キュートなモブ令息に転生したボク。可愛さと前世の知識で悪役令息なお義兄さまを守りますっ!

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

文字の大きさ
178 / 226
高等部

177、あの日のこと

ボクの言葉にミノくんは「あー……、それかあ」とガシガシと頭を掻きました。
アイク様なら絶対にやらないその仕草は、僕にはよく見慣れたもの。

「……聞きたい?」

上目遣いで困ったように眉を下げる。

「うん。知りたいんだ。あの日何が起こったのか。
最後にミノくんの声が聞こえた気がしたんだけど。
あの時、ミノくんは見たの?」

ふう、とため息ひとつ。
ミノくんはギュッと一回目を閉じた後、痛みに満ちた目を僕に向けた。

「あの日、俺も待ち合わせ場所に向かってた。
で、ゆうを見つけて声を掛けようとしたところだったんだ。
歩道に……トラックが突っ込んで来た。
運転手は意識を失っているようだだった。
減速することなく、次々と人が跳ね飛ばされたんだ。
ゆうが跳ね飛ばされるところを俺は見て……その後すぐに俺も飛ばされた。
大勢が犠牲になった事故だ」

「ああ。やっぱり。
ボクもミノくんも、おんなじ理由で死んじゃったんだね。
ごめんね。嫌なとこを見せちゃったね」

僕はジル様のことを考えたまんま、何が起こったのか分からないままに死んじゃったけど、ミノくんは違う。
僕の死を見届けて、その後……。

「……仕方ねえよ。こうやってまた会えたしな。
異世界転生あるあるってやつだ」

「うん。僕はジル様のことを助けたいってずっと思ってたからそのためにここに来たんだと思う。
まさかミノくんにまた会えるなんて思ってなかったから、嬉しいよ。
あのね、記憶を取り戻したとき、一番最初に『ジル様の弟になったよってミノくんに教えたいっ』って思ったよ。
ミノくんと話せたらなあって。
こんなに近くにいたんだね。改めて……久しぶり、ミノくん。
会えるってことはミノくんも死んじゃったってことだから、こんなこというのはどうかとも思うんだけど。
でも言わせて。
会えて嬉しいよ、ミノくん」

「俺も。俺も会えて嬉しい。記憶が戻るのが遅くなってごめんな?一人にしてごめん。
俺はさ、……ゆうを助けたいって思った。俺がゆうを助けるんだ、って。
だから、たぶん俺がここにいるのは、ジルじゃなくてゆうを助けるためなんだ。
なんでアイクなんだって思ったけど、今は納得してる。
ジルをアイクから解放するためだったんだなって。
だってさ、おかしいんだよ。クリスと出会ったら『なんとしてもジルと円満に婚約を解消して、ジルを解放してやらなきゃ』って、そんな気持ちが強くなってさ。
俺の気持ちだったんだろうなあ」

遠い目をしてちょっと切なげに目を細めるアイク様は、姿かたちは違っても、びっくりするくらいミノくんだった。

「できればゆうを俺が幸せにしてやりたかったけど……クリスの幸せはジルなんだろ?
だから諦めるよ。クリスとジルを祝福してやる」

そう言うと「ジルが居ないうちに。一回だけハグさせてくれ」とソファから立ち上がり、テーブル越しに僕の身体をぎゅうっと抱きしめた。

「……ゆう。俺さ、ゆうのことが好きだった。そういう意味で」

過去形で語るその声がどうしようもやく切なくて、優しくて。
でも、ボクは同じ想いを返してあげられないから。

「……あのね、ミノくんはずっと僕の親友だよ。それでボクの親友でもあるの。
ここに来てくれてありがとう。ミノくんとは違うけど、僕もミノくんが大好きだよ」

ボクのほうは現在形で。

「ミノくん。クリスもアイク様のこと、親友だって思ってるよ。
お兄様の元婚約者だって思うと複雑だけど」

最後の所は声が低くなってしまいました。
だって、ねえ。お兄様の元婚約者だなんて、ズルイ!
ボクだって五歳のお兄様に会いたかった!

「ははは!ごめんな?俺がジル様の初めて奪っちまって!」

「言い方!あはは!もう、ミノくんってば!」

ドン、と胸を突き、お互いに笑いあう。

「ねえ、ミノくん。死んじゃったのは残念だけれど、また会えて嬉しい。
ここに来てくれて嬉しい。
ゆうの話が、ミノくんの話ができるなんて思ってもいなかったもの。
ボクの取り戻した記憶はすっごく偏っているけれど、ミノくんのことはちゃんと思いだせたんだよ?
リョウとの辛い記憶もあるけど、ミノくんとジル様の記憶があるから、ゆうのことを否定しないでいられたの」

「うん。それだけでも、俺、ここラブ☆レボに来た甲斐があったわ」

「ところで。ボクが記憶を取り戻したのは、ジル様に会った衝撃だったんですけれど、ゆうくんは?
ボクと出会っても記憶は戻らなかったでしょう?」

「まあ……クリスはモブだしなあ……」

うん。ボクは名もなきモブです。スチルもなかったけれど。
設定集のジル様の項目「父親の再婚によってできた義弟がいる」だけだもの。しょぼん。

「俺は、あのピンク頭だわ。アイツの頭見て『ピンク頭じゃん!』ってさ。やっぱあれはねえよ。頭ピンクだぜ?ねえわ……」

うんざり顔で首を振るミノくんに思わず爆笑。

「ねー!それはボクもそう思います!ないですよねえ!」










感想 262

あなたにおすすめの小説

本の虫な転生赤ちゃんは血塗りの宰相の義愛娘~本の世界に入れる『ひみちゅのちから』でピンチの帝国を救ったら、冷酷パパに溺愛されてます

青空あかな
ファンタジー
ブラック企業に勤める本の虫でアラサーOLの星花は、突然水に突き落とされた衝撃を感じる。 藻掻くうちに、自分はなぜか赤ちゃんになっていることを理解する。 溺死寸前の彼女を助けたのは、冷徹な手腕により周囲から「血塗りの宰相」と恐れられるアイザック・リヴィエール公爵だった。 その後、熱に浮かされながら見た夢で前世を思い出し、星花は異世界の赤ちゃんに転生したことを自覚する。 目覚めた彼女は周囲の会話から、赤ちゃんの自分を川に落としたのは実の両親だと知って、強いショックを受けた。 前世の両親もいわゆる毒親であり、今世では「親」に愛されたかったと……。 リヴィエール公爵家の屋敷に連れて行かれると、星花にはとても貴重な聖属性の魔力があるとわかった。 アイザックに星花は「ステラ」と名付けられ彼の屋敷で暮らすようになる。 当のアイザックとはほとんど会わない塩対応だが、屋敷の善良な人たちに温かく育てられる。 そんなある日、精霊と冒険する絵本を読んだステラはその世界に入り込み、実際に精霊と冒険した。 ステラには「本の世界に入り込み、その本の知識や内容を実際に体験したように習得できる特別な力」があったのだ。 彼女はその力を使って、隣国との条約締結に関する通訳不在問題や皇帝陛下の病気を治す薬草探索など、様々な問題を解決する。 やがて、アイザックは最初は煩わしかったはずのステラの活躍と愛らしさを目の当たりにし、彼女を「娘として」大切に思うようになる。 これは赤ちゃんに転生した本好きアラサーの社畜OLが、前世の知識と本好きの力を活かして活躍した結果、冷徹な義父から溺愛される話である。

​転生したら最強辺境伯に拾われました

マンスーン
BL
現代日本人・東堂裕太が目を覚ますと、そこは異世界。クズな婚約者に魔力を限界まで搾取され、ボロボロになって森に捨てられる悲惨な青年・ルカに転生していた。 ​死を覚悟した裕太だったが、そんな彼を拾い上げたのは、帝国最強の武力を誇り「氷の死神」と恐れられる辺境伯・ラーク。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。 前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。 だが図書室の記録が冤罪を覆す。 そしてレイは知る。 聖女ディーンの本当の名はアキラ。 同じ日本から来た存在だった。 帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。 秘密を共有した二人は、友達になる。 人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。

拾われたのはたぶん僕です 〜ポンコツ魔法使いと騎士団の平和な大事件〜

ニア。
BL
崖から落ちただけなのに、騎士団長に拾われました。 真面目に生きてきた魔法使いモーネ。 ただ薬草を採ろうとして滑落しただけなのに、なぜか王国最強の騎士団長イグラムに連れて行かれ、騎士団で暮らすことに。 しかしこの魔法使い、少しだけ普通ではありません。 回復魔法を使えば何かが増え、 補助魔法を使えば騎士団が浮き、 気づけば庭はプリンになります。 ——本人はちゃんとやっています。 巻き込まれる騎士団と、なぜか楽しそうな団長。 さらに弟子や王子、ドラゴンまで加わって、騎士団は今日も平和に大騒ぎ。 これは、ポンコツ魔法使いが真面目に頑張るたびに世界が少し壊れる、騒がしくて優しいファンタジーです。

悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!

梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!? 【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】 ▼不定期連載となりました。 ▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。 ▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。