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幼年期
66.お義父さまに紹介します
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さて。
ブリードさんを連れて帰ったボクたち。
お義父さまとお母さま、そしてジェームズさんには事情をお話し、他の使用人さんたちには「クリスのペットの珍しい水トカゲさん」ということで話を通した。
お義父さまも守神さまについては伝承として話を聞いたことがあったようで、「ほう!このトカ……ごほん、この方が守神さまか」と驚いていらした。
「ジルベスターとクリスは会話ができるのだな?守神さまの守護を得たか」
「え?守護?ガジっとされたのですが……」
「?契約を交わしたのだろう?だから会話ができておるのではないか?」
ええ?あれ、契約だったの?
ボクたちを守護してくれたの?
ボク、守神さまにお兄さまが噛まれたとき「こらっ!ダメでしょ!」て教育的指導《ガジッと》しちゃいました!
あわてて守神さまを見ると、ふむふむくるしうないぞ、とちょこっと胸を張ってドヤしていらした。
「あわわわ!今さらですが、勘違いしてごめんなさい!
単純に言葉が分かるようにしてくれただけだと思っていました。
守護ということは、ボクたちを護って下さるということですよね?
なのに噛みついちゃうだなんて、ボク、なんてことを……!」
本当に今さらなのですが、ボクが噛みついたところをナデナデ。
噛み跡はついていないみたいです。よかったあ!
「噛みついた?誰が誰に?」
「えと、守神さま、あ、ブリードさんというお名前なのですが、ブリードさんがボクをガジっとして、そのあとお兄さまにまでガジっとしたので。ボクが『お兄さまを噛むなんてダメでしょっ!』てブリードさんを噛みました……」
お兄さまが噛まれたと思って我を忘れてしまったのです。反省してます……。
しょんぼりと告げたボクに、お義父さまのお顔がクシャりと歪んだ。
「……お義父さま?」
「……くっ………ふは……ふははははは!わっはっはっはっは!クリスが、噛んだ?!この水トカゲをか!わっはっはっはっは!」
端正な容貌をゆがめて大笑いされております。
するとその笑いが伝染したのか、お母さまとジェームズさんまで笑い出した。
「うふふふふふ!クリスったら!」
「ふ、ふふふっ、し、失礼いたしました……っ……ふふっ………」
「もう!笑わないでくださいっ!!反省しておりますってばあ!!」
「い、いや、す、すまぬ……っ!ま、まさか水トカゲに噛みつくものがおろうとは……っ。ふ……ふはっ……!」
「水トカゲではありません。いえ、水トカゲですけど、ブリザードドラゴンのブリードさんですし!
噛まれたのがボクだけならボクだって噛みません。でも、お兄さまに噛みついたのですよ?!
お兄さまの素敵なお耳に!!」
拳突き上げて力説するボクをお兄さまがぎゅうっと抱っこ。
「うん。私は分かっているからな。クリスは私の為を思って噛んでくれたのだ。守神さまには申し訳ないが、私はクリスのその気持ちを嬉しくおもうぞ?」
「お兄さまあ!!」
ぎゅうう!!
「そ、そうだな。クリス、ジルベスターを思ってくれてありがとう。ジルよ、良い弟を得たな。得難い宝だ。大切にするように」
「無論です。我が宝クリスを手放すつもりはありません。私が大切に慈しみ守ります」
「うむ。まだお前たちは子供なのだ。そのことを忘れぬようにな?
いつか成長しその時が来るまでは良き兄としてクリスを護るのだぞ?」
「はい。心得ております」
お義父さまとお兄さまがなにやら決意表明していらっしゃいます。
「良い兄になる」ですって?
ボクは「はい!」と手を挙げた。
「あ、あの!あの!お兄さまはもう十分よきお兄さまです!とってもカッコよくてお優しくて最高のお兄さまだと思います!」
お兄さまとお義父さまが無言で顔を見合わせる。
と、おふたりともそっくりな笑顔を見せてくれました。
「そうか、それは良かった。まあ、そういう話ではないのだが、クリスがよいのならば良い」
「私のクリスは可愛いな?ありがとう、クリス」
最後にお義父さまはブリードさんに向かって神妙な表情で頭を下げた。
公爵であるお義父さまが頭を下げるようなことはあまりない。
つまりそれだけブリードさんに敬意を払ってくださったのです。
「ブリード様、でよろしいですかな?
我が息子たちに祝福を与えて下さり感謝致します。なにかご不自由あらば仰ってください。良いように計らいましょう。どうか息子たちをよろしくお願いいたします」
お母さまも同じように横で頭を下げてくれた。
「私からもご挨拶をさせてください。
ブリード様、感謝致しますわ。どうか、ふたりのことをよろしくお願いいたします」
ブリードさんにもお義父さまたちの気持ちはちゃんと伝わったみたい。
まあるい頭を大きく前に振って「うむ!」
後から「よい両親だ。家の空気もよい」と褒められました。
そうなのです。分かってくださいましたか?
こうしてブリードさんが新たな家族に加わったのでした。
ブリードさんを連れて帰ったボクたち。
お義父さまとお母さま、そしてジェームズさんには事情をお話し、他の使用人さんたちには「クリスのペットの珍しい水トカゲさん」ということで話を通した。
お義父さまも守神さまについては伝承として話を聞いたことがあったようで、「ほう!このトカ……ごほん、この方が守神さまか」と驚いていらした。
「ジルベスターとクリスは会話ができるのだな?守神さまの守護を得たか」
「え?守護?ガジっとされたのですが……」
「?契約を交わしたのだろう?だから会話ができておるのではないか?」
ええ?あれ、契約だったの?
ボクたちを守護してくれたの?
ボク、守神さまにお兄さまが噛まれたとき「こらっ!ダメでしょ!」て教育的指導《ガジッと》しちゃいました!
あわてて守神さまを見ると、ふむふむくるしうないぞ、とちょこっと胸を張ってドヤしていらした。
「あわわわ!今さらですが、勘違いしてごめんなさい!
単純に言葉が分かるようにしてくれただけだと思っていました。
守護ということは、ボクたちを護って下さるということですよね?
なのに噛みついちゃうだなんて、ボク、なんてことを……!」
本当に今さらなのですが、ボクが噛みついたところをナデナデ。
噛み跡はついていないみたいです。よかったあ!
「噛みついた?誰が誰に?」
「えと、守神さま、あ、ブリードさんというお名前なのですが、ブリードさんがボクをガジっとして、そのあとお兄さまにまでガジっとしたので。ボクが『お兄さまを噛むなんてダメでしょっ!』てブリードさんを噛みました……」
お兄さまが噛まれたと思って我を忘れてしまったのです。反省してます……。
しょんぼりと告げたボクに、お義父さまのお顔がクシャりと歪んだ。
「……お義父さま?」
「……くっ………ふは……ふははははは!わっはっはっはっは!クリスが、噛んだ?!この水トカゲをか!わっはっはっはっは!」
端正な容貌をゆがめて大笑いされております。
するとその笑いが伝染したのか、お母さまとジェームズさんまで笑い出した。
「うふふふふふ!クリスったら!」
「ふ、ふふふっ、し、失礼いたしました……っ……ふふっ………」
「もう!笑わないでくださいっ!!反省しておりますってばあ!!」
「い、いや、す、すまぬ……っ!ま、まさか水トカゲに噛みつくものがおろうとは……っ。ふ……ふはっ……!」
「水トカゲではありません。いえ、水トカゲですけど、ブリザードドラゴンのブリードさんですし!
噛まれたのがボクだけならボクだって噛みません。でも、お兄さまに噛みついたのですよ?!
お兄さまの素敵なお耳に!!」
拳突き上げて力説するボクをお兄さまがぎゅうっと抱っこ。
「うん。私は分かっているからな。クリスは私の為を思って噛んでくれたのだ。守神さまには申し訳ないが、私はクリスのその気持ちを嬉しくおもうぞ?」
「お兄さまあ!!」
ぎゅうう!!
「そ、そうだな。クリス、ジルベスターを思ってくれてありがとう。ジルよ、良い弟を得たな。得難い宝だ。大切にするように」
「無論です。我が宝クリスを手放すつもりはありません。私が大切に慈しみ守ります」
「うむ。まだお前たちは子供なのだ。そのことを忘れぬようにな?
いつか成長しその時が来るまでは良き兄としてクリスを護るのだぞ?」
「はい。心得ております」
お義父さまとお兄さまがなにやら決意表明していらっしゃいます。
「良い兄になる」ですって?
ボクは「はい!」と手を挙げた。
「あ、あの!あの!お兄さまはもう十分よきお兄さまです!とってもカッコよくてお優しくて最高のお兄さまだと思います!」
お兄さまとお義父さまが無言で顔を見合わせる。
と、おふたりともそっくりな笑顔を見せてくれました。
「そうか、それは良かった。まあ、そういう話ではないのだが、クリスがよいのならば良い」
「私のクリスは可愛いな?ありがとう、クリス」
最後にお義父さまはブリードさんに向かって神妙な表情で頭を下げた。
公爵であるお義父さまが頭を下げるようなことはあまりない。
つまりそれだけブリードさんに敬意を払ってくださったのです。
「ブリード様、でよろしいですかな?
我が息子たちに祝福を与えて下さり感謝致します。なにかご不自由あらば仰ってください。良いように計らいましょう。どうか息子たちをよろしくお願いいたします」
お母さまも同じように横で頭を下げてくれた。
「私からもご挨拶をさせてください。
ブリード様、感謝致しますわ。どうか、ふたりのことをよろしくお願いいたします」
ブリードさんにもお義父さまたちの気持ちはちゃんと伝わったみたい。
まあるい頭を大きく前に振って「うむ!」
後から「よい両親だ。家の空気もよい」と褒められました。
そうなのです。分かってくださいましたか?
こうしてブリードさんが新たな家族に加わったのでした。
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