物に見えてくる。

「引き継ぎ、願いをかなえます…貴方はもうお休みください」

丁寧な口調で優しく囁き、黒い光を帯びた左手をジンの胸に突き刺した。

「…ッぁ…」

虚ろな目が視点が定まらないのか、大きく揺れ、やがてぐったりとその場に倒れこんだ。
引き抜いた手には、大きな紅い世にも美しい結晶が握られてあった。それは僅かな光を反射させ煌き、その場にいた全ての者を魅了する。
結晶の中で生きているかのように揺らめく白い炎。

「アルゼオン様…それは?」

アルゼオンが手にし、掲げるようにして魅入るそれが何かを聞いた。

「魂石だ…素晴らしい…この大きさと輝き…なんと美しい」

魂石…心と魂の結晶で、形や色、大きさなどは皆違う物を持ち、見た目は宝石や魔石のように美しい物や、原石のようなものもある。
しかしほとんどの者は、小指の爪程の大きさだと聞いたことがある。
あんなに大きくて美しいものは…魔王だからなのだろうか?

「此処はゼアル、お前に任せる」

「…はッ」

アルゼオンは、唖然とする全ての者に見向きもせず、洞窟の中へ戻っていった。

「……王!!?」

我に返った様にウォイドが慌てて倒れたジンを抱き起こした。
涙を貯めた虚ろな目を開いたまま、ピクリとも動かない。
手を口元に当てて呼吸を確かめるが、反応がない…。脈も…止まっている。

「王?悪い冗談は止めてくださいッ」

必死で呼びかけるが、一行に動く気配はない。

『……魔王様が…死んだ?!!』

波紋となってその場にいた魔族に広がる。ざわめきが起こり、戸惑い右往左往する者もでてきた。
世界に広がる溢れた魔力…これも何とかしなければ本当に世界が滅ぶ。

「みぅ…」

「!!」

ジンの長い髪の隙間から、リアンが顔を出した。

「…光龍…?!」

ウォイドはリアンを見て呟く。神界の奥地に棲むといわれる神の眷属の龍だ。
何故そんな龍の子供を魔王が持っていたかはウォイドは知らない。
リアンは必死に小さな羽根を羽ばたき、暗い空へと飛び、溢れ出した強大な魔力を飲み込み始める。

「……不幸中の幸いか…あれなら…大丈夫か…」

今にも暴動を起こしそうな魔族たちを抑えた、まずはゼアルを何とかしなければ…。

「…王の亡骸を渡してもらいます」

ゼアルがウォイドが抱えているジンを見据えながら言う。

「どうする気だ?」

「貴方には関係ないでしょう?」

「…王の側近だったお前が、裏切り王を陥れるとは…近くに居て何も分からなかったのか?」

ウォイドが吐き捨てるように叫びながらゼアルを睨んだ。

「なにをですか?…貴方に私の気持ちなど分からないでしょう?!」

剣を取り、ウォイドに向かってきた。

「知りたくもないッ!」

剣で攻撃を防ぎ、ジンの瞼を閉じ静かに寝かせると、ゼアルに一気に間合いをつめて攻め込んだ。
応戦しながらもう片手に魔力をためる。

「…強い力は、周りも己すら滅ぼしかねない…孤独を悲しみを何故…支えて、手を差し伸べなかった?」

ウォイドは攻撃を仕掛けながら言う。

「強い力を持ちながら支配を嫌い、世界を変えようとしない…王は甘いのです!誰も傍に置こうとはしなかった、誰にも心を許してなどいなかった…!」

火の魔法を使いゼアルはウォイドを追い込む。

「…強い力の所為で、大切な者を傷付けたくない、それで遠くにおいて見守っていたことを何故、分からない?」

火の壁を水の魔法で消し去り、剣で反撃に出る。

「…誰よりも近くにいて、王を見てきた!王に憧れ欲したッ」

「……」

「あの人間の娘が…来るまでは、王は私を見てくれた…」

「……麻衣様か」

「あの娘が…私から王を引き離した、王は長年いた私より、出会って間もない娘をとった…赦せるはずがないでしょう?!」

怒りを露にするゼアルをウォイドは黙ったまま見据えた。

「麻衣様は、壁を…乗り越え心に直接、王としてではなく1人の存在として触れてきてくれた唯一の者だと…言っていた」

王が嬉しそうに話をしてくれたとライドが前に語っていた。

「……それでも、赦せないのです…」

手にしていた剣に魔力を叩き込み、ラストの1激にかけるゼアル。

「…救いようがないな」

溜めていた魔力を天空に掲げ、その名を口にした。

「…我が僕、水の守護のもと…その姿を現し、その力我が前に示せ…ウォルベガ!!」

「!!」

突然表れたそれは、巨大な青く長い体をくねらせ、緑色の目をウォイドに向けた。
辺りは静まり返り、皆突如現れた巨龍に目を奪われていた。

「守護獣ですか…究極の召喚獣…」

臆することなく、ゼアルは巨大な魔力を纏った剣をウォイドに向かって斬りつけた。
その1激はウォルベガの硬い鱗によって防がれ、ウォルベガの長く鋭い爪で引き裂かれた。

「…ぐッあぁぁ…」

ふら付きながらも、必死で踏ん張り、ウォイドを睨んだ。

「……楽にしてやれ…ウォルベガ…」

『承知』

赤い水を吐き出し、それでゼアルを包み込んだ。命を吸う死の水だ。

「ぐぅッ!!」

大きく目を見開いて、手を伸ばしてジンを求め、やがて息絶えてその場に崩れた。

「…王の魂石を取り戻さなくては…」

『王は何処におられる?』

「あの洞窟の先だ」

ウォイドは洞窟を指差し、方向を示した。

『我が先に相手をしよう…主は少し休んでから来るといい』

消耗の激しい守護獣の召喚後のウォイドを心配してウォルベガが言う。

「すまない…」

ウォルベガは体をうねらせ、洞窟の中へと消えた。

「……」

その場に座り込み、空で必死に魔力を集めるリアンに視線を向けた。
少し苦しそうだ…流石にあの小さな体であの強大な魔力を、その身に宿すにはやはり無謀なのだろう。

『なぁ…』

その場に集まった魔族を代表して、多少力のありそうな若者が座り込んだウォイドに歩み寄った、それにつられる様に辺りにいた魔族も詰め寄ってきた。

「何だ?」

『あんた王を守護する四天王だろう?』

「…ああ」

階級を無視した口調に怒る気力もなく、静かに頷く。

『俺達は王が大切だ!あんたなら、何とかしてくれると信じて…力を託そうと思う』

「…!」

魔族は淡々と語る。

全ての魔族は魔王を大切に思う。自らの命よりも尊重する。

『受け取ってくれるか?』

「…いい度胸だ…その心意気嫌いじゃない…」

苦笑して魔族を見上げた。

『王を頼みます!!体は俺達が守るから…』

魔族たちは魔力を込め、1つに凝縮していく。
白に近い黄色の光をウォイドに渡し、飲み込むのを見てから、魔族たちはその場に崩れるように座り込んだ。
立っていられない程まで自らの魔力を託したのだ、その場にいた皆が洞窟へ向かうウォイドを見送った。
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