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2章~時の契約~
27.~再び魔界へ~
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「リアンが戻ってきてないの」
「・・・何かあったのか・・・」
結衣とジンが話し合っていた。
「分からない・・外の様子を見に行ってそのまま・・・」
「・・・・」
「リアンいないと、魔石ないんだよね?」
結衣が心配そうに言った。
「そうだな・・・力を消耗しなければ今すぐにどうこうなるというわけでもないが・・・」
まだ完全には治りきってない重い体。
結衣に何かあっても助けられるかどうかすら際どい。
「・・・・もう1度魔界に行って来るか・・・」
「え・・その体で?!」
「ガディに会えれば、魔石も貰えると思うんだが・・・」
「私が貰ってくるよ?」
結衣が唐突に言った。
「危険だ!」
「けど・・・・」
「人間が1人でうろうろ出来るほど甘い世界じゃない」
「・・・・」
重い沈黙が流れた。
『ならば、我が結衣に同行すればすむということか?』
別の声がした。
「フェルヴァ?」
結衣がその名を口にした。
『大分我も体の調子が戻ってきたのでね・・・』
結衣の影から姿を現しながらそういった。
金色の双眸と長い金色の髪、漆黒の衣装を身にまとった青年だった。
「それが本来の姿か?」
ジンが問う。
『そう、この間は中からで失礼した・・甘美なる極上の者』
「・・・・俺はジンだ、味で呼ぶな・・・」
力なく苦笑した。
『そうか、それはすまなかった・・・ジン』
「いや・・・それより・・・」
結衣とフェルヴァを交互に見つめた。
『我が結衣に同行してその身を守ればいいのだろう?』
「いいのか?」
『構わない、むしろ早く元気になってもらわねば・・・』
獲物を前にした獣のような目をジンに向けたまま、舌をぺろりと出し乾いた唇を舐めた。
「・・・・・・」
「どの辺にいるとか分かる?ガディさん」
「ガディは魔神、魔界そのものだ、呼べば応じるはずだ・・・帰りはガディに頼んでくれ」
『魔神とは・・・素晴らしい知り合いがいるのだな・・・』
「世界に干渉して眠っていなければ・・・・」
「・・・・・」
「扉を開く、準備はいいか?」
フェルヴァは不思議そうにジンを見据える。
簡単に異世界への扉なんて開けるものじゃない。
やはり只者ではないのだろうな。と内心苦笑した。
歪んだ空間の中へ足を踏み入れると中は暗く足元は白い光の道が一本。
「最初着たとき此処から私落ちたんだ」
結衣はそんな事を苦笑しながら言った。
『深そうだな・・・』
今度は落ちずに渡りきった。
反対側のジンの姿がガラス越しのようにぼやけて見えた。
「・・頼んだぞ・・・」
聞こえてはないだろうけど、小さく呟いた。
扉が閉じるとジンはその場に崩れるように倒れこんで再び眠りについた。
「ガディさーんー?」
とりあえず魔界そのものだから呼べとだけ言われた。
呼んでみる。
反応がない。
「・・・・・眠ってるのかな?」
『どうだろう・・・我には分からん・・・』
会ったことすらない上位の存在。
「ガディさんー?」
『結衣、止まれ』
「え?」
『様子がおかしい・・・』
魔族の気配が全然ない。
「あ・・知り合いのとこに行ってみよう?力貸してくれるかもしれない」
『知り合い?あの黒狼のことか?』
結衣は静かに頷いた。
「確かこの近くに小屋があったはず・・」
草むらをかき分けてずんずん森の中へ入っていく。
見慣れた小さな小屋が目に飛び込んできた。
次第に駆け足になる。
小屋の戸を叩いてみた。
中からは何の反応もない。
狩にでもいっているのだろうか?
中へ入ってみた。
「え・・」
中は長い間使われてなかったような有様だった。
いたるところに張り巡らされた蜘蛛の巣、家具の上にたまった埃。
床も白く埃が積もっていて結衣の足跡だけがくっきり残った。
『この様子だと暫く此処には戻ってないようだな』
「うん・・・」
小さく頷いた。
『何か来る』
「?」
『大群・・・』
「え・・?!」
慌てて2人は隠れた。
遠くのほうから地響きを鳴らして魔物の大群が押し寄せてきた。
幸運なことに見つかる前に隠れられたから大事にはならなかった。
「こんなとこに・・・あんなの前いなかった・・・」
『世界のバランスが狂ったのだろう・・・』
「・・・・」
それは、ジンがまだ本調子ではないから?
それとも魔王が人間界に召喚されたから?
「ガディさん・・・・何処・・・」
小さく呟いた。
「娘、何故魔神様の名を口にする?」
突然聞こえてきた謎の声。
『誰だ?』
「今はわしが問うておる」
「・・・ガディさんに会いにきたの、何処にいるか分かるなら教えてください!」
「・・・・神に会いにきたと申すのか・・恐れを知らぬ人間だな・・」
『我らは急いでいる、居場所を知っているなら教えてもらおう』
フェルヴァが言う。
「知っておる、だが・・・不審者を神に会わせるわけにはいかん」
「不審者って・・私たちが?!」
「如何にも」
「・・・・・・・」
「いいわ、ならガディさんに伝えて、ジンが大変で結衣が代わりに会いにきたって」
「・・・その名・・・・古き親愛なる友の名・・」
「?」
「いいだろう、ついて来なされ」
そういって結衣たちの前に現れたのは小さな鳥。
言われるままついていくと森の奥深く、結界のようなものが張り巡らされた洞窟に入っていく。
「此処で、お待ちくだされ」
2人を入り口で待たせると鳥は奥へと歩みを進めた。
「魔神様・・・古き親愛なる友の名を口にする娘が着ました」
『・・・・・通せ』
「はい・・」
入り口に戻り結衣たちを奥へと案内した。
「え・・・」
少し前にあったガディとは全然様子が違っていた。紫電の瞳は変わらずにあるが前ほど強い光を感じない。
漆黒の髪も随分長くなって乱れていた。
『久しいな、結衣・・・数十年ぶりか?』
「あ・・・えっと」
そんなに経っただろうかと頭を悩ませる結衣。
『・・ジンは、元気か?』
「そのことで着たんです」
結衣の真面目な視線。
『何かあったようだな?』
「人間界に魔王が召喚されて、魔王がジンに酷い傷を負わせちゃって・・・」
『リアンはどうした?』
結衣は首を振った。
「行方が分からなくて・・・何かあったのかもしれない・・・」
涙が込み溢れてくる。
『・・・人間界か・・・』
「?」
『我も行って力を貸したい所だが・・・力の源を貸し与えた魔王がこの世界を離れ、我が力も大分衰え消えてしまった、魔王が居れば我も力を失わずにもっと役に立てたのだが・・・』
「そんな・・・」
『しかし・・・ジンの身が危ういというならば・・この命尽きるとしても助けねばならぬな』
このガディの台詞にフェルヴァが反応した。
『どうして、一魔族に尊き神の貴方がそこまでするのです?!』
『我を魔神として望みを叶え、世界・・いやこの星の創造主たる・・・親愛なるあの方の息子だ・・この命より尊い存在なのだ・・・・・これ以上世界への干渉の規約に背くことは言えぬが・・・』
ガディはそのまま黙った。
「ガディさん?」
『・・・大丈夫・・・我は引きずられぬ・・・引きずられるわけにはいかぬ・・・』
「・・・え?」
『何者かが・・人間界に我を引きずり出そうとしておるようだ・・・もし世界2つが衝突したら・・・大変なことになる、双方の世界は滅びる・・・』
「大丈夫なんですか?!」
『不可能なのだ、いくら力のあるものでも、たとえ魔王でもその理は曲げられん・・・1つの世界の中にもう1つの世界をねじ込むなんて事・・・あの方達以外は・・・』
「・・・・ジンのお父さん?」
『・・・・・・・少しお喋りが過ぎたようだ・・』
ガディは苦笑した。
「あ、ガディさん・・・あの時の、ジェロは・・・何処に行ったか分かりますか?」
『ああ・・・あの黒狼の子か・・今は人間界にいってるようだ・・・もうほとんどの者がそうだが・・・』
「え・・・・・ジェロも人間界に居るの?」
『結衣、ジンの為に魔石を取りに来たのだろう?』
「結衣は静かに頷いた。
『これくらいしかないが、持って行ってくれ』
小さな布の袋をガディは結衣に手渡した。
「ありがとう・・・」
『気をつけるのだぞ?良くないものがそちらに紛れ込んでいるようだ・・・』
「良くないもの?」
結衣はとっさにあの男が脳裏に浮かんだ。
次元を、その核であるジンを、殺して破壊して回っていた黒い男。
あの男が・・・・また・・・ジンを・・狙っている?
『どうか・・何も出来ぬ我の代わりにジンの力になってやって欲しい』
フェルヴァと結衣にガディが頭を下げた。
「!!!」
これには驚きを隠せなかった。
「顔を上げてください、ガディさん・・」
『どうやって人間界に戻れば・・?』
フェルヴァが言う。
『それくらいなら、我が扉を作ろう』
「平気なの?!」
世界に干渉したら深く眠ると聞いた。
寝ている間に引きずられたりなんてことには・・・。
『大丈夫、そんなことにはならぬ、結界を見ただろう?』
くすくすと優しく微笑むガディ、やはり昔ほど力強さも威圧感も感じられない。
『また訪れたとき世界は随分代わっているかも知れぬな・・』
ぼそりと寂しそうに呟く。
今はまだそれがどういう意味なのか結衣には理解出来なかった。
ガディが出してくれた扉をくぐりもといた世界へ戻ってきた。
嬉しいことに結衣の家の近くの通りだった。
慌てて家へと帰宅する。
「ジンー?大丈夫?!」
部屋の中へ入るなり絶句した。
後ろから来たフェルヴァも部屋の様子を結衣の後ろから覗き込んだ。
『凄い散らかっている・・』
「泥棒?!」
慌てた形相で振り返りフェルヴァを見つめた。
『その顔怖いよ、結衣・・・この散らかりようからすると襲撃じゃないか?』
「え・・・襲撃って・・・」
確かに良く見ると、壁に争った形跡が残されている、血痕も床に零れていた。
『・・・・』
しゃがみ込んでフェルヴァが血痕に触れた。
また乾いてなくて新しい。
それにこの血の匂い・・・。
そのまま口に運んでペロリと舐める。
『至極甘美な味・・・・』
「・・・・ジン・・・何処に行ったんだろう、あんな体で・・」
辺りにヒントになるものはないかと結衣は探し回った。
此処はやはり思いつくのは一箇所しかなかった。
学院・・・。
結衣は足早に学院へと足を走らせた。
「・・・何かあったのか・・・」
結衣とジンが話し合っていた。
「分からない・・外の様子を見に行ってそのまま・・・」
「・・・・」
「リアンいないと、魔石ないんだよね?」
結衣が心配そうに言った。
「そうだな・・・力を消耗しなければ今すぐにどうこうなるというわけでもないが・・・」
まだ完全には治りきってない重い体。
結衣に何かあっても助けられるかどうかすら際どい。
「・・・・もう1度魔界に行って来るか・・・」
「え・・その体で?!」
「ガディに会えれば、魔石も貰えると思うんだが・・・」
「私が貰ってくるよ?」
結衣が唐突に言った。
「危険だ!」
「けど・・・・」
「人間が1人でうろうろ出来るほど甘い世界じゃない」
「・・・・」
重い沈黙が流れた。
『ならば、我が結衣に同行すればすむということか?』
別の声がした。
「フェルヴァ?」
結衣がその名を口にした。
『大分我も体の調子が戻ってきたのでね・・・』
結衣の影から姿を現しながらそういった。
金色の双眸と長い金色の髪、漆黒の衣装を身にまとった青年だった。
「それが本来の姿か?」
ジンが問う。
『そう、この間は中からで失礼した・・甘美なる極上の者』
「・・・・俺はジンだ、味で呼ぶな・・・」
力なく苦笑した。
『そうか、それはすまなかった・・・ジン』
「いや・・・それより・・・」
結衣とフェルヴァを交互に見つめた。
『我が結衣に同行してその身を守ればいいのだろう?』
「いいのか?」
『構わない、むしろ早く元気になってもらわねば・・・』
獲物を前にした獣のような目をジンに向けたまま、舌をぺろりと出し乾いた唇を舐めた。
「・・・・・・」
「どの辺にいるとか分かる?ガディさん」
「ガディは魔神、魔界そのものだ、呼べば応じるはずだ・・・帰りはガディに頼んでくれ」
『魔神とは・・・素晴らしい知り合いがいるのだな・・・』
「世界に干渉して眠っていなければ・・・・」
「・・・・・」
「扉を開く、準備はいいか?」
フェルヴァは不思議そうにジンを見据える。
簡単に異世界への扉なんて開けるものじゃない。
やはり只者ではないのだろうな。と内心苦笑した。
歪んだ空間の中へ足を踏み入れると中は暗く足元は白い光の道が一本。
「最初着たとき此処から私落ちたんだ」
結衣はそんな事を苦笑しながら言った。
『深そうだな・・・』
今度は落ちずに渡りきった。
反対側のジンの姿がガラス越しのようにぼやけて見えた。
「・・頼んだぞ・・・」
聞こえてはないだろうけど、小さく呟いた。
扉が閉じるとジンはその場に崩れるように倒れこんで再び眠りについた。
「ガディさーんー?」
とりあえず魔界そのものだから呼べとだけ言われた。
呼んでみる。
反応がない。
「・・・・・眠ってるのかな?」
『どうだろう・・・我には分からん・・・』
会ったことすらない上位の存在。
「ガディさんー?」
『結衣、止まれ』
「え?」
『様子がおかしい・・・』
魔族の気配が全然ない。
「あ・・知り合いのとこに行ってみよう?力貸してくれるかもしれない」
『知り合い?あの黒狼のことか?』
結衣は静かに頷いた。
「確かこの近くに小屋があったはず・・」
草むらをかき分けてずんずん森の中へ入っていく。
見慣れた小さな小屋が目に飛び込んできた。
次第に駆け足になる。
小屋の戸を叩いてみた。
中からは何の反応もない。
狩にでもいっているのだろうか?
中へ入ってみた。
「え・・」
中は長い間使われてなかったような有様だった。
いたるところに張り巡らされた蜘蛛の巣、家具の上にたまった埃。
床も白く埃が積もっていて結衣の足跡だけがくっきり残った。
『この様子だと暫く此処には戻ってないようだな』
「うん・・・」
小さく頷いた。
『何か来る』
「?」
『大群・・・』
「え・・?!」
慌てて2人は隠れた。
遠くのほうから地響きを鳴らして魔物の大群が押し寄せてきた。
幸運なことに見つかる前に隠れられたから大事にはならなかった。
「こんなとこに・・・あんなの前いなかった・・・」
『世界のバランスが狂ったのだろう・・・』
「・・・・」
それは、ジンがまだ本調子ではないから?
それとも魔王が人間界に召喚されたから?
「ガディさん・・・・何処・・・」
小さく呟いた。
「娘、何故魔神様の名を口にする?」
突然聞こえてきた謎の声。
『誰だ?』
「今はわしが問うておる」
「・・・ガディさんに会いにきたの、何処にいるか分かるなら教えてください!」
「・・・・神に会いにきたと申すのか・・恐れを知らぬ人間だな・・」
『我らは急いでいる、居場所を知っているなら教えてもらおう』
フェルヴァが言う。
「知っておる、だが・・・不審者を神に会わせるわけにはいかん」
「不審者って・・私たちが?!」
「如何にも」
「・・・・・・・」
「いいわ、ならガディさんに伝えて、ジンが大変で結衣が代わりに会いにきたって」
「・・・その名・・・・古き親愛なる友の名・・」
「?」
「いいだろう、ついて来なされ」
そういって結衣たちの前に現れたのは小さな鳥。
言われるままついていくと森の奥深く、結界のようなものが張り巡らされた洞窟に入っていく。
「此処で、お待ちくだされ」
2人を入り口で待たせると鳥は奥へと歩みを進めた。
「魔神様・・・古き親愛なる友の名を口にする娘が着ました」
『・・・・・通せ』
「はい・・」
入り口に戻り結衣たちを奥へと案内した。
「え・・・」
少し前にあったガディとは全然様子が違っていた。紫電の瞳は変わらずにあるが前ほど強い光を感じない。
漆黒の髪も随分長くなって乱れていた。
『久しいな、結衣・・・数十年ぶりか?』
「あ・・・えっと」
そんなに経っただろうかと頭を悩ませる結衣。
『・・ジンは、元気か?』
「そのことで着たんです」
結衣の真面目な視線。
『何かあったようだな?』
「人間界に魔王が召喚されて、魔王がジンに酷い傷を負わせちゃって・・・」
『リアンはどうした?』
結衣は首を振った。
「行方が分からなくて・・・何かあったのかもしれない・・・」
涙が込み溢れてくる。
『・・・人間界か・・・』
「?」
『我も行って力を貸したい所だが・・・力の源を貸し与えた魔王がこの世界を離れ、我が力も大分衰え消えてしまった、魔王が居れば我も力を失わずにもっと役に立てたのだが・・・』
「そんな・・・」
『しかし・・・ジンの身が危ういというならば・・この命尽きるとしても助けねばならぬな』
このガディの台詞にフェルヴァが反応した。
『どうして、一魔族に尊き神の貴方がそこまでするのです?!』
『我を魔神として望みを叶え、世界・・いやこの星の創造主たる・・・親愛なるあの方の息子だ・・この命より尊い存在なのだ・・・・・これ以上世界への干渉の規約に背くことは言えぬが・・・』
ガディはそのまま黙った。
「ガディさん?」
『・・・大丈夫・・・我は引きずられぬ・・・引きずられるわけにはいかぬ・・・』
「・・・え?」
『何者かが・・人間界に我を引きずり出そうとしておるようだ・・・もし世界2つが衝突したら・・・大変なことになる、双方の世界は滅びる・・・』
「大丈夫なんですか?!」
『不可能なのだ、いくら力のあるものでも、たとえ魔王でもその理は曲げられん・・・1つの世界の中にもう1つの世界をねじ込むなんて事・・・あの方達以外は・・・』
「・・・・ジンのお父さん?」
『・・・・・・・少しお喋りが過ぎたようだ・・』
ガディは苦笑した。
「あ、ガディさん・・・あの時の、ジェロは・・・何処に行ったか分かりますか?」
『ああ・・・あの黒狼の子か・・今は人間界にいってるようだ・・・もうほとんどの者がそうだが・・・』
「え・・・・・ジェロも人間界に居るの?」
『結衣、ジンの為に魔石を取りに来たのだろう?』
「結衣は静かに頷いた。
『これくらいしかないが、持って行ってくれ』
小さな布の袋をガディは結衣に手渡した。
「ありがとう・・・」
『気をつけるのだぞ?良くないものがそちらに紛れ込んでいるようだ・・・』
「良くないもの?」
結衣はとっさにあの男が脳裏に浮かんだ。
次元を、その核であるジンを、殺して破壊して回っていた黒い男。
あの男が・・・・また・・・ジンを・・狙っている?
『どうか・・何も出来ぬ我の代わりにジンの力になってやって欲しい』
フェルヴァと結衣にガディが頭を下げた。
「!!!」
これには驚きを隠せなかった。
「顔を上げてください、ガディさん・・」
『どうやって人間界に戻れば・・?』
フェルヴァが言う。
『それくらいなら、我が扉を作ろう』
「平気なの?!」
世界に干渉したら深く眠ると聞いた。
寝ている間に引きずられたりなんてことには・・・。
『大丈夫、そんなことにはならぬ、結界を見ただろう?』
くすくすと優しく微笑むガディ、やはり昔ほど力強さも威圧感も感じられない。
『また訪れたとき世界は随分代わっているかも知れぬな・・』
ぼそりと寂しそうに呟く。
今はまだそれがどういう意味なのか結衣には理解出来なかった。
ガディが出してくれた扉をくぐりもといた世界へ戻ってきた。
嬉しいことに結衣の家の近くの通りだった。
慌てて家へと帰宅する。
「ジンー?大丈夫?!」
部屋の中へ入るなり絶句した。
後ろから来たフェルヴァも部屋の様子を結衣の後ろから覗き込んだ。
『凄い散らかっている・・』
「泥棒?!」
慌てた形相で振り返りフェルヴァを見つめた。
『その顔怖いよ、結衣・・・この散らかりようからすると襲撃じゃないか?』
「え・・・襲撃って・・・」
確かに良く見ると、壁に争った形跡が残されている、血痕も床に零れていた。
『・・・・』
しゃがみ込んでフェルヴァが血痕に触れた。
また乾いてなくて新しい。
それにこの血の匂い・・・。
そのまま口に運んでペロリと舐める。
『至極甘美な味・・・・』
「・・・・ジン・・・何処に行ったんだろう、あんな体で・・」
辺りにヒントになるものはないかと結衣は探し回った。
此処はやはり思いつくのは一箇所しかなかった。
学院・・・。
結衣は足早に学院へと足を走らせた。
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