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第二章
誰かの影
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「?」
きょろきょろとしている俺にクラウスが不思議そうな顔をした。
「どうした、ミル。何かあったのか?」
「いや、どこかから視線を感じるような気がして……」
でもあたりを見回しても誰もいないのだ。
思い返せば朝も視線を感じたように思う。
うーん……。
クラウスがポンポンと俺の背を叩く。
「まあ、気のせいだろ。
大丈夫だ、ミル」
そしてなぜかあらぬ方向に向かって声を張り上げた。
「仮に誰かいたとしても、姿を見せないような臆病ものだ。大したヤツじゃねえさ。何かあっても俺たちがいるしな!」
そんなに大きな声を出さなくても聞こえてこるぞ?
俺を元気付けようとしてくれたのだろうか。友情とは有難いものだ。
「ありがとう、クラウス。少し過敏になってしまっているようだ。
気にしないことにするよ」
ところが、ことはそれで終わらなかった。その日から時々おかしなことがおこるようになったのだ。
といっても悪いことではない。
皆で寄ったあのカフェのクッキーが缶ごと机の中に入っていたり。
毎日なにかしらの…甘味が供されているのだ。
最初は何かの罠かと警戒していたのだが、移動教室に行く途中で落としてしまったものが、いつの間にか俺の机に置いてあったので、悪意ではないと判断した。
「……なんなんだ一体……」
今日もあった机の中の貢ぎものに困惑する俺に、ミルフェがワクワクした声でこう断言した。
「きっとミルのファンですわ!」
「いや、いっそストーカーって言った方がいいんじゃないかな?」
ジークは呆れ顔。
俺としてはどちらも微妙だ。
こんなことは初めてで、いったい相手が何を考えているのか、何をしたいのか分からない。
どうしたらよいのだろう?
このまま貰っておいていいのか?
「まあ、拗らせてる人であることだけは間違いないね」
「そうね。なんかコソコソしてるもの。堂々と渡せばいいのに」
「そうできない事情があるんだと思うぜ?ミルに嫌われているとか……」
「ええ?ほんとにストーカー?」
話を聞いているうちに怖くなってきた。
俺は付き纏いにあっているのだろうか?
そこまで執着されるような覚えはないのだが……。
いったい誰だ?
「これでミルから名前も出てこないあたりで、十分終わってるよなアイツも」
「そうだね。今さら感が強すぎて、なんだかねえ……」
二人の口ぶりは誰だか知っているかのようだ。
「クラウス、ジーク、心当たりでもあるのか?」
聞けば、微妙な顔で首を振られた。
「ミルに心当たりがないんなら、俺らもないぞ?な?ジーク」
「だね。ミルに心当たりがないんだものね?自業自得だしね」
心当たり……か。
ストーカーと聞いて一瞬ルディアスかもと思いはしたが、そんなはずはないだろう。
逆恨みされこそすれ、好意を抱かれる覚えはない。抱かれるなら悪意だろう。
嫌がらせをしてくるのならともかく、されているのはどちらかといえば手助けなのだ。
その時点でルディアスではない。
そういうようなことを説明すれば、ジークとクラウスが苦笑した。
「ミルからしたらそうなるよねえ……。うん。わかるよ。だよねえ」
「まあ、嫌なことしてこないんなら、放っておいていいんじゃねえか?
ミルが嫌なら犯人を捜してやってもいいけど……。どうする?」
「気にはなるが、嫌……ではないな。ただ……何がしたいのかわからなくて、困惑する」
するとミルフェがこう言った。
「単に、ミルを喜ばせたいだけじゃない?」
「え?俺を?」
「ええ。好きな人に喜んでもらいたい、ただそれだけだと思うわよ?」
「好きって……俺が?それはないだろう」
だって俺は嫌われ者だ。このクラスの皆は優しいからそんなことはないが、知らない相手にそこまで好かれるはずがない。
ミルフェはこれまでの俺を知らないからそんなことを言うのだ。
「ミルは少し自己評価が低すぎるわね」
優しく頭を撫でてくれる。
「あなたはとても素敵よ?本当のあなたを知ればみんなあなたを好きになるわ。
これからは、どんどんミルを好きな人が増えていくわよ?」
「ああ。そうだな。ミルって黙ってるとクールな美人に見えるけど、話してみるとすげえ可愛いんだもん。
ギャップがたまらん!」
「ギャップ萌えってやつよねっ!分かるうううう!!」
「そ、それは友達の欲目というやつだと思う。でも、ありがとう。
褒めて貰えてうれしい」
「そういうとこな!素直すぎ!」
「だね。そういうところが可愛いところなんだよ、ミル」
皆に相談した結果、害がないから俺が嫌じゃないなら放置、好きにさせておけばいい、ということになった。
それはそれで申し訳ない気がする。
このように好意を示してもらっても、俺からは何も返しようがないのだから。
でも、ランジェ曰く「推しの幸せがファンの幸せなの!」ということらしいからよいのだそうだ。
「誰だかわからないが、影で動いているのでカゲくんと呼ぶことにする。
カゲくん、いつか顔を出してくれるといいが」
「いや、カゲくんなんて可愛い名前、もったいねえよ!絶対に顔を出さないでほしいな、俺は!」
「だね。僕も同じ意見だ。カゲはカゲのままの方が幸せだと思うな」
カゲくん、2人に何をした?かなり嫌われているようだぞ?
というか、やはり2人は正体を知っているんじゃないか?聞かない方がいいということなのだろうか。
きょろきょろとしている俺にクラウスが不思議そうな顔をした。
「どうした、ミル。何かあったのか?」
「いや、どこかから視線を感じるような気がして……」
でもあたりを見回しても誰もいないのだ。
思い返せば朝も視線を感じたように思う。
うーん……。
クラウスがポンポンと俺の背を叩く。
「まあ、気のせいだろ。
大丈夫だ、ミル」
そしてなぜかあらぬ方向に向かって声を張り上げた。
「仮に誰かいたとしても、姿を見せないような臆病ものだ。大したヤツじゃねえさ。何かあっても俺たちがいるしな!」
そんなに大きな声を出さなくても聞こえてこるぞ?
俺を元気付けようとしてくれたのだろうか。友情とは有難いものだ。
「ありがとう、クラウス。少し過敏になってしまっているようだ。
気にしないことにするよ」
ところが、ことはそれで終わらなかった。その日から時々おかしなことがおこるようになったのだ。
といっても悪いことではない。
皆で寄ったあのカフェのクッキーが缶ごと机の中に入っていたり。
毎日なにかしらの…甘味が供されているのだ。
最初は何かの罠かと警戒していたのだが、移動教室に行く途中で落としてしまったものが、いつの間にか俺の机に置いてあったので、悪意ではないと判断した。
「……なんなんだ一体……」
今日もあった机の中の貢ぎものに困惑する俺に、ミルフェがワクワクした声でこう断言した。
「きっとミルのファンですわ!」
「いや、いっそストーカーって言った方がいいんじゃないかな?」
ジークは呆れ顔。
俺としてはどちらも微妙だ。
こんなことは初めてで、いったい相手が何を考えているのか、何をしたいのか分からない。
どうしたらよいのだろう?
このまま貰っておいていいのか?
「まあ、拗らせてる人であることだけは間違いないね」
「そうね。なんかコソコソしてるもの。堂々と渡せばいいのに」
「そうできない事情があるんだと思うぜ?ミルに嫌われているとか……」
「ええ?ほんとにストーカー?」
話を聞いているうちに怖くなってきた。
俺は付き纏いにあっているのだろうか?
そこまで執着されるような覚えはないのだが……。
いったい誰だ?
「これでミルから名前も出てこないあたりで、十分終わってるよなアイツも」
「そうだね。今さら感が強すぎて、なんだかねえ……」
二人の口ぶりは誰だか知っているかのようだ。
「クラウス、ジーク、心当たりでもあるのか?」
聞けば、微妙な顔で首を振られた。
「ミルに心当たりがないんなら、俺らもないぞ?な?ジーク」
「だね。ミルに心当たりがないんだものね?自業自得だしね」
心当たり……か。
ストーカーと聞いて一瞬ルディアスかもと思いはしたが、そんなはずはないだろう。
逆恨みされこそすれ、好意を抱かれる覚えはない。抱かれるなら悪意だろう。
嫌がらせをしてくるのならともかく、されているのはどちらかといえば手助けなのだ。
その時点でルディアスではない。
そういうようなことを説明すれば、ジークとクラウスが苦笑した。
「ミルからしたらそうなるよねえ……。うん。わかるよ。だよねえ」
「まあ、嫌なことしてこないんなら、放っておいていいんじゃねえか?
ミルが嫌なら犯人を捜してやってもいいけど……。どうする?」
「気にはなるが、嫌……ではないな。ただ……何がしたいのかわからなくて、困惑する」
するとミルフェがこう言った。
「単に、ミルを喜ばせたいだけじゃない?」
「え?俺を?」
「ええ。好きな人に喜んでもらいたい、ただそれだけだと思うわよ?」
「好きって……俺が?それはないだろう」
だって俺は嫌われ者だ。このクラスの皆は優しいからそんなことはないが、知らない相手にそこまで好かれるはずがない。
ミルフェはこれまでの俺を知らないからそんなことを言うのだ。
「ミルは少し自己評価が低すぎるわね」
優しく頭を撫でてくれる。
「あなたはとても素敵よ?本当のあなたを知ればみんなあなたを好きになるわ。
これからは、どんどんミルを好きな人が増えていくわよ?」
「ああ。そうだな。ミルって黙ってるとクールな美人に見えるけど、話してみるとすげえ可愛いんだもん。
ギャップがたまらん!」
「ギャップ萌えってやつよねっ!分かるうううう!!」
「そ、それは友達の欲目というやつだと思う。でも、ありがとう。
褒めて貰えてうれしい」
「そういうとこな!素直すぎ!」
「だね。そういうところが可愛いところなんだよ、ミル」
皆に相談した結果、害がないから俺が嫌じゃないなら放置、好きにさせておけばいい、ということになった。
それはそれで申し訳ない気がする。
このように好意を示してもらっても、俺からは何も返しようがないのだから。
でも、ランジェ曰く「推しの幸せがファンの幸せなの!」ということらしいからよいのだそうだ。
「誰だかわからないが、影で動いているのでカゲくんと呼ぶことにする。
カゲくん、いつか顔を出してくれるといいが」
「いや、カゲくんなんて可愛い名前、もったいねえよ!絶対に顔を出さないでほしいな、俺は!」
「だね。僕も同じ意見だ。カゲはカゲのままの方が幸せだと思うな」
カゲくん、2人に何をした?かなり嫌われているようだぞ?
というか、やはり2人は正体を知っているんじゃないか?聞かない方がいいということなのだろうか。
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