【本編完結】悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。

をち。「もう我慢なんて」書籍発売中

文字の大きさ
93 / 164
第六章

悪行には罰がつきもの

しおりを挟む
あの後クラウスたちから俺を心配し見舞いに行きたいと連絡があったが「犯人が捕まるまでは」と気持ちだけ受け取った。

すると数日後、分厚い書類のようなものが届いた。
そこにはなんとクラウスが馬車を見失った場所、その近辺でMS商会への否定的な発言をしているのが確認できた邸などが詳細にかかれていたのである。
馬車は近くの邸に入ったのではないかと仮定し、みんなで世間話をふりで聞き込みを行ってくれたのだそうだ。

「……すげえな、あいつら。ミル、いい友人に恵まれたな」

「みんなには迷惑をかけ通しだな……」

不覚にも感動して涙が出てしまった。

「俺は彼らに何をかえせるだろうか。ルディの件といい、ノートといい、今回の件といい、俺はみなに助けられてばかりだな」

「あのな、ミル。友人ってのは返すとか返さないとかは関係ないんだよ。お前が逆の立場ならどうした?何もせずにいたか?」

「もちろん、何かできることを探して手助けするさ!なにもせずにいられるものか!
!………あ……!」

言って気付いた。みなも同じなのか。
お互いに大切に思うからこそ、何かせずにはいられない。

「…………今度あったら礼を伝えるよ」

「ああ。そうしてやれ。それでいいんだよ」

ルディとアレックス兄さんは直接リストを持ってきてくれた。
なにやら物騒な連中も引き連れて。

ルディとアレックスが入ってきたと思ったらいつの間にかその後ろに顔半分を布で覆った黒装束の人間が並んでいたのだ。

「………ルディ。わざわざ届けてくれたのはとてもありがたいのだが………彼らはなんだ?」

「王家の影だ」

「「は?」」

俺とシルの声が被った。
ルディは当たり前のように平然とこう言った。

「だから、王家の影。この件は父上の耳にも入っていてな。
『国を救った功労者に刃を向けるとは、王家に牙をむいたも同然』『第三王子ルディアスの功績をも汚すものである』ってので、影を貸し出された。
気になる邸、店などあれば今すぐ影に伝えろ。早急に調べさせるから。
時間をあけて証拠を消されては困るからな。すぐに動かねば」

当たり前の影を動かすあたり、やはりルディも王族なのだな。
堂々と指示する姿にルディを見直した。
アレックス兄さんはそんなルディを温かく見守っている。きっと兄さんがそうして後ろを守っているからこそ、ルディも安心して動けるのだろう。
ルディとアレックス兄さんの婚約は、なるべくしてなったの運命なのかな、などと俺らしくもないことを思ってしまった。




あらゆる方面でみなが動いてくれた結果、犯人は絞られた。
一番疑わしいのは、俺の徐爵の場には招待されていなかった下位の貴族で、ソーンバーク子爵とその仲間であるベルク男爵だ。
シルの調べで最近になって新しい馬車を購入したという記録も見つかった。職人は「家紋はこちらで後から入れるからよい」と言われていたのだそう。最初から家紋を入れる場合がほとんどなので不思議に思っていたそうだ。俺を襲った馬車の特徴と、そこで販売した馬車の特徴も一致。
彼らは共同で商会を興したのだが、扱う商品の質が良くないのと本人たちの素行不良とで売り上げがあがらずにいたようだ。マージェス家とMS商会の名が売れたことでわずかに残っていた客も去り、俺たちを逆恨みしていたらしい。
クラウスたちがくれた資料にも「近くの酒場でMS商会の悪評をばら撒いていた」という情報が載っていた。
マージェス家からのリストにも同じ名前が挙がっており、あとは証拠を集めるだけとなった。

俺は影に頼んでさりげなくある情報をソーンバークとベルクに流してもらった。
方法は簡単だ。彼らが酒場に居る時に、酔っぱらったふりでこうもらったのだ。
「なあ、アンタ知ってるかい?ここだけの話なんだがな、俺の知り合いが警邏でな。教えてくれたんだよ。どうやらあの赤病の治療薬で有名なMS商会の坊ちゃんが暴漢に襲われたらしいぜ?結構なショックだったみたいでよお、屋敷に籠っているんだとさ。いやあ、あんなに繁盛した商会でも何があるのかわからんもんだなあ」

と。すると寄っていた二人はご機嫌になりこんなことを口にした。

「若造が調子に乗っているから石をぶつけられるのだ。自業自得だよ」
「そうだそうだ!甘ったれた坊ちゃんが生意気なことをするからだ!そのまま家に籠ってママに泣きついていればいいさ」




すぐさま待機していた警邏が2人を捕獲。

「MS商会のミルリースを襲ったかどで貴様らの身柄を預からせて頂く!」

「はあ?なあに言ってんだよ?証拠はあるのか、証拠は。俺たちは今そこにいた奴に聞いた話をしただけだ」
「なあ、あんたさっき俺にここだけの話だって教えてくれたよなあ?」


酔いに顔を赤くした二人は、状況が理解できずにへらへらと笑っていたという。
ここで影はそ知らぬ顔でうそぶいた。

「いや、俺は『暴漢に襲われた』とはいったが、石をぶつけられたなんてことは言ってねえぞ?
なんであんたら石をぶつけられたと思ったんだ?」

みるみる二人の顔は色を失った。
酔いもすっかりさめたとみえ、慌てたように「勘違いだ」「本当に石で怪我をしたのかは知らない」などと苦しい言い訳をし始めたという。
が、後の祭り。その場に居合わせた他の客も「確かにそう言っていた」「そういえばそいつらいつもMS商会の悪口を言っているぞ」などと証言。言い逃れできない状況となった。


しおりを挟む
感想 359

あなたにおすすめの小説

おしまいのそのあとは

makase
BL
悪役令息として転生してしまった神楽坂龍一郎は、心を入れ替え、主人公のよき友人になるよう努力していた。ところがこの選択肢が、神楽坂の大切な人を傷つける可能性が浮上する。困った神楽坂は、自分を犠牲にする道を歩みかけるが……

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

【8話完結】勇者の「便利な恋人」を辞めます。~世界を救うより、自分の幸せを守ることにしました~

キノア9g
BL
「君は便利だ」と笑った勇者を捨てたら、彼は全てを失い、私は伝説の魔導師へ。 あらすじ 勇者パーティーの万能魔術師・エリアスには、秘密があった。 それは、勇者ガウルの恋人でありながら、家事・雑用・魔力供給係として「便利な道具」のように扱われていること。 「お前は後ろで魔法撃ってるだけで楽だよな」 「俺のコンディション管理がお前の役目だろ?」 無神経な言葉と、徹夜で装備を直し自らの生命力を削って結界を維持する日々に疲れ果てたエリアスは、ある日ついに愛想を尽かして書き置きを残す。 『辞めます』 エリアスが去った翌日から、勇者パーティーは地獄に落ちた。 不味い飯、腐るアイテム、機能しない防御。 一方、エリアスは隣国の公爵に見初められ、国宝級の魔導師として華麗に転身し、正当な評価と敬意を与えられていた。 これは、自分の価値に気づいた受けが幸せになり、全てを失った攻めがプライドも聖剣も捨てて「狂犬」のような執着を見せるまでの、再構築の物語。 【勇者×魔導師/クズ勇者の転落劇】 ※攻めへのざまぁ要素(曇らせ)がメインの作品です。 ※糖度低め/精神的充足度高め ※最後の最後に、攻めは受けの忠実な「番犬」になります。 全8話。

もう一度君に会えたなら、愛してると言わせてくれるだろうか

まんまる
BL
王太子であるテオバルトは、婚約者の公爵家三男のリアンを蔑ろにして、男爵令嬢のミランジュと常に行動を共にしている。 そんな時、ミランジュがリアンの差し金で酷い目にあったと泣きついて来た。 テオバルトはリアンの弁解も聞かず、一方的に責めてしまう。 そしてその日の夜、テオバルトの元に訃報が届く。 大人になりきれない王太子テオバルト×無口で一途な公爵家三男リアン ハッピーエンドかどうかは読んでからのお楽しみという事で。 テオバルドとリアンの息子の第一王子のお話を《もう一度君に会えたなら~2》として上げました。

【完結】マジで婚約破棄される5秒前〜婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ悪役令息は一体どうしろと?〜

明太子
BL
公爵令息ジェーン・アンテノールは初恋の人である婚約者のウィリアム王太子から冷遇されている。 その理由は彼が侯爵令息のリア・グラマシーと恋仲であるため。 ジェーンは婚約者の心が離れていることを寂しく思いながらも卒業パーティーに出席する。 しかし、その場で彼はひょんなことから自身がリアを主人公とした物語(BLゲーム)の悪役だと気付く。 そしてこの後すぐにウィリアムから婚約破棄されることも。 婚約破棄まであと5秒しかありませんが、じゃあ一体どうしろと? シナリオから外れたジェーンの行動は登場人物たちに思わぬ影響を与えていくことに。 ※小説家になろうにも掲載しております。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

処理中です...