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序章 さよなら! 『理不尽』な仲間たち!
第二話 僕の人生を変えた少女との『出会い』!?
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「なんだ。そんなことか」
「それに昨日、どうしてアタシの腕が落ちてるって分かったの?」
「ああ……あれね。腕の力が足んなさそうだったし」
「う……」
「【刻印】はおまかせで良いって言ってたから、そうしてあげた方がいいんじゃないかって思って入れただけだよ。それじゃぁ……僕はこれで」
「待って!」
あ、あぶなっ!
ガシッって急に腕をつかむから、危うく転びそうになった。
「どこ行くの?」
ほんと何なんだ。この子?
「いや、まぁ……さっき追い出されたから、キキといっしょにこの町から出るんだよ」
「はぁ!? 追い出された!? 町を出る!? どうして!?」
これって答えなきゃいけないことなのか?
でもこの子、手を放してくれなさそうだしな。
ハァ……しょうがない。
「手入れなんてその辺の店で安くできるようになったから、もう用済みなんだって」
「はぁ!? どこのどいつ!? んなこといったバカっ! ん? でもちょっと待って……っていうことはあんた今、フリーってこと?」
職を失ったことを『あなた今、彼女いないの?』みたいな言い方で訊いてくるんだなぁこの子。
こっちはそのことで傷心なのに……。
「……そうだよ。それじゃ、これで」
「だからちょっと待ってって言ってんでしょうが! これから新しい物語がはじまる感じで立ち去ろうとしてんの!?」
別にそんなつもりはこれっぽっちも無かったんだけど……。
「こんないたいけな女の子がお願いしていんだから! ちょっとぐらい話を聞いてくれてもいいじゃない!」
いたいけって……自分で言っちゃったよこの子。
まぁそれはいいや、ひとまずどっかに置いておこう。
それよりも、お願い? 何を?
いったいいつそんな話になったんだ?
「良かったらお兄ぃとお姉ぇのもお願いしたいんだ。もちろんその分お金も払うから!」
「お金もらえるだったら、喜んで引き受けるよ。ちょうど心もと無かったところだったんだ。この通り馬もないしね」
どうしてないかって?
どうもエリオットたちに隠されたんだと思う。
多分今ごろ売っぱらわれて金に変えられている。
「馬もなしに旅しようなんて、いくらなんでも命知らずでしょ」
仕方がないだろ。無いんだから。
「そうだ! 今行くところが無いっていったわよね? それだったらさぁ、いっそのことウチにくればいいじゃない!」
う~ん、どうも脈絡がない気がする。
だめだ。最初から正確に思い出して整理しよう。
というか、させてくれ。
しないともう頭がいっぱいいっぱい。
ますは目の前にいる白い少女、ウィンウィルの出会いはどんなだったか。
うん、そうだ。
あれはいつものようにエリオットたちが手入れをおしつけてきたときだったんだ――。
ちょっと話は昨日の昼にさかのぼる。
その日の仕事は近くの鉱山で大量発生したタッツェルブルムっていうトカゲのモンスターの討伐。
その依頼を終えてもどったら――。
「今度こそ明日の朝までに【攻撃補正】の【刻印】入れておけよ! テメェがやっておかなかったせいで、余計に手間取っちまったんだからな!」
「いや! だからもう無理だって! エリオットのこれはとうに限界を――」
BOOM!!
「いい訳なんか聞きたくねぇ! 時間のムダだ! いいからやっておけ! いいか明日の朝までにやっておけ! 必ずだ! さもなきゃテメェの分け前は無しだ」
「だとよ! 四の五の言わずにやりゃぁいんだよ! お前にはそれくらいしか能がねぇんだからな! カカカっ! たんまり金、手に入ったし今日は飲むぞ!」
「よろしく~……兄ちゃんいつもそれぇ」
くそ……好き放題言って、もう無理なんだって。
エリオットの〈ショットガン・アックス〉・【シルヴァラート】にはもう【刻印】を入れる面積がないんだ。
銃床のオノの部分から、銃口の先までびっしりと入れてある。
入れたのはもちろん僕。
「やらないとぶっ飛ばされるだけだしなぁ……仕方がないやるか……」
そして、いつものように納屋にほど近い酒場へ。
「クーンクーン!」
「キキ! いい子にしてた?」
その裏手に回ると友達のジャスパーフェネックのキキが飛びついてきた!
キキと出会ったのはこの町、ルチルタウンに来たときだから、もうかれこれ1年になる。
どうして『碧玉』がつくかといえば、よくは知らないけど。
『ジャスパー』のように色がいっぱいあるからじゃないかな。
キキはオーソドックスな乳白色だけど。
「さてと……やるか」
キキにごはんをあげながら、横で作業を始めた。
もうしょうがないので、一度全部、【消去】する。
消すのは簡単。
自分のような〈損壊〉の【烙印】持ちが、そう念じて、なぞれば消える。
銃は【サーマメタル】という特別な金属で出来て、【刻印】を入れると、それに適した形状に変化してくれる。
予定はこんな感じ。
<ショットガン・アックス・シルヴァラート>
【攻撃補正】――Lv15 初期値88(+8)→350(+262)
【命中補正】――Lv14 初期値84(+8)→329(+245)
【重量】――Lv8 初期値127oz→186oz(+59)
【会心補正】――Lv13 初期値1.9(+0.2)→3.2(+1.3)
【装填数】――Lv5 初期値7→11(+4)
【追加効果】――範囲攻撃
【追加効果】――起死回生!
これ、【装填数】を増やせるめずらしいタイプだけど。
合計Lv55までしかできないからこれが限界なんだよなぁ。
攻撃力を上げた分、重量が増やせないから、扱いにくくなるんだよなぁ………ハァ……。
え? この【追加効果】、起死回生って何なのかって?
えっと、これはクリーニングするたび【攻撃・命中・会心】の初期値が10%ずつ増えていく効果みたいなんだ。
僕もよくわらないんだけど、いつのまにか身についていた<スキル>なんだよね。
ようは毎日ていねいに使ってあげれば、どんどん性能が良くなっていくんだけど。
エリオットは時間のムダだとかいって、あんまりやらせてくれないんだ。
ああ、どうして〈損壊〉なのに、修理みたいなことが出来るって?
それが『務め』なんだよ。
【烙印】にはその意味とは逆の【力】があるんだ。
「ギリギリまでつめてやるしかないよね。もたもたしてると日が暮れちゃうなぁ……はぁ……骨が折れる……」
専用の彫刻刀とハンマーで、【刻印】を大急ぎで入れていく。
CLAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANK――ッ!!
「うわぉっ!? すっごい音! まるで人間削岩機っ!」
そんなこと言われたの初めてだ。
上から声がして見上げると――いきなり白い女の子が降ってきた。
「それに昨日、どうしてアタシの腕が落ちてるって分かったの?」
「ああ……あれね。腕の力が足んなさそうだったし」
「う……」
「【刻印】はおまかせで良いって言ってたから、そうしてあげた方がいいんじゃないかって思って入れただけだよ。それじゃぁ……僕はこれで」
「待って!」
あ、あぶなっ!
ガシッって急に腕をつかむから、危うく転びそうになった。
「どこ行くの?」
ほんと何なんだ。この子?
「いや、まぁ……さっき追い出されたから、キキといっしょにこの町から出るんだよ」
「はぁ!? 追い出された!? 町を出る!? どうして!?」
これって答えなきゃいけないことなのか?
でもこの子、手を放してくれなさそうだしな。
ハァ……しょうがない。
「手入れなんてその辺の店で安くできるようになったから、もう用済みなんだって」
「はぁ!? どこのどいつ!? んなこといったバカっ! ん? でもちょっと待って……っていうことはあんた今、フリーってこと?」
職を失ったことを『あなた今、彼女いないの?』みたいな言い方で訊いてくるんだなぁこの子。
こっちはそのことで傷心なのに……。
「……そうだよ。それじゃ、これで」
「だからちょっと待ってって言ってんでしょうが! これから新しい物語がはじまる感じで立ち去ろうとしてんの!?」
別にそんなつもりはこれっぽっちも無かったんだけど……。
「こんないたいけな女の子がお願いしていんだから! ちょっとぐらい話を聞いてくれてもいいじゃない!」
いたいけって……自分で言っちゃったよこの子。
まぁそれはいいや、ひとまずどっかに置いておこう。
それよりも、お願い? 何を?
いったいいつそんな話になったんだ?
「良かったらお兄ぃとお姉ぇのもお願いしたいんだ。もちろんその分お金も払うから!」
「お金もらえるだったら、喜んで引き受けるよ。ちょうど心もと無かったところだったんだ。この通り馬もないしね」
どうしてないかって?
どうもエリオットたちに隠されたんだと思う。
多分今ごろ売っぱらわれて金に変えられている。
「馬もなしに旅しようなんて、いくらなんでも命知らずでしょ」
仕方がないだろ。無いんだから。
「そうだ! 今行くところが無いっていったわよね? それだったらさぁ、いっそのことウチにくればいいじゃない!」
う~ん、どうも脈絡がない気がする。
だめだ。最初から正確に思い出して整理しよう。
というか、させてくれ。
しないともう頭がいっぱいいっぱい。
ますは目の前にいる白い少女、ウィンウィルの出会いはどんなだったか。
うん、そうだ。
あれはいつものようにエリオットたちが手入れをおしつけてきたときだったんだ――。
ちょっと話は昨日の昼にさかのぼる。
その日の仕事は近くの鉱山で大量発生したタッツェルブルムっていうトカゲのモンスターの討伐。
その依頼を終えてもどったら――。
「今度こそ明日の朝までに【攻撃補正】の【刻印】入れておけよ! テメェがやっておかなかったせいで、余計に手間取っちまったんだからな!」
「いや! だからもう無理だって! エリオットのこれはとうに限界を――」
BOOM!!
「いい訳なんか聞きたくねぇ! 時間のムダだ! いいからやっておけ! いいか明日の朝までにやっておけ! 必ずだ! さもなきゃテメェの分け前は無しだ」
「だとよ! 四の五の言わずにやりゃぁいんだよ! お前にはそれくらいしか能がねぇんだからな! カカカっ! たんまり金、手に入ったし今日は飲むぞ!」
「よろしく~……兄ちゃんいつもそれぇ」
くそ……好き放題言って、もう無理なんだって。
エリオットの〈ショットガン・アックス〉・【シルヴァラート】にはもう【刻印】を入れる面積がないんだ。
銃床のオノの部分から、銃口の先までびっしりと入れてある。
入れたのはもちろん僕。
「やらないとぶっ飛ばされるだけだしなぁ……仕方がないやるか……」
そして、いつものように納屋にほど近い酒場へ。
「クーンクーン!」
「キキ! いい子にしてた?」
その裏手に回ると友達のジャスパーフェネックのキキが飛びついてきた!
キキと出会ったのはこの町、ルチルタウンに来たときだから、もうかれこれ1年になる。
どうして『碧玉』がつくかといえば、よくは知らないけど。
『ジャスパー』のように色がいっぱいあるからじゃないかな。
キキはオーソドックスな乳白色だけど。
「さてと……やるか」
キキにごはんをあげながら、横で作業を始めた。
もうしょうがないので、一度全部、【消去】する。
消すのは簡単。
自分のような〈損壊〉の【烙印】持ちが、そう念じて、なぞれば消える。
銃は【サーマメタル】という特別な金属で出来て、【刻印】を入れると、それに適した形状に変化してくれる。
予定はこんな感じ。
<ショットガン・アックス・シルヴァラート>
【攻撃補正】――Lv15 初期値88(+8)→350(+262)
【命中補正】――Lv14 初期値84(+8)→329(+245)
【重量】――Lv8 初期値127oz→186oz(+59)
【会心補正】――Lv13 初期値1.9(+0.2)→3.2(+1.3)
【装填数】――Lv5 初期値7→11(+4)
【追加効果】――範囲攻撃
【追加効果】――起死回生!
これ、【装填数】を増やせるめずらしいタイプだけど。
合計Lv55までしかできないからこれが限界なんだよなぁ。
攻撃力を上げた分、重量が増やせないから、扱いにくくなるんだよなぁ………ハァ……。
え? この【追加効果】、起死回生って何なのかって?
えっと、これはクリーニングするたび【攻撃・命中・会心】の初期値が10%ずつ増えていく効果みたいなんだ。
僕もよくわらないんだけど、いつのまにか身についていた<スキル>なんだよね。
ようは毎日ていねいに使ってあげれば、どんどん性能が良くなっていくんだけど。
エリオットは時間のムダだとかいって、あんまりやらせてくれないんだ。
ああ、どうして〈損壊〉なのに、修理みたいなことが出来るって?
それが『務め』なんだよ。
【烙印】にはその意味とは逆の【力】があるんだ。
「ギリギリまでつめてやるしかないよね。もたもたしてると日が暮れちゃうなぁ……はぁ……骨が折れる……」
専用の彫刻刀とハンマーで、【刻印】を大急ぎで入れていく。
CLAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAANK――ッ!!
「うわぉっ!? すっごい音! まるで人間削岩機っ!」
そんなこと言われたの初めてだ。
上から声がして見上げると――いきなり白い女の子が降ってきた。
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