オタクニートの受難

沖葉由良

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第一章

第七話

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 重苦しい空気の中、藤咲がようやく口を開いた。


「…中城さん」

「なんだよ」

「私は、この更生期間が終わってもあなたと離れたくない…と思っています。生半可な気持ちであなたを抱いた訳では無い…と伝えておきたくて…」

「……それで?」

「え?」

「それは、機関が許さないんじゃないのか?」

「そ、それは…」

「辞めんのか?」

「……」


 俺の質問に黙り込む藤咲。仕事には誇りを持って取り組んでると俺は普段の藤咲を見て感じていた。
 たった数ヶ月の付き合いだが、今の俺があるのはコイツのお陰だと思ってる。兄弟との仲が昔のように戻ったことも、親からの視線が以前よりもずっと柔らかく優しいものになったことも、少し前までの俺からすれば有り得なかったことだ。
 こうなる前は胡散臭い所に目をつけられたと思ったが、今では感謝している。だからこそ、機関が規定しているルールが被験者との関わりを絶つことなら、更生期間が終わっても…というのはルール違反になる。それは、今後この機関が存続していくためには負の遺産になる。
 俺は、それだけは避けたかった。だから、藤咲が俺とのことを真剣に考えると言うなら、そのくらいの覚悟はあるんだろう、と確認したかったのだ。しかし、黙り込むってことは、そこまでは考えてなかったんだろうな…。


「俺は別に、お前を責めるつもりはない。今後、ニート更生機関が俺にどんな判断を下したとしても、俺はそれに従うだけだ」

「…わ、私は…」

「藤咲にどうこうしろと求めるつもりもない。逃げるなと言うなら俺は逃げない。会いに来るなら来ればいい。だが、お前の行動ひとつが機関の今後を左右するということは忘れちゃいけない」

「…中城さん、そこまで我々のことを考えて…」

「俺は、多分お前のこと…好きなんだと思う」

「っ!」

「だけど、俺が好きなのは仕事に打ち込んでるお前だ。真剣に相手のことを考えて、色んなことに真剣なお前だ。だから、お前が…」

「ありがとうございます、中城さん。おかげで色々吹っ切れました」

「…藤咲?」

「大丈夫。逃げないでいてくれるなら、は無敵だから」

「…?」


 俺の不安とは裏腹に、スッキリしたような顔で俺を見つめる藤咲はいつもの数倍かっこよく、思わず見とれていたが俺はこの時、藤咲が何を考えているのか全く分かっていなかった。
 藤咲の一人称が急に変わったことも、何かを決めたような顔も、この胸のザワザワ感も、何が…とは言えないが、不安が募った。
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