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第二章 思わぬ『ライバル』登場で、いよいよ二人の間は急接近!? 浮かび上がる彼女のホントのキモチ!!

第二十七話 かつての仲間の『新情報』! そして僕たちはまた『一歩先』へ!

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――ユークレースタウン ウォラック興産一行――

「おいっ! 見つかったか!?」

「いや、こっちにはいなった。情報じゃここ辺にいることはまちがいない!」

「ああ! とにかくさがすぞ!」

 オレたちは物カゲにひそんで保安官たちをやり過ごした。

「……ハァ……ハァ……なんで、こうなる!? なんでオレたちが逃げ回らなきゃならねぇっ!?」

「リーダーがあのあやしいジジィの言いうことなんて聞くからだろ!」

「兄ちゃん! あいつらまだ探しているよ……」

「くそっ! あのジジィ! どこが簡単な話だ! だましやがって!

 あのアルカージイとかいうジジィは、このを自分の手元からぬすまれたって言っていやがった。

 それをこの町の町長の家から取り返してきたんだが、保安官が来るわ来るわ。

 追っかけまわされてもう二日経つ。

 今日、町はずれでジジィと会う手はずになってる。

「チクショー……あのジジィ、ぜってぇぶっ殺してやる!」

「リ、リーダー! これ見てくれ!」

 エディのヤローが地面に落ちていた紙を拾い上げて、オレにつきつけてきやがった。

「なんだぁ……こ、こいつは!」

 オレの手配書だとっ!

 賞金、2万ノル!?

「ふざけんなっ!」

 BRRRRRRRRRRRRRZ!!

 オレは破り捨てた!

「ひとまず、夜までやり過ごせば――」

「いたぞ! こっちだっ!」

「やべっ! 見つかったっ!」

「ずらかるぞ! ヴィニー!!」

「待ってよ! 兄ちゃん!!」

「あ! コラっ! 待てぇ!」

 くそっ! ぜってぇ! あのジジぃ!

 ブッコロシテヤル!!





――カルサイトリコ手前 スパー高原――

 エリオットたち、いったい何やってんだか……。

「フィ~ルゥ~、 ランチできたよぉ~ あれ? 新聞? さっきの町で買ったの?」

「……うん、まぁね。ミシェルが強盗が出たって話をしてたでしょ。だから一応情報を集めておこうと思って」

「ふ~ん」

 ……ハァ……まだおこってるよ。

 ミシェルの名前を出すと、最近すごくフキゲンになるんだよなぁ。

 モルガバレーを出てからもう3日も経つのに……。

 僕たちは今、港町カルサイトリコに向かってる。

 多分着くのは、あと半日って言ったところかな。

「それで、つかまったの? 強盗って?」

「まだみたいだよ。賞金2万ノルだって、あの人たち逃げ足だけは早いからね」

「あの人たちって……あぁ、また前の仲間がやらかしていたんだ。こりない人たち……」

「クィーン! クィーン!」

「キキ、おなかすいたって? そうだね。とにかく今はランチが先だね」

「うん! ほら! 行こっ!」

 以前仲間だったということで、保安官から事情を聞かれるって思っていた方がいいのかも。

 推理小説でさ、よくそういう展開あるじゃん?

 まぁ、ウィンたちに危害がなけばなんだっていいんだけど。

「イシシ、今日はアタシが作った自信作だよ!」

「やったぁー!」

「リリー姉ぇに教わってだいぶうまくなったから期待してね! レヴィン兄ぃが見返すために、かなり練習したんだから!」

「え? 今までのだって十分おいしいかったけど?」

「……うん、そう言ってくれるのはうれしいんだけど、フィルの舌ほんとバカになってるからね」

 う~ん、そうなのかなぁ~。



 それからアニキが、失礼にも「フツーだ……」と絶句したウィンのランチをおいしくいただいた後。

 僕はなぜかウィンに話があるって言われて連れ出されたんだ。

 いったいどうしたんだろう。

 いきなり態度が変わるんだもんなぁ。

 僕の心はふりまわされっぱなしだよ。

「見て見て! フィル! あれマーブル・バッファローの群れだよ! おいしそうだね~」

「う、うん」

 とても女の子のセリフとは思えないけどね。

「それでどうしたの? 話って?」

「とりあえず座ろ? 最近なんだかかんだゆっくりできなかったからさ、いいじゃん、たまにはさ」

 丘の上でマーブル・バッファローの群れをながめながら、二人きりの時間を過ごす。

 なんかドキドキする。

「いつまで、こうしてるの?」

「う~ん、2時間ぐらい? たまにはしばらく二人っきりにさせてあげようよ」

 ああ、そういうこと。

 なんだ。だったら最初からそう言ってくれればいいのに。

「ねぇ? フィル? フィルはアタシのことどう思ってる?」

「それは……」

「イシシ……ごめん、イジワルだったね。アタシのこと時々イヤラシイ目で見てしまうくらい好きって言ってくれたもんね」

「う……」

 それこそイジワルだ。

「でもさ、アタシ、死んじゃうよ? フィルより先に」

「うん、だからウィンを死なせないために旅をしているんでしょ」

「わかってる。わかっているんだけど……もしかしたら、【烙印スティグマ】を消す方法なんてなかったりするかもしれないじゃん」

「……」

「だとしたらさ……好きになってくれてもさ、やっぱりほら、ね」

 不幸になるかもしれないとウィンは言った。

 さすがに僕も、ウィンがやんわりと断るつもりなんだっていうことがわかったよ。

「それでも僕は、ウィンのこと好きでいたい、むしろさウィンの方は僕のことどう思っているの?」

 まぁ、ホレられていないっていうことはほぼないだろうね。

 腕っぷしはないし、美形ってわけでもないしさ。

 自分でも笑っちゃうくらいホレる要素が見当たらない。

「……も、黙秘権を行使ます」

「え? 黙秘? どういうこと? まさか、それ――」

 びっくりして、横をみたら、ウィンは少しふるえていた。

 寒いからっていうわけじゃなさそう。

「ホロロ……」

「キキ……ありがとう」

 いつのまにかキキがウィンのほほにすりよっていた。

「ごめん、どうしてもね。たまにね、こわくてどうしようもなくなるんだ……だから、それはまた今度……」

「ウィン……」

 もう本心を聞けるような状態じゃないな。

「ごめん、ちょっとだけ……今だけ、肩を貸して――」

 正直、抱きよせることぐらししかできることはなかったよ。

 もちろん動揺した。

 いつものイタズラな女の子は、そこにはいなかったからね。

 いるのはたった一人のさびしがりやでいたわしい女の子だったから。

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