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第10章 シルとの未来
穏やかな空間
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マックスたちが張り切ってくれたおかげで、持ち帰った食事は非常に豪華なものとなった。
不思議なことにその中には見覚えのない料理まで並んでいる。
綺麗に盛り付けられたローストビーフの薔薇。
周りにも野菜の華が咲き乱れ、まるで平らなブーケだ。
「すごいな!パーティーには出ていなかった気がするぞ?」
「マックスから『俺からの祝いな?』って渡されたやつだ」
「こんなものまで作れるのか。とても綺麗だ」
食べるのが惜しいくらいだな。
俺たちの仲間はみんなで俺たちを甘やかしてくれる。
なんてすばらしい仲間に恵まれたんだろう。
俺の気持ちを読んだかのようにシルがほほ笑む。
「幸せだな。いい仲間に恵まれた」
「うん。幸せだ」
「さあ、頂こうぜ?せっかくの気遣いだ」
じっくりと時間をかけて火を通したローストビーフはとても柔らかく、ジューシーだ。
ソースの酸味も絶妙で、混ぜられている刻んだオニオンの食感も楽しい。
温野菜、マッシュポテト、小さなポットに入ったスープまであった。
「これはとても食べきれそうにないぞ?困ったな」
困ったと言いながらも口元がつい緩んでしまう。
余ったものを持っていけ、と言ったくせに、どう見たって初めから持ち帰り用に準備したものじゃないか。
付け合わせまで丁寧に飾り切りされているんだぞ?
隅々までみんなの優しい気遣いに溢れている。
みんなでどれだけ俺を感動させたら気が済むんだ?
みんなの暖かな気遣いに包まれ、結婚後初めて囲んだ「夫夫の食卓」は穏やかで幸せなものとなったのだった。
食後のコーヒーとデザートを頂きながら、シルと俺は居間のソファに落ち着いた。
まさかこれを見越していたわけではないよな?
店にある中で一番おおきなソファを買ったおかげで、シルと二人で寄りかかっても十分に余裕がある。
ブランも俺の胸ですやすやと熟睡中だ。
「ほら、あーん」
言われるがままに口を開ければ、シルが横に置いたトレーからせっせとケーキを口に運んでくれる。
合間合間にコーヒーまで飲ませる徹底ぶりだ。
俺はといえば、胸元のブランを愛でながらもぐもぐと口を動かし、ソファの上でだらんとだらけているだけ。
こんなにだらしないことはしたことがないから、正直に言えば落ち着かない。
でも悪くない気分だ。
なんというか、恋人だったときよりもシルの距離が近い。それにシルの甘やかしに際限がない。
夫夫はこんな風にするものなのだろうか。
だとすれば、とてもいい。最高だ。
俺はご機嫌でシルにもたれかかった。
「ん?どうした?」
「…………結婚してよかったと思ってな?こんな風にダラダラしながら食べさせてもらうなんて、すごく贅沢だ。
最高の気分だ」
「それは良かった。俺も最高の気分だ。ミルを存分に甘やかして、ダラダラさせていいなんて。結婚できて良かった!」
「アルに叱られそうだけどな?」
きっとこんなところを見たら「シル、ミルを甘やかしすぎだぞ?」なんて笑いながら呆れるだろう。
容易に想像できるアルに、シルが苦笑した。しばらく考えたあとこう言って胸を張る。
「メディソン家ではこれが通常!ウチのルール!そう言えばいい」
「ふふふ。ウチのルール。いいな、それは。甘やされて甘やかすルール」
「だろ?……こうやってさ、俺たちだけのルールができていくんだ。格式とかにとらわれない、俺とミルの幸せのためのルールが。それって想像するだけで幸せじゃないか?」
「ルールそのいち。お互いがお互いを甘やかすこと!……俺もシルを甘やかしたいから、して欲しいことがあったら言ってほしい」
「了解!じゃあ、ルールその二、我慢しないこと。何かして欲しいこと、して欲しくないこと、困ったこと、なんでもいい。なにかあれば必ず相談してくれ。黙って隠したり耐えたりしないで欲しい。いいか?」
「うむ。分かった。お互いに、な?シルは俺のためならなんでも我慢しそうだからな。それは無しだぞ?」
「……善処する」
そのままソファで色々なことを話した。
これまでのこと。これからのこと。
一緒にしたいことやして欲しいことなど、これからの俺たち家族のことを。
結婚はゴールじゃない。始まりだ。
俺たちの新しい幸せがまたここから始まるのだ。
不思議なことにその中には見覚えのない料理まで並んでいる。
綺麗に盛り付けられたローストビーフの薔薇。
周りにも野菜の華が咲き乱れ、まるで平らなブーケだ。
「すごいな!パーティーには出ていなかった気がするぞ?」
「マックスから『俺からの祝いな?』って渡されたやつだ」
「こんなものまで作れるのか。とても綺麗だ」
食べるのが惜しいくらいだな。
俺たちの仲間はみんなで俺たちを甘やかしてくれる。
なんてすばらしい仲間に恵まれたんだろう。
俺の気持ちを読んだかのようにシルがほほ笑む。
「幸せだな。いい仲間に恵まれた」
「うん。幸せだ」
「さあ、頂こうぜ?せっかくの気遣いだ」
じっくりと時間をかけて火を通したローストビーフはとても柔らかく、ジューシーだ。
ソースの酸味も絶妙で、混ぜられている刻んだオニオンの食感も楽しい。
温野菜、マッシュポテト、小さなポットに入ったスープまであった。
「これはとても食べきれそうにないぞ?困ったな」
困ったと言いながらも口元がつい緩んでしまう。
余ったものを持っていけ、と言ったくせに、どう見たって初めから持ち帰り用に準備したものじゃないか。
付け合わせまで丁寧に飾り切りされているんだぞ?
隅々までみんなの優しい気遣いに溢れている。
みんなでどれだけ俺を感動させたら気が済むんだ?
みんなの暖かな気遣いに包まれ、結婚後初めて囲んだ「夫夫の食卓」は穏やかで幸せなものとなったのだった。
食後のコーヒーとデザートを頂きながら、シルと俺は居間のソファに落ち着いた。
まさかこれを見越していたわけではないよな?
店にある中で一番おおきなソファを買ったおかげで、シルと二人で寄りかかっても十分に余裕がある。
ブランも俺の胸ですやすやと熟睡中だ。
「ほら、あーん」
言われるがままに口を開ければ、シルが横に置いたトレーからせっせとケーキを口に運んでくれる。
合間合間にコーヒーまで飲ませる徹底ぶりだ。
俺はといえば、胸元のブランを愛でながらもぐもぐと口を動かし、ソファの上でだらんとだらけているだけ。
こんなにだらしないことはしたことがないから、正直に言えば落ち着かない。
でも悪くない気分だ。
なんというか、恋人だったときよりもシルの距離が近い。それにシルの甘やかしに際限がない。
夫夫はこんな風にするものなのだろうか。
だとすれば、とてもいい。最高だ。
俺はご機嫌でシルにもたれかかった。
「ん?どうした?」
「…………結婚してよかったと思ってな?こんな風にダラダラしながら食べさせてもらうなんて、すごく贅沢だ。
最高の気分だ」
「それは良かった。俺も最高の気分だ。ミルを存分に甘やかして、ダラダラさせていいなんて。結婚できて良かった!」
「アルに叱られそうだけどな?」
きっとこんなところを見たら「シル、ミルを甘やかしすぎだぞ?」なんて笑いながら呆れるだろう。
容易に想像できるアルに、シルが苦笑した。しばらく考えたあとこう言って胸を張る。
「メディソン家ではこれが通常!ウチのルール!そう言えばいい」
「ふふふ。ウチのルール。いいな、それは。甘やされて甘やかすルール」
「だろ?……こうやってさ、俺たちだけのルールができていくんだ。格式とかにとらわれない、俺とミルの幸せのためのルールが。それって想像するだけで幸せじゃないか?」
「ルールそのいち。お互いがお互いを甘やかすこと!……俺もシルを甘やかしたいから、して欲しいことがあったら言ってほしい」
「了解!じゃあ、ルールその二、我慢しないこと。何かして欲しいこと、して欲しくないこと、困ったこと、なんでもいい。なにかあれば必ず相談してくれ。黙って隠したり耐えたりしないで欲しい。いいか?」
「うむ。分かった。お互いに、な?シルは俺のためならなんでも我慢しそうだからな。それは無しだぞ?」
「……善処する」
そのままソファで色々なことを話した。
これまでのこと。これからのこと。
一緒にしたいことやして欲しいことなど、これからの俺たち家族のことを。
結婚はゴールじゃない。始まりだ。
俺たちの新しい幸せがまたここから始まるのだ。
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