あの子の花に祝福を。

ぽんた

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44.影のハチさん。

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 正直な所、もっと寂しくなるのかな、って思ってた。

 でも、全然。

「幸せだぁ…。」

「ふふ、良かったですね、ルカ様。」

「えへへ、母様達、よく会いに来てくださるからお屋敷にいた時よりも会ってる気がする。」

 王宮の直ぐ側にあり、ここからゼインのいる執務室の場所が見える、公爵家とは比べ物にならないくらい広い庭でお茶をしていた。

 今日は週末で、学園はお休み。家庭教師の先生も来ない日だ。

「こんないい天気なのに、ゼインはお仕事だぁ…。」

「以前から忙しかったようですが、今は更に拍車がかかっているようですね…。」 

 やっぱりルイスもそう思う?

 僕はまだ子供だから、大人の世界には踏み込めない。
 将来王族の仲間入りをするけれど、過保護なゼインのことだから、僕を守ろうとして社会の汚い部分を見せないように動くはず。

 うーん…でも、子供だからって守られるばかりは良くないよね。だって、公爵家の子供だし。

「ちょっと、見に行ってみよっか!行こう!ルイス!」

「え?殿下の所にですか?」

「うん!こっそり見に行って、何がゼインを忙しくさせてる原因なのか調べるの!見つからないようにするんだよ!」

 そうと決まれば善は急げ!

 ゴクゴクはしたないけど、カップに残った紅茶を飲みきって、ハンカチにどうしても食べたいクッキーたちを包み走った。

「ルカ様っ!お待ち下さい!」

 後ろからルイスも着いてきてる、よし!

 頑張ってゼインを助けるんだ!









「………それで?仕事内容を盗み見ようとして天井裏に登ったのは良いものの、降りれなくなって助けを求めたと?」

「ふぁい……。」

 僕は今、ゼインとルイスからお説教を受けています。

 原因は、僕が執務室の天井裏に入ったはいいものの、暗いし出口も分からなくなるしで真下にいるゼインに助けを求めたことです。

 城内を走っていると、親切な使用人さん?あまり見ない服の人が僕の話を聞いてくれて、こっそり見てもバレない場所への行き方を教えてくれたのです。

 ただ、帰り道を聞くのを忘れていた…。

 ルイスは僕がその人と話す少し前からはぐれたみたいで、目の前で腰に手を当てながらゼインと一緒に怒ってる…。

「誰が教えてくれたの?大体わかるけれど。」

「わかんない…えと、服は全身真っ黒で、使用人さんたちとは違ったの。
 でも、なんとなく…騎士さんと近い雰囲気?の人だったよ。
 それで、ながーい黒髪を頭の上で一つにくくった美人さんだった!」

 するとゼインは天を仰いで、ぼそりと『やっぱりか…』と呟いた。

「………ルカ様。」

「ひゃいっ…!!!」

 ルイスが鬼みたいな顔してる…!!

 ガクブル震えていると、目の前からはぁっ、とため息が聞こえてびくぅっとしてしまった。

「貴方を見失ってしまった私も悪いですが、知らない人について行っちゃ駄目です!
 ここは王城とはいえ、何があるかわかりません!以前あったことをお忘れですか!
 たまたまその人が悪意を持っていなかっただけで、恐ろしいことになっていたかもしれないんですよ!」

 ルイスの言うことはもっともだ。
 誰も6年前の事件を忘れたわけではない。
 あの事件があってから、ここのセキュリティは母様達の手を借りて極限まで強化したと聞いたけれど。
 それでも油断はしちゃいけなかった。

「ごめんなさい…。」

「…………もう、今度からは気をつけてくださいね。私も側にいるときは気をつけていますから。」

「はい…。」

 そしてお説教は終わった……と思っていたら。

「ルカ、これでしょう。天井裏に案内した人間は。」

 ゼインの側にはいつの間にか、さっきの親切な人が立っていたのだ。

「あっ、さっきの人!」

「ふふ、降りれなくなった時の貴方様はとてもかわ…興味を引かれました。
 改めまして、ゼイン殿下付きの影、ハチと申します。」

 ジトーっとゼイン、ルイスに見られている中、堂々と自己紹介したハチさん。

 ん…?影…?

「影って、隠密みたいな?」

「はいそうです。さすがルカ様、よくおわかりになりましたね。」

「おい、私はお前にルカを愛称で呼んでいいだなんて許可はしていない。」

「これは失礼しました。」

 目の前で言い合っている最中、僕はとてつもなく興奮していた。

 影って、つまりは忍者ってことなんでしょ?!

 だから天井裏への行き方を知ってたんだ!!本棚にある一冊の本を動かしたら、棚が動いて階段が出てきてびっくりしたもの!

「まぁ、ルカが私を心配して、手伝ってくれようとしたのはわかったよ。ありがとうね、ルカ。」

 ゼインは、ただ、と続ける。

「こればっかりはルカを巻き込めないんだ。他の仕事なら、将来のために少しずつ手伝ってもらっても良かったんだけど。」

 むぅ…、やっぱりゼインは過保護だ。
 仕方ない。確かに今の僕では何の力もないただの12歳だもん。もうすぐ13だけど。

「そんなにほっぺを膨らませても駄目。」

「いいもん、別に。今日からベッドは別々で寝るもんね。」

「ルカ……。」

 仕方ない、仕方ないんだ。

 ゼインは大人で、僕は子供だもの。

 ただ魔法が上手いだけのお子様。

 ゼインが僕を守りたいのは分かってる。

 でも、僕にだって守らせてほしいし、頼ってもほしかった。

 静かについてきたルイスを伴って、執務室を出た。
 ハチさんはニヨニヨしてたのが気になったけど。

 ふん!今日からはあの大きなベッドで一人寂しく寝るがいい!僕を頼らなかった事を、後悔するんだ!










 ※※※※※※※




 ちなみに補足ですが。

 ルカくん、貴族の子供としてはっていうか、この年代の子供にしては随分子供じみてるでしょう?

 言動が幼いっていうか、楽観的というか。

 ちゃんと理由がありまして。

 まあ前世の虐待が心に傷をふかーくつけているので、防衛反応のようなものです。

 色々考えると良くないことまで思い出すので、お気楽?みたいな感じで物事を深く考えない傾向があります。

 そのほうが嫌なことを思い出さないのでね。

 それと、前世で得られなかった愛情を、今世でたくさん受けているので、どうしたらもっと愛してもらえるかというのを無意識下で考え、編み出したのがこの性格。

 甘えたで、自身の魅力を最大限活かしたものになってます。

 まあ本当にね、脳が判断して動いてるんじゃなく、体がそう動くようになっちゃってるというか。

 まあ可哀想な子ですね。

 でもちゃんと元の性格も、可愛らしい子だとは思いますよ!知らんけど!





    
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