7 / 24
沈黙の聖女
偽りの愛を求めた聖女
しおりを挟む
「マリア様、そんな言葉をおっしゃらないでください!」
聖女付きの――幼さが残る少年騎士が叫びました。
夜、私の寝室に立ち入れる者は、護衛としての役目を担う彼一人。
彼しか選ぶことができない理由もありましたが、守り守られるという主従関係は想いを強くするようで――。
彼となら問題ないと勘違いしてしまったのです。
思えば――知り合った町の娘が結婚するのだと知った時、どうしようもない不安に駆られてしまったのが原因のようです。
二十歳を過ぎてしまったからでしょうか。
聖女としての己の限界を垣間見てしまったのです。
お腹に宿した命を目の当たりにして――それが私よりも若い少女なのですから。
年上の結婚を祝福してきた今までと同じ気持ちではいられません。
私にはもう訪れない幸せなのですね、と。
『彼ったら年上なのに甘えん坊さんなんですよ』
そんな言葉を聞いて、正気でいられるのが不思議なくらいでした。
シスターでしたら辞めてしまえば結婚は可能でしょう。
しかし、その上の聖女となると話は変わってきます。
次の世代へと聖なる魔法を伝えていく者として、シスターであり続ける定めなのです。
拒否権はありません。
それが神のご意志だと誰もが信じておりますから。
ええ、私もそれで構わないと思っていました。
しかし、子供は残せなくても愛することを我慢していくことには限界だったのです。
せめて、人肌同士が触れ合う温もりを――。
彼なら一夜の過ちを黙っていてくれるでしょう。
そう思ってしまったのです。
「私を愛してくださらないのですか?」
少年騎士に私は尋ねました。
「お慕いしております。ですが、マリア様は神にお仕えする身。騎士である私があなた様の身体を汚すわけにはまいりません」
「騎士として頑張っているあなたが汚れているなど――思ったことは一度もありませんよ。これが人として正しい姿ではありませんか」
私は彼を抱き締めました。
間違っておりますか?
愛することとはこういうことでしょう?
これが汚れていると言うのであれば、世界とは汚れて醜いものだと認めなければいけないのですよ?
私はそんな風に思いたくありません。
神がこの火照りを認めておられないのであれば、私たちは罪を犯す為に生まれてきたも同然ではありませんか。
そんな我慢を何故、シスターだけに強いるのですか?
いくら男神を崇めているとはいえ、聖騎士の方は結婚できるだなんて、あんまりです。
だから――。
「マ……マリアさまが淫魔に取り付かれたっ!」
これからも清く乙女であろうとする為に必要な儀式だと割り切ってほしかった。
しかし、そんな気持ちが届くことはなく、少年騎士は私を押し倒し、教皇に告白したのです。
あの少年騎士の私を軽蔑した顔は、一生忘れることはないでしょう。
聖女の名を汚した私は声を封じられて国外追放。
その時に国境線での戦に巻き込まれ、こうして奴隷となりました。
愛とは何なのでしょう。
慈愛の手を差し伸べてきたと私は勘違いしていたのでしょうか。
やはり、世界とは全てが汚れていて醜いものなのでしょうか。
私が望むのは、『愛』だと信じてきた汚らわしい行為を経験して、自分も汚れているのだと証明すること。
それが叶えば、こんな歪んだ世界に未練などありません。
なのに、私は娼館に落ちるどころか、性欲処理の捌け口にもなれずに生き長らえてしまっています。
御主人様、どうか私に変な期待を持たせないでください。
ポーションなんて作るよりも、私は娼婦の仕事がお似合いなのですから。
そう、偽りの汚れた愛を――。
聖女付きの――幼さが残る少年騎士が叫びました。
夜、私の寝室に立ち入れる者は、護衛としての役目を担う彼一人。
彼しか選ぶことができない理由もありましたが、守り守られるという主従関係は想いを強くするようで――。
彼となら問題ないと勘違いしてしまったのです。
思えば――知り合った町の娘が結婚するのだと知った時、どうしようもない不安に駆られてしまったのが原因のようです。
二十歳を過ぎてしまったからでしょうか。
聖女としての己の限界を垣間見てしまったのです。
お腹に宿した命を目の当たりにして――それが私よりも若い少女なのですから。
年上の結婚を祝福してきた今までと同じ気持ちではいられません。
私にはもう訪れない幸せなのですね、と。
『彼ったら年上なのに甘えん坊さんなんですよ』
そんな言葉を聞いて、正気でいられるのが不思議なくらいでした。
シスターでしたら辞めてしまえば結婚は可能でしょう。
しかし、その上の聖女となると話は変わってきます。
次の世代へと聖なる魔法を伝えていく者として、シスターであり続ける定めなのです。
拒否権はありません。
それが神のご意志だと誰もが信じておりますから。
ええ、私もそれで構わないと思っていました。
しかし、子供は残せなくても愛することを我慢していくことには限界だったのです。
せめて、人肌同士が触れ合う温もりを――。
彼なら一夜の過ちを黙っていてくれるでしょう。
そう思ってしまったのです。
「私を愛してくださらないのですか?」
少年騎士に私は尋ねました。
「お慕いしております。ですが、マリア様は神にお仕えする身。騎士である私があなた様の身体を汚すわけにはまいりません」
「騎士として頑張っているあなたが汚れているなど――思ったことは一度もありませんよ。これが人として正しい姿ではありませんか」
私は彼を抱き締めました。
間違っておりますか?
愛することとはこういうことでしょう?
これが汚れていると言うのであれば、世界とは汚れて醜いものだと認めなければいけないのですよ?
私はそんな風に思いたくありません。
神がこの火照りを認めておられないのであれば、私たちは罪を犯す為に生まれてきたも同然ではありませんか。
そんな我慢を何故、シスターだけに強いるのですか?
いくら男神を崇めているとはいえ、聖騎士の方は結婚できるだなんて、あんまりです。
だから――。
「マ……マリアさまが淫魔に取り付かれたっ!」
これからも清く乙女であろうとする為に必要な儀式だと割り切ってほしかった。
しかし、そんな気持ちが届くことはなく、少年騎士は私を押し倒し、教皇に告白したのです。
あの少年騎士の私を軽蔑した顔は、一生忘れることはないでしょう。
聖女の名を汚した私は声を封じられて国外追放。
その時に国境線での戦に巻き込まれ、こうして奴隷となりました。
愛とは何なのでしょう。
慈愛の手を差し伸べてきたと私は勘違いしていたのでしょうか。
やはり、世界とは全てが汚れていて醜いものなのでしょうか。
私が望むのは、『愛』だと信じてきた汚らわしい行為を経験して、自分も汚れているのだと証明すること。
それが叶えば、こんな歪んだ世界に未練などありません。
なのに、私は娼館に落ちるどころか、性欲処理の捌け口にもなれずに生き長らえてしまっています。
御主人様、どうか私に変な期待を持たせないでください。
ポーションなんて作るよりも、私は娼婦の仕事がお似合いなのですから。
そう、偽りの汚れた愛を――。
0
あなたにおすすめの小説
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
弁えすぎた令嬢
ねこまんまときみどりのことり
ファンタジー
元公爵令嬢のコロネ・ワッサンモフは、今は市井の食堂の2階に住む平民暮らしをしている。彼女が父親を亡くしてからの爵位は、叔父(父親の弟)が管理してくれていた。
彼女には亡き父親の決めた婚約者がいたのだが、叔父の娘が彼を好きだと言う。
彼女は思った。
(今の公爵は叔父なのだから、その娘がこの家を継ぐ方が良いのではないか)と。
今後は彼らの世話にならず、一人で生きていくことにしよう。そんな気持ちで家を出たコロネだった。
小説家になろうさん、カクヨムさんにも載せています。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
真実の愛のおつりたち
毒島醜女
ファンタジー
ある公国。
不幸な身の上の平民女に恋をした公子は彼女を虐げた公爵令嬢を婚約破棄する。
その騒動は大きな波を起こし、大勢の人間を巻き込んでいった。
真実の愛に踊らされるのは当人だけではない。
そんな群像劇。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる