烙印を背負う少女を『救』うたった一つの方法

朝我桜(あさがおー)

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序章 さよなら! 『理不尽』な仲間たち!

第十一話 想像してみてください。行き『詰』まるかつての仲間の姿を……

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――鉱山の町トパゾタウンの酒場、吉報亭――

 オレの名はエリオット=ウォラック。

 今までの人生で、今日ほどムカついた日はねぇかもしれねぇ……。

「金がねぇだと!? どういうことだ!?」

 だから、ふざけたことをぬかしたエディの胸ぐらをソッコーでつかみ上げた。

「知らねぇよ! オレらはいつも通り使っていただけだぜ!」

「なんでそれで底をつく!?」

 くそっ!

 なんであの、無能のフィルのヤローがいなくなっただけで、ウチらが路頭に迷いはじめんだ!?

 おかしいじゃねぇか!?

「……兄ちゃん。たぶんフィル、ときどき牛飼いの仕事していたから、そのお金入れていたんじゃねぇかな?」

「なんだと……?」

 どういうことだ!? なんでそれを言わねぇ!

 くそっ! ムカツクぜ! いわねぇと余計な手間がかかるんだよ!

 あぁ! もう! クソっ!

 だからオレはあいつを切ったんだ!

「……チッ! まぁいい。どうせ今回の依頼で、またたんまり金が手に入るんだからな! おら! 銃を取りに行くぞ」

「待ってくれよ!」

 クソっ! オレには時間がねぇってのに!

 オレには野望があんだ!

 大陸中の全ての人間の記憶にオレの名を刻み付けるつーなっ!

 そのためには1分たりともムダにはできねぇってのに――クソッ!

「ウチでは無理だ。他をあたってくれ」

 まただ。

ガンスミスこいつ〉もオレの時間をうばいやがる!

 どいつもこいつも!
「はぁ!? ふざけんなよ! こっちは金をはらってんだぞ!?」

「ふざけているのはそっちだ! 20分の1インチの刻印だと!? できるわけねぇだろ!?」 

 カウンターにオレが渡した麻袋を叩きつけてきやがった!

 どういうつもりだ!

「それに<起死回生クリーニングアップブースト>だと!? そんなん出来るやつ、大陸に10人といねぇ、ウチで雇いてぇぐれぇだ!」

 なんだと、あのなよなよしたウスノロ無能のフィルが!?

「前やったやつは相当職人だったんだな! やってほしきゃそいつにたのめ! とにかくウチじゃできん! ほら、金なら返してやる! 銃も持っていけ!」

「こっちはそいつを切ってこの店にたのんでんだ! 今さら引き下がれねぇんだよ!」

「そいつは残念だったな! そんなやつを切るなんておたくら相当バカだねぇ」

「んだと!?」

 TCHAK――ッ!!

 TCHAKTCHAKTCHAKTCHAKTCHAKTCHAK!!!

「な、なんだこいつら! 裏からぞろぞろと! テメェの弟子か!?」

「ああ、そういうことだ。悪りぃな。ならず者の対応はこっちだって慣れてんだ。早くそいつを下ろさねぇと弟子たちの銃がてめぇらをハチの巣にするぜ?」

 また、5分もムダにした!

「もういい! 行くぞ! こんな店二度とくるか!」

「待ってくれよリーダーっ!」

 どいつもこいつもムカツクぜ。

 だが、まあいい。

 あの〈グリードウォーム〉とかいう大物を仕留めれば、オレの名声は大陸中に届くにちげぇねぇ!

 今は――1秒たりともムダにはできねぇんだ!



 とにかくオレたちは〈アンドラ坑道マイン〉に入った。

 オレたちならあっさり終わるはずだったんだ――。

 ――BAAAAN!!

 ――ZGAWAAAAAAAAAN!

「がっは……!!」

「ヴィニィィィーーーッ! リーダーッ! ヴィニーがやられた!」

「そんなことわかってんだよ!」

 どうなってやがる!

 こ、こいつ……あのヴィニーの図体をいとも簡単にふっ飛ばしやがった!

 DODODODODODODODODODODO――GOOOOOOOH!!

「くそっ! もぐってねぇで出てきやがれ!」

 ZUUUUUUUUUUBBBBBBBBB!!

「な……」

「でけぇ……」

 ようやく姿を見せやがったやつは、オレたちを静かに見下ろす。

 それが余計にムカついた!

 WOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAHH!!

「く、くたばれ! ミミズヤロー!!」

 BANG! BANG! BANG! BANG! BANG!

「なんで! なんでだ! なんでキズ一つつかねぇんだ! エディ! 弾を!」

「へい! あ、リーダーッ! 後ろ!」

「な――」

 ――BOGOO!!

 ――金もねぇ、〈ガンスミス〉には手入れを断られ、命まで取られるってか……。

 ――くそっ! どうしてこうなるんだ!

 ――くそっ! クソっ! ク……ソ……。







――トパゾタウン 近郊 デマン牧場――

 それから酒場のマスターから話を聞いた僕らは、グリードウォーム討伐に向けて、動きだしたんだ。

 え? 今、エリオットたちがどうしてるんだって?

 う~ん、自分もくわしくはしらないけど……。

 なんでもマスターの話だと、エディが二人をかかえて助けたこともあって、全員命に別状はないみたい。

 まぁ、幸いというか、しぶといというか、なんというか。

 自分としてはもう特に思うところはないし。

 フツーに無事でよかったねとか、そうですかって感じなんだけど。

 だってもう自分にはどうすることもできないし……。

「フィル! そっちいったよ!」

「うん! まかせて!  YEEEEHAAAAW!!」

 ん? おかしな声をあげて何やっているんだって? 失礼な!

 今日は近くの牧場で、放牧の手伝いをしているんだよ。

 資金調達をかねてね。

「どぅどぅ!」

 具体的にはロープを投げて、牛をつかまえて、荷馬車に乗せる。

 これを10頭やらなきゃいけない。

 んでこれで最後。

「フィル、すごい! アンタ牛飼いの才能もあるんだね」

「子供のころからやっていただけで、別に大したことじゃないよ」

 牛を引きずって、荷馬車に乗せる。あとの鉄道までは牧場主さんの仕事。

「助かったぜ、ありがとうよ。礼だ、ウチでメシ食ってきな!」

「わぁ! ありがとう! おじさん!」

 ありがたい!

 せっかくなので夕食をごちそうになることに――。

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