烙印を背負う少女を『救』うたった一つの方法

朝我桜(あさがおー)

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第一章 『無能』のレッテルを貼られた僕がいかにして英雄と呼ばれるようになったか?

第二十話 バイオレンスを『チャンス』に変える!? 鬼気迫る一言っ!?

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――モルガバレー 町長宅、モルガシャトー前――

「うわぁ、すっごい高い門扉だね、ね? ウィン?」

「ソウダネ」

 SWIFF!

 話しかけるとものすんごい距離をとられる。

 ハァ……。

 この間からずっとこんな感じによそよそいいんだ。

 まぁ、悪いのは自分なんだけど。

 ウィンに自分のキモチを聞かれてしまった。

 それも余計なひと言を付け加えられたカタチで……。

 とりあえずウィンのことは後で考えよう。

「お待ちしておりました。ワタクシは当家の執事、セヴァスチャンと申します。どうぞ中へお入り下さい」

 ゴリゴリのおカタそうな執事が出てきた。

 立派な口ひげ。

 けっこうガタイがいい。

 あれかな? 用心棒をかねているのかな?

「すっごいお屋敷……見て! 庭に噴水がある!」

「おいおい! そんなのよりこっち見てみろよ! ライオン! ライオンがあるぜ!」

「バ、バカ! なんてこと! 乗ってんじゃないわよ! 壊したらどうすんの!? おとなしくしてなさい!」

 ハァ……アニキ……。

 上に乗るかフツー。

「クーン……」

「ありがとう。キキ、なぐさめてくれて……」

 ともかく、僕はセヴァスチャンさんに少し聞いてみた。

「ところで、なぜ腕の立つ、それも女性の賞金稼ぎバウンティ―ハンターを探していらっしゃるんです? 酒場の主人からは特に何もうかがっていないもので」

「そうでしたか、それはこの後、主人の方からご説明があります。では、ここ、中で主人がお待ちです。どうぞ中へ――」

 重々しい扉を開かれ――。

「美しい……どうか、わたくしめと結婚してください」

 リリー姉さんの目の前でひざまずいている美形の男が――。

 SWING―――GONK!

「ぶふぁぁぁ――っ!!」

 PLIRR!!

 窓ガラスを突き破って外に消えました。

「フ、フレディさまぁぁぁぁぁ-----------------っ!!」

 セヴァスチャンさんが飛び出していく。

「あ! つい、体が勝手に――」

「リリー姉ぇのフルスイング、久しぶりに見た。けっこう飛んだねぇ」

「今となってはなつかしいぜ。数か月前までオレもかっとばされていたからなぁ」

「遠い目をしてるんじゃないわよ! もとはといえばあれはレヴィンが――」

 なんだなんだ?

 こういうバイオレンスなこと、初めてじゃないの?

 なんなんだこの一家。




 改めて。

「私は、この町で町長をしております、この家の当主フレディ=ヴァン=モルガンと申します。いやぁ、聞きしに勝る強さだ。これなら任せてもいいと思わないか? セヴァスチャン?」

「まったくもってその通りでございます」

 な、なんでこの人、目と歯が光るんだ?

「あっそ、んなことどうでもいいからよ。さっさと要件にうつれよ」

 なんだかアニキ、機嫌悪そう。

 まぁ、わからんでもないけど。

「そうですね。お気づきでしょうか? この町、若い女性がいらっしゃらないことを」

「それはまぁ……」

「最近、町の女性が忽然こつぜんと姿を消すという事件が立て続けに起こっていましてね。実はそれを解決していただきたいのです」

 はぁーん、なるほど読めたぞ。

 女性で強い賞金稼ぎバウンティ―ハンターならオトリと戦いの両方できるって思ったんだ。

「実は当家のメイドもさらわれてしまいまして、謝礼ならこれだけ用意できます」

 すっとテーブルに置かれた小切手。

 そこに書かれていた金額はなんと!

「い、1万ノル!?」

 す、ごい大金!

 え? 大した額じゃないって?

 考えてみて、僕らの泊まっている宿、1日2ノル5ネントなんだよ!

 4000日泊まれるってことだよ!?

 でも、あれ?

 そういえばあの宿屋の女の子ミシェルは無事だったけどなんでだ?

 まぁ、たまたまってこともあるか。

 たださぁ~。

「どうでしょうか? 引き受けてくださいますか?」

「リリー姉ぇ、受けようこの仕事! だって1万ノルだよ! 1万!」

「ええ、そうね! 少し危険だけど」

「ちょっとまってよ二人とも。僕は二人が危険にさらされるような仕事はあんまりしたくないんだけど。ねぇアニキ、アニキはどう思う?」

「……オレもあんまやりたくねぇな」

「どうしてよ? というか、レヴィン、さっきから変よ? なにへそ曲げてるのよ」

「別にへそ曲げてなんか……ああ、もうわかった! 好きにしろよ!」

 えぇ……。

 まぁ、こんな大金が得られるチャンスめったにないけどさ。

 でも、どうしちゃったんだろうアニキ。

「フィル、後で話したいことがあるからちょっといいか?」

「え? あ、うん、別にいいけど」

「なに? 男同士で変な感じ」

「うるせぇな、ほっておけ」

「ところで――」

 さらっとミスターモルガンのブロンドの髪が風もないのになびく。

 どうも最近の自然法則はサボリ気味らしいね。

「さっきの返事聞かせてもらえないかな?」

 ダメだ、この人、ぜんぜんこりてない。

「んふ……また、ぶっ飛ばされたいですか?」

 うわぁ……。

 すっごい満面の笑み。

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