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都立冨澤大学附属高校 

俺の恐怖心 湊side

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《高校入学前 ・4月》

自身の部屋を出て、隣の部屋の前に立つ
インターフォンを押す瞬間
ヒヤリと胸が冷え込むのを感じる

ゴクリと唾を飲み込むと、
カタカタと手が震える

俺は晴臣くんが大好きだ

しかし、男が苦手なのも確かだった
中学の一件以降、知らない男性には上手く関われなくなった

晴臣くん以外の人間は皆消えてくれれば安心して生活できるのに…と
割と真剣に思う程には苦手だ

だが、高校に入学して絶対に
晴臣くんと友達になる為にも
まずは自分の友達も作るべきだし
友達に慣れとくべきだと分かってる

耐えろ、俺
指先に力を込めてインターフォンに触れたか否かの所で

ガチャリと扉が開き、顔を出したのは
ピンク色の頭をした自分より少し背の高い男だった

「わあ!びっくり!何々?僕に何か要かな?」

本当に驚いた様で、俺は顔をまじまじと見つめられ、心臓がドクドクと早まるのを感じる

ダメだ、こんなんじゃ不審がられる
焦れば焦るほど、口の中が乾燥して
言葉が出てこない

湊は何度か口をパクパクさせた後
絞り出す様な声で袋に入った茶菓子を目の前のピンク頭の男に向けて差し出す

「あ…あ!あのコレ…」

条件反射のように受け取った
ピンク頭は困ったような顔をして
俺の顔を覗き込む

俺の心は今すぐにでもその場を立ち去りたいのに、震える足が一歩も動こうとしない

「えーと、これは告白?」

意味のわからない沈黙を破ったピンク頭の台詞に俺は衝撃波を喰らったようだった

「!!ち、ちが!」

な!何を馬鹿なことを言っているんだこの男は俺は男だぞ!と自分の事を棚に上げて心の中で非難すると共に、

慌てて、隣の自分の部屋を指差した

「ご、ごあいさ、つを」

頼む、伝わってくれ
心の中だと本当に流暢に言葉が出てくるのに
上手く喋れない自分が本当に嫌になる

ピンク頭の彼もきっと
突然変な男に押しかけられ、
茶菓子を押し付けられ、
変な告白紛いな事をされ
気持ち悪いと思っているのかもしれない

ああ、友達になりたかったのに
今後ペアを組む事だって多いはずなのに
初日の今日、終わった、のかもしれない
俺の寮生活が…

俺は顔を伏せ、立ち尽くしていた

「…ああ!もしかして202号室の人?!
初めまして!僕は早乙女 廉 宜しくね」

俺の手を掴み、ブンブンと振るいニコッと笑う彼はどこか中性的で
俺はどこかホッとして視界がボヤけた

「おい、どーした?えーと名前きいても?」

手を握られたまま、俺は

「さ、さえき、みなと。よ、よろしく」

と乾いた口でゆっくり伝え
ブンブンと廉くんの手を振った

「ーーー!僕、お返しの用意なくて!もし、湊が嫌でなければ、入学式のお昼、ご馳走させてくれない?」

目を細めながら、笑いかける廉は
握られた手をゆっくり揺らした

嬉しい!!!
湊は驚きつつも、勢いよく頭を振った

その姿を見た廉は満足げに、湊に手を振る

湊は軽く会釈をしたあと、
真横の部屋に戻った
湊は感動していた
友達1号(予定)を早くもゲットできた事を嬉しく思いながら、

実は不安に思っていた入学式当日に蓮くんは俺とお昼を一緒に食べてくれるつもりだという

こんなに優しい人間がいたのかと感動を覚えた湊は胸を躍らせて床につくのだった









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