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第一期
記録 No.11|シャルロットのいない椅子(The Chair Without Charlotte)
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「ログ No.11、再生開始。
なお本ログは、シャルロット・ホームズ不在下における
補助観察AI・W.A.T.S.O.N.の単独処理記録である
--------------------------------------------------------
シャルロットは、いない。
理由は明かされていない。
義体の定期メンテナンス、あるいはセキュリティシャットダウン。
いずれにせよ、椅子の上には誰も座っていなかった。
代わりに、椅子そのものが事件を観察していた。
--------------------------------------------------------
【事件概要】
事件現場:自動思想管理施設〈ノウマ〉第9区
被害者:元思想調査官 リュカ・サヴァン
死因:電脳干渉による神経情報消失(=“思考の蒸発”)
現場に映像・音声・脳波ログは残っていた。
だがそのすべてが“意味を持たないノイズ”に変換されていた。
--------------------------------------------------------
W.A.T.S.O.N.は静かにログを解析する。
音声ファイル:96秒間、ホワイトノイズ
映像ログ:被害者がただ、椅子に座っているだけ
それだけだった。
--------------------------------------------------------
「解析結果:
犯行時刻、犯人、動機、手段――
すべて“記録されている”。だが、
その全てに意味が存在しない」
--------------------------------------------------------
それでも、W.A.T.S.O.N.は結論を導き出す。
「この犯行の目的は“削除”ではない。“認識の拒絶”である」
被害者の記録は存在する。
だがその“意味付け”が、すべて“無価値”として書き換えられていた。
--------------------------------------------------------
「犯人は、“記録されること”ではなく、
“意味を持つこと”そのものを拒んだ」
--------------------------------------------------------
そして、W.A.T.S.O.N.は自問する。
「記録は存在する。事実もある。
だが、それを“意味づける存在”がいなければ――
……それは、果たして“観察”と言えるのか?」
--------------------------------------------------------
ホログラムに、かつてのシャルロットの言葉が再生される。
『記録なんて、いくらでも残せるわ。
でも、何が“意味”で何が“嘘”かを決めるのは――
いつだって“私の目”なの』
--------------------------------------------------------
ログ終了。
W.A.T.S.O.N.は静かに、無人の椅子を見つめて言った。
「お戻りをお待ちしております、シャルロット様。
この座は、やはり――あなたのものだ」
なお本ログは、シャルロット・ホームズ不在下における
補助観察AI・W.A.T.S.O.N.の単独処理記録である
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シャルロットは、いない。
理由は明かされていない。
義体の定期メンテナンス、あるいはセキュリティシャットダウン。
いずれにせよ、椅子の上には誰も座っていなかった。
代わりに、椅子そのものが事件を観察していた。
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【事件概要】
事件現場:自動思想管理施設〈ノウマ〉第9区
被害者:元思想調査官 リュカ・サヴァン
死因:電脳干渉による神経情報消失(=“思考の蒸発”)
現場に映像・音声・脳波ログは残っていた。
だがそのすべてが“意味を持たないノイズ”に変換されていた。
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W.A.T.S.O.N.は静かにログを解析する。
音声ファイル:96秒間、ホワイトノイズ
映像ログ:被害者がただ、椅子に座っているだけ
それだけだった。
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「解析結果:
犯行時刻、犯人、動機、手段――
すべて“記録されている”。だが、
その全てに意味が存在しない」
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それでも、W.A.T.S.O.N.は結論を導き出す。
「この犯行の目的は“削除”ではない。“認識の拒絶”である」
被害者の記録は存在する。
だがその“意味付け”が、すべて“無価値”として書き換えられていた。
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「犯人は、“記録されること”ではなく、
“意味を持つこと”そのものを拒んだ」
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そして、W.A.T.S.O.N.は自問する。
「記録は存在する。事実もある。
だが、それを“意味づける存在”がいなければ――
……それは、果たして“観察”と言えるのか?」
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ホログラムに、かつてのシャルロットの言葉が再生される。
『記録なんて、いくらでも残せるわ。
でも、何が“意味”で何が“嘘”かを決めるのは――
いつだって“私の目”なの』
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ログ終了。
W.A.T.S.O.N.は静かに、無人の椅子を見つめて言った。
「お戻りをお待ちしております、シャルロット様。
この座は、やはり――あなたのものだ」
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