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第一章 どしゃぶりのスコール。君は別れを告げる。だけど俺は……
第14話 怪しき洞窟の果てで『巨竜』との遭遇!?
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何門の機関銃とカノン砲が轟音を立てて、【霊象獣】の群れに向け、砲火を浴びせ続けていた。
可哀想だけど今回だけは仕方がない。
「お待ちしておりました皆さん――少尉、私は彼らと話をする。引き続き指揮は任せたよ」
「はっ! 了解であります!」
さっさと持ち場につく少尉の自慢の怒号が、俺らの耳にも届いた。
作戦内容はすでに大佐との【霊話】で、軍が引き付けている間に少数の俺らで本体を叩く。という電撃作戦が決まっていた。
「ということは既に捕まえてあんのか?」
ナキアさんの問いに大佐は「はい、こちらに」と答え、生け捕りにした【歩兵級】のところまで案内される。
個体は水牛の【霊象獣】、今もなお網の中で暴れて、収まる気配を見せない。
すっと辛うじて原型を留めている頭部にアセナは触れ、静かに目を閉じた。
「アセナ……」
シーッ! と、くちびるに指をあてシャルが皆へ静かにするように促す。
「……見つけた。地図は有りますか?」
野戦テーブルに周辺地図が広げられる。
汗をぬぐいながらアセナはコンパスと定規を使って、地図上に信号の足跡を刻んでいく。
以前、彼女が遭遇したのはハブという中継点を使う特殊な個体で、その時は大分手を焼かれたとか。
今回も同じ系統だと言ったものの、それでも数分で【完成体】の牙城を暴き出した。
「ここから北へ徒歩約1時間半の距離、ここまで信号を飛ばすには高さが必要ですから、おそらくこの山の山頂になるでしょうか……」
「【タルトゥーヤ山】か、そこって昔、【霊象石】の鉱山があったよな」
実のところ【霊象石】は採掘できる。クズこそ多いけどむしろそっちが主流だ。
タルトゥーヤ山は紅葉シーズンにシャルと一緒にガイドをした覚えがある。
ゆるやかな場所で登るのに苦労することはないと思う。
「うん」シャルが首を縦に振る。「もう閉鎖されたけど」
「つーか示し合わせたみたいだな」ナキアさんが腕を組む。
言う通り少し気持ち悪い。それでも罠を承知で行くっきゃない。
「そしたら」大佐が後方の車両を指す。「軍用車を使うといい」
決まりだ――急ぎ車両に乗り込み廃坑へ向かう。
山中は凸凹道こそあったけど、軍がひきつけてくれたおかげで難なく到着した。
中では【歩兵級】が待ち構えていると思いきや、薄気味悪いほど静まり返っている。
にしても暗い。【光霊気】のランプがなければ線路に脚を取られそう。
「やっぱ、罠くせぇな」
「その可能性は高いと思います。信号にハブを使うぐらいですから」
反応を探りつつ、警戒しながら進む、今のところアセナの予報とランプだけがたより。
「ちょっと待ってみんな、これ見て」
線路のつなぎ目にひかかっていた何かをシャルが拾う。それは青い布切れ。
折り重なった縫い目からしてズボンのすそのよう。
付着した青い血こそ乾いているものの、生地はまるで降ろしたてだった。
「これって誰かが来たって言うことだよね。帝国軍の――しかも最近」
「妙だな」不審げにナキアさんは首をひねった。「国境でもここは王国領、許可いんだけどな」
「なんか、こわっ……」
両腕をぎゅっと抱きしめ震えあがるシャルの気持ちがよくわかった。
「この奥に何が潜んでんだ? いったい――」
ふとアセナが視界の端で、壁に寄りかかっているのが見えた。
「……アセナ? どうしたん! 平気!?」
「大丈夫――信号に長く当たり過ぎただけ」
反応が強くなっているからこの先にいるのは間違いない、と言うその顔には血の気がない。
胸が焼ける、口が乾く。まさかこのまま進んだら倒れるんじゃないかって、そう心配に神経を焦がし始めた俺の肩をナキアさんがつかんできた。
首を横に振る。アセナに任せろって? 分かっている、でも――。
「心配しないでエルくん。これは今、私にしかできないことだから」
その物言いははっきりして力強くて、堅い決意を感じてもう俺は何も言えなかった。
同時に俺も覚悟を決める――何かあったら、ふもとまで全力で走ってやる!
やがて俺たちは明かりがさす大きい縦穴へと出た。
中央には列車の格納庫で見かけるターンテーブルがあり、それを囲うように横穴が続いている。しかし放置されていたのはトロッコじゃなかった。
「――なんだ、あれ……?」
「おいおい、こりゃ――」
「えっと……なんかの機械?」
一見大砲に見えるけど、銃口が見当たらないし、形状も角ばっている。それに何よりも巨大。その不可解な装置に、俺だけじゃなく全員が息をのんだ。
ただ――アセナだけは少し違った。
「――なんで、こんなところにこれが……」
ハッと目を見開いて、信じられないものを見たように後ずさりしていく。
「もしかしてアセナ、これが何か知って――」
突然背筋が凍りつく。まるで真冬の極寒の中に放り込まれたみたいな気配。
警戒を強めた俺たちは背中合わせに周囲を見据える。
「全員構えろ、来るぞ!」
ナキアさんの警告後、すぐに地面が揺れだした。
何かが俺ら周りをものすごい速さで這いずりながら近づいてくるのが分かる。
「――来る! みんな跳んで!」
アセナの合図で四散する。岩石を飛び散らせ、ドラゴンを思わせる頭を持ったワームの【霊象獣】が出現した。
縦穴まで届きそうなくらい背の高さ、それでも終わりじゃなくまだまだ下には胴体が続いているよう。
直径は少なくみてもさっき乗ってきた車数十台分はあった。
「デカっ! これが【完成体】!?」
可哀想だけど今回だけは仕方がない。
「お待ちしておりました皆さん――少尉、私は彼らと話をする。引き続き指揮は任せたよ」
「はっ! 了解であります!」
さっさと持ち場につく少尉の自慢の怒号が、俺らの耳にも届いた。
作戦内容はすでに大佐との【霊話】で、軍が引き付けている間に少数の俺らで本体を叩く。という電撃作戦が決まっていた。
「ということは既に捕まえてあんのか?」
ナキアさんの問いに大佐は「はい、こちらに」と答え、生け捕りにした【歩兵級】のところまで案内される。
個体は水牛の【霊象獣】、今もなお網の中で暴れて、収まる気配を見せない。
すっと辛うじて原型を留めている頭部にアセナは触れ、静かに目を閉じた。
「アセナ……」
シーッ! と、くちびるに指をあてシャルが皆へ静かにするように促す。
「……見つけた。地図は有りますか?」
野戦テーブルに周辺地図が広げられる。
汗をぬぐいながらアセナはコンパスと定規を使って、地図上に信号の足跡を刻んでいく。
以前、彼女が遭遇したのはハブという中継点を使う特殊な個体で、その時は大分手を焼かれたとか。
今回も同じ系統だと言ったものの、それでも数分で【完成体】の牙城を暴き出した。
「ここから北へ徒歩約1時間半の距離、ここまで信号を飛ばすには高さが必要ですから、おそらくこの山の山頂になるでしょうか……」
「【タルトゥーヤ山】か、そこって昔、【霊象石】の鉱山があったよな」
実のところ【霊象石】は採掘できる。クズこそ多いけどむしろそっちが主流だ。
タルトゥーヤ山は紅葉シーズンにシャルと一緒にガイドをした覚えがある。
ゆるやかな場所で登るのに苦労することはないと思う。
「うん」シャルが首を縦に振る。「もう閉鎖されたけど」
「つーか示し合わせたみたいだな」ナキアさんが腕を組む。
言う通り少し気持ち悪い。それでも罠を承知で行くっきゃない。
「そしたら」大佐が後方の車両を指す。「軍用車を使うといい」
決まりだ――急ぎ車両に乗り込み廃坑へ向かう。
山中は凸凹道こそあったけど、軍がひきつけてくれたおかげで難なく到着した。
中では【歩兵級】が待ち構えていると思いきや、薄気味悪いほど静まり返っている。
にしても暗い。【光霊気】のランプがなければ線路に脚を取られそう。
「やっぱ、罠くせぇな」
「その可能性は高いと思います。信号にハブを使うぐらいですから」
反応を探りつつ、警戒しながら進む、今のところアセナの予報とランプだけがたより。
「ちょっと待ってみんな、これ見て」
線路のつなぎ目にひかかっていた何かをシャルが拾う。それは青い布切れ。
折り重なった縫い目からしてズボンのすそのよう。
付着した青い血こそ乾いているものの、生地はまるで降ろしたてだった。
「これって誰かが来たって言うことだよね。帝国軍の――しかも最近」
「妙だな」不審げにナキアさんは首をひねった。「国境でもここは王国領、許可いんだけどな」
「なんか、こわっ……」
両腕をぎゅっと抱きしめ震えあがるシャルの気持ちがよくわかった。
「この奥に何が潜んでんだ? いったい――」
ふとアセナが視界の端で、壁に寄りかかっているのが見えた。
「……アセナ? どうしたん! 平気!?」
「大丈夫――信号に長く当たり過ぎただけ」
反応が強くなっているからこの先にいるのは間違いない、と言うその顔には血の気がない。
胸が焼ける、口が乾く。まさかこのまま進んだら倒れるんじゃないかって、そう心配に神経を焦がし始めた俺の肩をナキアさんがつかんできた。
首を横に振る。アセナに任せろって? 分かっている、でも――。
「心配しないでエルくん。これは今、私にしかできないことだから」
その物言いははっきりして力強くて、堅い決意を感じてもう俺は何も言えなかった。
同時に俺も覚悟を決める――何かあったら、ふもとまで全力で走ってやる!
やがて俺たちは明かりがさす大きい縦穴へと出た。
中央には列車の格納庫で見かけるターンテーブルがあり、それを囲うように横穴が続いている。しかし放置されていたのはトロッコじゃなかった。
「――なんだ、あれ……?」
「おいおい、こりゃ――」
「えっと……なんかの機械?」
一見大砲に見えるけど、銃口が見当たらないし、形状も角ばっている。それに何よりも巨大。その不可解な装置に、俺だけじゃなく全員が息をのんだ。
ただ――アセナだけは少し違った。
「――なんで、こんなところにこれが……」
ハッと目を見開いて、信じられないものを見たように後ずさりしていく。
「もしかしてアセナ、これが何か知って――」
突然背筋が凍りつく。まるで真冬の極寒の中に放り込まれたみたいな気配。
警戒を強めた俺たちは背中合わせに周囲を見据える。
「全員構えろ、来るぞ!」
ナキアさんの警告後、すぐに地面が揺れだした。
何かが俺ら周りをものすごい速さで這いずりながら近づいてくるのが分かる。
「――来る! みんな跳んで!」
アセナの合図で四散する。岩石を飛び散らせ、ドラゴンを思わせる頭を持ったワームの【霊象獣】が出現した。
縦穴まで届きそうなくらい背の高さ、それでも終わりじゃなくまだまだ下には胴体が続いているよう。
直径は少なくみてもさっき乗ってきた車数十台分はあった。
「デカっ! これが【完成体】!?」
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