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14 怒り
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「父上…。今、帰りました」
寄宿学校の長期休暇に伴い、ヒューゴがグラジオラス公爵邸へ戻ってきた。
「あぁ…。寄宿学校の生活はどうだ?」
「変わらず、順調です。今学期の成績は試験で一位をとれましたし…」
「そうか…。他にないか?」
「別段、ご報告することは…」
少し見かけない間に大人びた顔立ちになったヒューゴをシリルは直視した。
身長もかなり伸びている。とっくの昔に母親であるメラニーの背を追い越したようだ。
昔は体の線が細かったのに逞しくなっている。
「あれから…」
背後に待機していたスミスが、シリルの対面の椅子を引くとヒューゴに座るように指示する。
ヒューゴは話が長くなりそうだと内心うんざりしたが、おくびにも出さず促されるまま腰掛けた。
「はい、何でしょう?」
「メラニーがこの家を出て行ってから…。お前は母と連絡を取っているのか?」
唐突にシリルはメラニーの現状を尋ねてきた。
母がこの家を去って何年も経つというのに…。今になって何故…。
ヒューゴはシリルの表情を探った。
堀が深く美丈夫な父だが、年齢を重ねて顔立ちへ陰影が目立ち始めた。深みが加わり渋さが増している。
「父上と離婚されても、私の母には変わりませんから…。ですが、母上にというより…。妹へ近況を確認していると言った方が正しいかもしれませんね…」
ヒューゴはメラニーへ手紙を綴っていた。
返事は素っ気ないもので…。
『こちらは元気にしております。貴方は私に煩うことなく勉強に励み、友人を作り、学生時代をを謳歌なさい…』
それでも、ヒューゴはメラニーへ便りを送り続けた。母の返答は一語一句も変化はなかったが…。
そのうち、妹のエヴァのたどたどしい文章が添えられるようになった。
『友達ができました。年上の男の子と年下の女の子で、男の子の方は大人しい子ですが、女の子はやんちゃなので、とても気があいます。お母様は二人のどちらとも仲良くしなさいと言ってました』
『木登りをしていたら、宿屋のアンおばさんに怪我をするから下りなさいと怒られました。お母様は困った顔していました。あとで、こっそり、お母様も子供の頃はよく木に登っていたと教えてくれました。お母様も怒られると大変なのでアンおばさんには内緒です』
『今年の春に植えた芋が芽を出しました。毎日、頑張って私が水をやったからです。お母様に伝えるととても喜んでくれました。どんな味の芋になるか…。今から楽しみです。お芋が大きくなったら、お母様がポトフを作ってくれるそうです』
メラニーの日常がエヴァを通して垣間見れる。二人は穏やかな日々を過ごしているようでヒューゴは安心していた。
『これからもエヴァには兄の密偵として母のことを教えてもらわなければならない』
ヒューゴは筆にしたためた。
母も読んでいるはずだが、言及されることはなく…。
『重要任務!私、頑張る!』
その後もエヴァはメラニーの周囲で起きた出来事を、逐一ヒューゴへ報告してくれた。
『最近、お母様の仕事を手伝ってくれるおじさんがいる!どうやらお母様へ好意を持っているみたい…』
直近の手紙の内容だ…。
ヒューゴは気が気でなかったが…。
「ご心配に及ばずとも、元気にしてらっしゃいます」
ヒューゴは簡潔にシリルヘ告げた。
「私にも彼女たちの生活ぶりがどんなものか…。話してもらえないだろうか?」
「はい?」
「私も彼女たちのことが気がかりで…」
「…。今更ですか?」
「何?」
シリルは声音から察した。ヒューゴは静かな怒りに満ちている。
「今更ですか?とお尋ねしたのです」
シリルはメラニーと別れた直後から、メラニーのことが気掛かりで仕方なかった。
しかし、離縁した身で自らメラニーへ連絡することは許されなく、寄宿学校の生活に慣れるまで大変だろうとヒューゴを慮り母のことを尋ねることもせず、そのうち季節は巡り年月だけ過ぎていく…。
シリルは一念発起し、本日やっとの思いでヒューゴへ聞いたのだった。今更かと問いただすヒューゴの気持ちも分からなくないが…。
ヒューゴが怒っている理由にシリルは見当がつかなかった。
「どういう…」
「私が鞭で家庭教師から折檻を受けた際、母上は私を庇ってくれました」
「あぁ…。そのようなことがあったな…」
シリルは思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あの時、他の家庭教師から…。母上は悪い見本だと…。教育はプロである自分たちに任せるべきだと…。公爵夫人の器ではないと…。私は聞かされたのです…」
シリルは絶句した。
アルセア王国の悲恋へ翻弄されていたメラニーの置かれていた立場を痛感する。
グラジオラス公爵夫人であるはずなのに、メラニーは架空の悪役に仕立てあげられ、家庭教師でさえ敬意を示すどころか侮蔑していたのだ。
憤りでシリルの握った拳が震えている。
ヒューゴは父を一瞥すると続けた。
「どうして、母上がエヴァを連れて出ていったか?ご存知ですか?」
グラジオラス専任弁護士が準備してあった離婚書類にはエヴァの親権をメラニーへと記してあったが、シリルが頑なにエヴァはグラジオラス公爵家の令嬢であると親権を譲らなかった。
シリルは愛情表現が下手であったが、一人娘であるエヴァを深く愛していた。
メラニーは監護権(子供の世話や教育する権利•義務)のみで構わないのでエヴァを手元で育てたいと強く申し出たため、シリルは渋々ながら了承した。幼い娘を母親から引き離すのは可哀想だとシリルは考えたのだ。
後々、エヴァのためにメラニーがグラジオラスへ戻ってくるかもしれないとシリルの思惑もあったが…。
「まだ、幼かったからだろう…」
「エヴァは公爵令嬢ですよ。公爵家へ留まれば生活に困ることはありません。以前と比べて母上の生活は質素なものです。エヴァも少なからず苦労していることでしょう…」
「では何故だ…」
「エヴァは世間から「不必要な公女」と言われて馬鹿にされてます。父上は後継者のために母上と結婚なされたのでしょう?ですから、第二子…。況してや家督を継ぐこともできない娘は、グラジオラス公爵家に必要ないらしいですよ…」
「何だと!」
シリルは目の前のテーブルを拳で叩いた。
オーク材で作られた頑丈なテーブルへ亀裂が入っている。
拳からは血が滴っていた。スミスが慌ててハンカチを胸ポケットから取りだし、シリルの手へ巻きつける。
シリルは大切な娘までもが犠牲者だとは露ほども知らなかった。
苦しそうに顔を歪めるシリルから目を逸らしてヒューゴは言った。
「母上は自分が出ていったあと、謂れもない中傷でエヴァが傷つくのを恐れたのでしょう…」
アルセア王国のため…。
ホリホック王家のため…。
シリルは日々実直に王国騎士団の団長を務めてきた。国防という重責のため仕事へ全うし社交界からは足遠く、妻がどのように扱われているのか知ることもせず、人々の噂も所詮は過去の恋愛話と放置していた。
無知であるが故に妻と娘を傷つけてきた…。
シリルは胸が締めつけられる。
「父上はこの王国の騎士団のトップで在らせられる。職務を全うするには、家庭を顧みれないこともあるでしょう…。ですが、貴方はあまりにも母上へ無関心だった」
「愛…していたんだ…。これでも…」
息子に告げることではない…。だが、シリルは呟かずにいられなかった。
シリルの母への愛の告白に、ヒューゴは父へ視線を移して目を疑った。シリルの頬へ一筋の雫が伝い、テーブルに小さな染みを作っていたからだ。
生まれて初めて、ヒューゴは父の泣き顔を見た。
「それは母上へ伝えてください。私に言われてもどうすることもできません…」
二人の間へ気まずい沈黙が流れ、ヒューゴは席を立った。
寄宿学校の長期休暇に伴い、ヒューゴがグラジオラス公爵邸へ戻ってきた。
「あぁ…。寄宿学校の生活はどうだ?」
「変わらず、順調です。今学期の成績は試験で一位をとれましたし…」
「そうか…。他にないか?」
「別段、ご報告することは…」
少し見かけない間に大人びた顔立ちになったヒューゴをシリルは直視した。
身長もかなり伸びている。とっくの昔に母親であるメラニーの背を追い越したようだ。
昔は体の線が細かったのに逞しくなっている。
「あれから…」
背後に待機していたスミスが、シリルの対面の椅子を引くとヒューゴに座るように指示する。
ヒューゴは話が長くなりそうだと内心うんざりしたが、おくびにも出さず促されるまま腰掛けた。
「はい、何でしょう?」
「メラニーがこの家を出て行ってから…。お前は母と連絡を取っているのか?」
唐突にシリルはメラニーの現状を尋ねてきた。
母がこの家を去って何年も経つというのに…。今になって何故…。
ヒューゴはシリルの表情を探った。
堀が深く美丈夫な父だが、年齢を重ねて顔立ちへ陰影が目立ち始めた。深みが加わり渋さが増している。
「父上と離婚されても、私の母には変わりませんから…。ですが、母上にというより…。妹へ近況を確認していると言った方が正しいかもしれませんね…」
ヒューゴはメラニーへ手紙を綴っていた。
返事は素っ気ないもので…。
『こちらは元気にしております。貴方は私に煩うことなく勉強に励み、友人を作り、学生時代をを謳歌なさい…』
それでも、ヒューゴはメラニーへ便りを送り続けた。母の返答は一語一句も変化はなかったが…。
そのうち、妹のエヴァのたどたどしい文章が添えられるようになった。
『友達ができました。年上の男の子と年下の女の子で、男の子の方は大人しい子ですが、女の子はやんちゃなので、とても気があいます。お母様は二人のどちらとも仲良くしなさいと言ってました』
『木登りをしていたら、宿屋のアンおばさんに怪我をするから下りなさいと怒られました。お母様は困った顔していました。あとで、こっそり、お母様も子供の頃はよく木に登っていたと教えてくれました。お母様も怒られると大変なのでアンおばさんには内緒です』
『今年の春に植えた芋が芽を出しました。毎日、頑張って私が水をやったからです。お母様に伝えるととても喜んでくれました。どんな味の芋になるか…。今から楽しみです。お芋が大きくなったら、お母様がポトフを作ってくれるそうです』
メラニーの日常がエヴァを通して垣間見れる。二人は穏やかな日々を過ごしているようでヒューゴは安心していた。
『これからもエヴァには兄の密偵として母のことを教えてもらわなければならない』
ヒューゴは筆にしたためた。
母も読んでいるはずだが、言及されることはなく…。
『重要任務!私、頑張る!』
その後もエヴァはメラニーの周囲で起きた出来事を、逐一ヒューゴへ報告してくれた。
『最近、お母様の仕事を手伝ってくれるおじさんがいる!どうやらお母様へ好意を持っているみたい…』
直近の手紙の内容だ…。
ヒューゴは気が気でなかったが…。
「ご心配に及ばずとも、元気にしてらっしゃいます」
ヒューゴは簡潔にシリルヘ告げた。
「私にも彼女たちの生活ぶりがどんなものか…。話してもらえないだろうか?」
「はい?」
「私も彼女たちのことが気がかりで…」
「…。今更ですか?」
「何?」
シリルは声音から察した。ヒューゴは静かな怒りに満ちている。
「今更ですか?とお尋ねしたのです」
シリルはメラニーと別れた直後から、メラニーのことが気掛かりで仕方なかった。
しかし、離縁した身で自らメラニーへ連絡することは許されなく、寄宿学校の生活に慣れるまで大変だろうとヒューゴを慮り母のことを尋ねることもせず、そのうち季節は巡り年月だけ過ぎていく…。
シリルは一念発起し、本日やっとの思いでヒューゴへ聞いたのだった。今更かと問いただすヒューゴの気持ちも分からなくないが…。
ヒューゴが怒っている理由にシリルは見当がつかなかった。
「どういう…」
「私が鞭で家庭教師から折檻を受けた際、母上は私を庇ってくれました」
「あぁ…。そのようなことがあったな…」
シリルは思い出し、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「あの時、他の家庭教師から…。母上は悪い見本だと…。教育はプロである自分たちに任せるべきだと…。公爵夫人の器ではないと…。私は聞かされたのです…」
シリルは絶句した。
アルセア王国の悲恋へ翻弄されていたメラニーの置かれていた立場を痛感する。
グラジオラス公爵夫人であるはずなのに、メラニーは架空の悪役に仕立てあげられ、家庭教師でさえ敬意を示すどころか侮蔑していたのだ。
憤りでシリルの握った拳が震えている。
ヒューゴは父を一瞥すると続けた。
「どうして、母上がエヴァを連れて出ていったか?ご存知ですか?」
グラジオラス専任弁護士が準備してあった離婚書類にはエヴァの親権をメラニーへと記してあったが、シリルが頑なにエヴァはグラジオラス公爵家の令嬢であると親権を譲らなかった。
シリルは愛情表現が下手であったが、一人娘であるエヴァを深く愛していた。
メラニーは監護権(子供の世話や教育する権利•義務)のみで構わないのでエヴァを手元で育てたいと強く申し出たため、シリルは渋々ながら了承した。幼い娘を母親から引き離すのは可哀想だとシリルは考えたのだ。
後々、エヴァのためにメラニーがグラジオラスへ戻ってくるかもしれないとシリルの思惑もあったが…。
「まだ、幼かったからだろう…」
「エヴァは公爵令嬢ですよ。公爵家へ留まれば生活に困ることはありません。以前と比べて母上の生活は質素なものです。エヴァも少なからず苦労していることでしょう…」
「では何故だ…」
「エヴァは世間から「不必要な公女」と言われて馬鹿にされてます。父上は後継者のために母上と結婚なされたのでしょう?ですから、第二子…。況してや家督を継ぐこともできない娘は、グラジオラス公爵家に必要ないらしいですよ…」
「何だと!」
シリルは目の前のテーブルを拳で叩いた。
オーク材で作られた頑丈なテーブルへ亀裂が入っている。
拳からは血が滴っていた。スミスが慌ててハンカチを胸ポケットから取りだし、シリルの手へ巻きつける。
シリルは大切な娘までもが犠牲者だとは露ほども知らなかった。
苦しそうに顔を歪めるシリルから目を逸らしてヒューゴは言った。
「母上は自分が出ていったあと、謂れもない中傷でエヴァが傷つくのを恐れたのでしょう…」
アルセア王国のため…。
ホリホック王家のため…。
シリルは日々実直に王国騎士団の団長を務めてきた。国防という重責のため仕事へ全うし社交界からは足遠く、妻がどのように扱われているのか知ることもせず、人々の噂も所詮は過去の恋愛話と放置していた。
無知であるが故に妻と娘を傷つけてきた…。
シリルは胸が締めつけられる。
「父上はこの王国の騎士団のトップで在らせられる。職務を全うするには、家庭を顧みれないこともあるでしょう…。ですが、貴方はあまりにも母上へ無関心だった」
「愛…していたんだ…。これでも…」
息子に告げることではない…。だが、シリルは呟かずにいられなかった。
シリルの母への愛の告白に、ヒューゴは父へ視線を移して目を疑った。シリルの頬へ一筋の雫が伝い、テーブルに小さな染みを作っていたからだ。
生まれて初めて、ヒューゴは父の泣き顔を見た。
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