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高等部
177、あの日のこと
ボクの言葉にミノくんは「あー……、それかあ」とガシガシと頭を掻きました。
アイク様なら絶対にやらないその仕草は、僕にはよく見慣れたもの。
「……聞きたい?」
上目遣いで困ったように眉を下げる。
「うん。知りたいんだ。あの日何が起こったのか。
最後にミノくんの声が聞こえた気がしたんだけど。
あの時、ミノくんは見たの?」
ふう、とため息ひとつ。
ミノくんはギュッと一回目を閉じた後、痛みに満ちた目を僕に向けた。
「あの日、俺も待ち合わせ場所に向かってた。
で、ゆうを見つけて声を掛けようとしたところだったんだ。
歩道に……トラックが突っ込んで来た。
運転手は意識を失っているようだだった。
減速することなく、次々と人が跳ね飛ばされたんだ。
ゆうが跳ね飛ばされるところを俺は見て……その後すぐに俺も飛ばされた。
大勢が犠牲になった事故だ」
「ああ。やっぱり。
ボクもミノくんも、おんなじ理由で死んじゃったんだね。
ごめんね。嫌なとこを見せちゃったね」
僕はジル様のことを考えたまんま、何が起こったのか分からないままに死んじゃったけど、ミノくんは違う。
僕の死を見届けて、その後……。
「……仕方ねえよ。こうやってまた会えたしな。
異世界転生あるあるってやつだ」
「うん。僕はジル様のことを助けたいってずっと思ってたからそのためにここに来たんだと思う。
まさかミノくんにまた会えるなんて思ってなかったから、嬉しいよ。
あのね、記憶を取り戻したとき、一番最初に『ジル様の弟になったよってミノくんに教えたいっ』って思ったよ。
ミノくんと話せたらなあって。
こんなに近くにいたんだね。改めて……久しぶり、ミノくん。
会えるってことはミノくんも死んじゃったってことだから、こんなこというのはどうかとも思うんだけど。
でも言わせて。
会えて嬉しいよ、ミノくん」
「俺も。俺も会えて嬉しい。記憶が戻るのが遅くなってごめんな?一人にしてごめん。
俺はさ、あのとき……ゆうを助けたいって思った。俺がゆうを助けるんだ、って。
だから、たぶん俺がここにいるのは、ジルじゃなくてゆうを助けるためなんだ。
なんでアイクなんだって思ったけど、今は納得してる。
ジルを俺から解放するためだったんだなって。
だってさ、おかしいんだよ。クリスと出会ったら『なんとしてもジルと円満に婚約を解消して、ジルを解放してやらなきゃ』って、そんな気持ちが強くなってさ。
俺の気持ちだったんだろうなあ」
遠い目をしてちょっと切なげに目を細めるアイク様は、姿かたちは違っても、びっくりするくらいミノくんだった。
「できればゆうを俺が幸せにしてやりたかったけど……クリスの幸せはジルなんだろ?
だから諦めるよ。クリスとジルを祝福してやる」
そう言うと「ジルが居ないうちに。一回だけハグさせてくれ」とソファから立ち上がり、テーブル越しに僕の身体をぎゅうっと抱きしめた。
「……ゆう。俺さ、ゆうのことが好きだった。そういう意味で」
過去形で語るその声がどうしようもやく切なくて、優しくて。
でも、ボクは同じ想いを返してあげられないから。
「……あのね、ミノくんはずっと僕の親友だよ。それでボクの親友でもあるの。
ここに来てくれてありがとう。ミノくんとは違うけど、僕もミノくんが大好きだよ」
ボクのほうは現在形で。
「ミノくん。クリスもアイク様のこと、親友だって思ってるよ。
お兄様の元婚約者だって思うと複雑だけど」
最後の所は声が低くなってしまいました。
だって、ねえ。お兄様の元婚約者だなんて、ズルイ!
ボクだって五歳のお兄様に会いたかった!
「ははは!ごめんな?俺がジル様の初めて奪っちまって!」
「言い方!あはは!もう、ミノくんってば!」
ドン、と胸を突き、お互いに笑いあう。
「ねえ、ミノくん。死んじゃったのは残念だけれど、また会えて嬉しい。
ここに来てくれて嬉しい。
ゆうの話が、ミノくんの話ができるなんて思ってもいなかったもの。
ボクの取り戻した記憶はすっごく偏っているけれど、ミノくんのことはちゃんと思いだせたんだよ?
リョウとの辛い記憶もあるけど、ミノくんとジル様の記憶があるから、ゆうのことを否定しないでいられたの」
「うん。それだけでも、俺、ここに来た甲斐があったわ」
「ところで。ボクが記憶を取り戻したのは、ジル様に会った衝撃だったんですけれど、ゆうくんは?
ボクと出会っても記憶は戻らなかったでしょう?」
「まあ……クリスはモブだしなあ……」
うん。ボクは名もなきモブです。スチルもなかったけれど。
設定集のジル様の項目「父親の再婚によってできた義弟がいる」だけだもの。しょぼん。
「俺は、あのピンク頭だわ。アイツの頭見て『ピンク頭じゃん!』ってさ。やっぱあれはねえよ。頭ピンクだぜ?ねえわ……」
うんざり顔で首を振るミノくんに思わず爆笑。
「ねー!それはボクもそう思います!ないですよねえ!」
アイク様なら絶対にやらないその仕草は、僕にはよく見慣れたもの。
「……聞きたい?」
上目遣いで困ったように眉を下げる。
「うん。知りたいんだ。あの日何が起こったのか。
最後にミノくんの声が聞こえた気がしたんだけど。
あの時、ミノくんは見たの?」
ふう、とため息ひとつ。
ミノくんはギュッと一回目を閉じた後、痛みに満ちた目を僕に向けた。
「あの日、俺も待ち合わせ場所に向かってた。
で、ゆうを見つけて声を掛けようとしたところだったんだ。
歩道に……トラックが突っ込んで来た。
運転手は意識を失っているようだだった。
減速することなく、次々と人が跳ね飛ばされたんだ。
ゆうが跳ね飛ばされるところを俺は見て……その後すぐに俺も飛ばされた。
大勢が犠牲になった事故だ」
「ああ。やっぱり。
ボクもミノくんも、おんなじ理由で死んじゃったんだね。
ごめんね。嫌なとこを見せちゃったね」
僕はジル様のことを考えたまんま、何が起こったのか分からないままに死んじゃったけど、ミノくんは違う。
僕の死を見届けて、その後……。
「……仕方ねえよ。こうやってまた会えたしな。
異世界転生あるあるってやつだ」
「うん。僕はジル様のことを助けたいってずっと思ってたからそのためにここに来たんだと思う。
まさかミノくんにまた会えるなんて思ってなかったから、嬉しいよ。
あのね、記憶を取り戻したとき、一番最初に『ジル様の弟になったよってミノくんに教えたいっ』って思ったよ。
ミノくんと話せたらなあって。
こんなに近くにいたんだね。改めて……久しぶり、ミノくん。
会えるってことはミノくんも死んじゃったってことだから、こんなこというのはどうかとも思うんだけど。
でも言わせて。
会えて嬉しいよ、ミノくん」
「俺も。俺も会えて嬉しい。記憶が戻るのが遅くなってごめんな?一人にしてごめん。
俺はさ、あのとき……ゆうを助けたいって思った。俺がゆうを助けるんだ、って。
だから、たぶん俺がここにいるのは、ジルじゃなくてゆうを助けるためなんだ。
なんでアイクなんだって思ったけど、今は納得してる。
ジルを俺から解放するためだったんだなって。
だってさ、おかしいんだよ。クリスと出会ったら『なんとしてもジルと円満に婚約を解消して、ジルを解放してやらなきゃ』って、そんな気持ちが強くなってさ。
俺の気持ちだったんだろうなあ」
遠い目をしてちょっと切なげに目を細めるアイク様は、姿かたちは違っても、びっくりするくらいミノくんだった。
「できればゆうを俺が幸せにしてやりたかったけど……クリスの幸せはジルなんだろ?
だから諦めるよ。クリスとジルを祝福してやる」
そう言うと「ジルが居ないうちに。一回だけハグさせてくれ」とソファから立ち上がり、テーブル越しに僕の身体をぎゅうっと抱きしめた。
「……ゆう。俺さ、ゆうのことが好きだった。そういう意味で」
過去形で語るその声がどうしようもやく切なくて、優しくて。
でも、ボクは同じ想いを返してあげられないから。
「……あのね、ミノくんはずっと僕の親友だよ。それでボクの親友でもあるの。
ここに来てくれてありがとう。ミノくんとは違うけど、僕もミノくんが大好きだよ」
ボクのほうは現在形で。
「ミノくん。クリスもアイク様のこと、親友だって思ってるよ。
お兄様の元婚約者だって思うと複雑だけど」
最後の所は声が低くなってしまいました。
だって、ねえ。お兄様の元婚約者だなんて、ズルイ!
ボクだって五歳のお兄様に会いたかった!
「ははは!ごめんな?俺がジル様の初めて奪っちまって!」
「言い方!あはは!もう、ミノくんってば!」
ドン、と胸を突き、お互いに笑いあう。
「ねえ、ミノくん。死んじゃったのは残念だけれど、また会えて嬉しい。
ここに来てくれて嬉しい。
ゆうの話が、ミノくんの話ができるなんて思ってもいなかったもの。
ボクの取り戻した記憶はすっごく偏っているけれど、ミノくんのことはちゃんと思いだせたんだよ?
リョウとの辛い記憶もあるけど、ミノくんとジル様の記憶があるから、ゆうのことを否定しないでいられたの」
「うん。それだけでも、俺、ここに来た甲斐があったわ」
「ところで。ボクが記憶を取り戻したのは、ジル様に会った衝撃だったんですけれど、ゆうくんは?
ボクと出会っても記憶は戻らなかったでしょう?」
「まあ……クリスはモブだしなあ……」
うん。ボクは名もなきモブです。スチルもなかったけれど。
設定集のジル様の項目「父親の再婚によってできた義弟がいる」だけだもの。しょぼん。
「俺は、あのピンク頭だわ。アイツの頭見て『ピンク頭じゃん!』ってさ。やっぱあれはねえよ。頭ピンクだぜ?ねえわ……」
うんざり顔で首を振るミノくんに思わず爆笑。
「ねー!それはボクもそう思います!ないですよねえ!」
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