あの子の花に祝福を。

ぽんた

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45.傷つけたくない。

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 結論…夜のひとり寝はとても寂しかった。

 ここに越してきてからというものの、僕が学園に行ってたり、ゼインが仕事をしている間以外は常に一緒にいた。

 夜はもちろんゼインの部屋にいるし、ゆっくり紅茶や本を読むときだってゼインの部屋。

 僕にあてがわれたはずの部屋を使わないのだ。

 だから、今晩一緒に寝るはずだったけど僕は自分の部屋で、一度も使われていないベッドに横たわったのだ。

 ちなみにゼインは仕事が長引いたらしく、晩御飯も一緒に取れなかった。

 彼とご飯を食べないなら、と、国王夫妻とケイジスお義兄様、エスターお義兄様と久しぶりに食事を取ったが…。

『やっぱり寂しいかい?』

『ふふ、顔に出てるよ、ルカくん。』

『悪いなぁ、あいつは根を詰めるのが好きだからさ。俺からも言っておくよ。』

『ルカくん大好きなゼインさんがここまでになるなんてね…。なるべく僕達も手伝ってはいるんだけど…。』

 なんて、皆から言われて。

 エスターお義兄様も、これだけ忙しそうなのは心配みたい。

 でも、多分。晩御飯も一緒に食べないのは、僕が一方的に怒ったから…。

 あんなこと言わなきゃ良かった、そうベッドの中で悶々としていると。

 キィ…と静かにゼインの部屋と繋がっているドアの開く音がした。

 咄嗟に寝たふりをしてしまって、ゆっくり近づく足音を聞いていると、

「もう、寝たか……。昼間はごめんね、どうしてもルカだけは巻き込めないんだ…。
 君が子供じゃなくても、きっと私は手伝ってもらうことはできない。
 ごめんね……。頼ってほしかったんだよね…。」

 小声で謝りながら優しく頭を撫でられ、僕は罪悪感に苛まれる。

「………おやすみ、私のルカ。」

 こめかみにそっと落とされるキス。

 もう夜遅いのに、そんな時間まで仕事をして、挙句の果てには僕の我儘。

 扉に向かうゼインの袖を掴んだのは、ほぼ無意識だった。

「ルカ…?起きてた、の…?」

「あっ……あ……えと…その…。ごっ、ごめんなさいっ…!」

 きっと、泣きそうな顔をしていたんだと思う。ゼインが慌てて僕を抱きしめたから。

「ど、どうしてルカが謝るの…?」

「だって、ゼイン、忙しいのにっ…!僕がわがまま言って傷付けちゃったからっ…!ごめんなさい…!」

 半泣きでそう言うと、彼は愛おしげに微笑んで頬にキスをする。

「あんなのわがままに入らないよ。

 …ルイスから聞いたんだ。いつもルカ様が心配そうに殿下のことを話していますって。
 それから、事あるごとに何か自分にできることはないかと探しているみたいだって言ってたから。

 …ただ、今回は駄目なんだ。どうしてもね。
 気持ちだけありがたく受け取っておくよ。」

 これだけ、どうしても駄目だというのなら、何か僕にとって良くないことが起きてるということ。

 それくらい、僕にだってわかる。

 それは想像もつかないけれど、きっと僕が傷ついてしまうものなんだ。

「うん…わかった。それからごめんなさい、一緒に寝ないなんて言っちゃって。」

「ふふ、いいよ。だけど、今度からはそんなこと言わないでね?そうじゃないと、私は寂しくて死んでしまいそうになるから。」

「う、うん!」

「じゃあ、今夜も一緒に寝てくれる…?」

「うん、うん…!」

 安堵したかのように彼は微笑むと、僕を宝物のようにそっと抱き上げ、ゼインの寝室へと運ばれる。
 そのままベッドへ優しく降ろされて、共に横たわった。

「ふふ、やっぱり一緒に寝られるのは幸せだね。」

 シーツにこっぽり包まった僕達は、くすくす笑い合いながら手を握り、その温かさを大切にしながら夢の中へとたび立った。
























 ✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿✿
























 ~ゼインSide~



 すー、すー、と可愛らしい寝息が目の前の半身から聞こえる。
 この世の穢らわしいことを知らぬ、清く美しい天使。
 あの方が仰っていたことも、よくわかる。

 あれはルカが王宮へ越してきて直ぐだった。






 いつも通りルカと眠っていた時のこと。

 目を覚ましたら、いつかのルカの母君と話した森の中にいたのだ。

 だが、そこにいたのは知らない人で。

「貴方は…」

「俺は…そうだな、ルカの母親の夫だ。生物学上の父親ではないが、心の中ではあの子を息子だと思っている。
 まあそれはいいのだ。
 今日はお前に報告すべきことがあってな。」

 体躯の良い、そこにいるだけで威圧感のある美丈夫がいたのだ。しかもその方は母君の夫だと言う。

「は、はい、なんでしょうか。」

「少し前に、お前のいる世界に闇を詰め込んだような人間が召喚された。……ルカの前世兄である、田嶋瑠衣だ。」

 ルカの、前世の兄。

 惨い虐待を与えた人間。

 その人間のことを聞くだけで、怒りに身を任せてしまいそうになる。

 そいつが、この世界に来ただと…?

 やっと、あの子が前世を忘れられそうになっている時に…?

 そんなの、駄目だ。許せない。なぜ今になって私達の世界を壊そうとするんだ。なぜルカを苦しめようとするんだ!

「落ち着け、人間。これはそちらの世界の神が仕組んだことだ。」

 は…?私達の世界の、神…?

「どういうことでしょうか。」

「はぁ…すまないな。もっとお前達に会わせずに地獄を味合わせる方法があったはずなのだが。 

 そっちの神がストーリー?を大事にしたいとか言い始めて…。あいつは人情あるタイプだったからそちらの世界にはやらないのだろうと思ったんだ…。

 だが蓋を開けてみたらこのザマ。
 俺はもうそちらの世界に干渉できるほどの力は無いし。
 万が一にもルカが傷つくことは無いと保証しよう。身体的にはな。

 だが瑠衣がそちらに行ったことによって、それを知ったルカがどう反応するのかわからない。
 …なるべく、知らせないようにしてくれ。

 それから、そいつが召喚された国はミヌレ。お前の国と敵対…いや、ほとんどの国と関係が良くないだろう?
 …良くないことが起こるぞ。」

 私は一体どうすればいい?

 どうすればルカを傷付けずに済む?

 どうすれば瑠衣という人間を、ミヌレを潰せる?

「……ご報告ありがとうございます。こちらでも早急に調べ、迅速に潰せるよう尽力いたします。」

 すると彼は鷹揚に頷き、

「迷惑をかけて済まない。…こちらの神は、根は良いやつなんだ。
 ただ稀に『雨降って地固まるってやつよ!』とか言いながら変なことをするんだ…。

 だが、あいつもルカを気に入っている。間違っても瑠衣に身体を傷付けさせることはないからそこは安心してくれ。」

 この言い様は、おそらくこの方も神なのだろう。
 言い方だけでなく、立ち姿からも人間のそれとは思えないようなものが漂っているからな。

「畏まりました。」


「ああ。眠っている時にすまない。それから、妻から伝言だ。『瑠夏を苦しめた事はこれからの行いで償いなさい。』だと。」

「……はい。ルカにしたこと、大変申し訳ないと思っています。」

「ふは、それくらい反省していたら良いだろう。ま、これからもルカをよろしく頼むな。」

 穏やかな、父の顔をした彼がそう言うと、私が返事をする前に意識は沈んでいった。





 そういうことがあって私はこの子に何も言えない。

 今度は絶対に傷つけたくないのだ。

 だから、この件が終わるまで、この子の護衛と影を増やし、危険から遠ざけないと。

 だが今回のハチ。あいつは一体何を考えているんだ…。

 まあ、今はいい。この子の寝顔を堪能してから寝よう。

 もうずっと共に寝ているからか、私の欲望は我慢をし続けている。愛しい者を前に我慢するのは辛い、が。

 この子を再びあの時のように傷つけたくないからな…。

 真綿に包むように大切にしたい。

 ……おやすみ、ルカ。







 ※※※※※※※※




 土日更新しなくて申し訳ない!

 土曜日は寝落ち、日曜も寝落ち。

 すみません(´;ω;`)

 ス◯ラトゥーンのフェスをガチってまして…。

 いつもフ◯カちゃん陣営なのですが、今回は白インクに魅了されてそちらに…。

 いや可愛い!白インク!ちょっとクリーム色ですけど。

 そして楽しい!リッ◯ー楽しい!

 はい、すみませんでした。

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