【本編完結】悪役令息の役どころからはサクッと離脱することにする。

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第10章 シルとの未来

学校へ

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結局いわゆる「初夜」は延期となった。
学校へ行く前日はやめておこう、とシルが言ったからだ。
「色っぽくなったミルは奴らには毒だ」という主張の意味は良くわからないが、毒ならやめた方がいい。
「残念だが仕方ないな」と肩を落とせば「そういうとこだぞ!!」とぎゅうぎゅう締め付けられた。




幸せな二日間をまったりと過ごし、学校へ。
週末をはさんだだけなのに、多くのことがありすぎて久しぶりに感じる。
なんだか世界が違ってみえる気がする。

「おはよう、奥さん!」

クラウスがニヤニヤと笑う。

「俺とシルは夫夫なんだから、俺も夫だぞ?」

と訂正すれば一瞬キョトンとしたあとゲラゲラと笑い出した。

「ミルって真面目だよなあ。そういうとこ、好きだぜ!」
「そうか?だが、誉め言葉ならば嬉しいと思う。ありがとう。俺もクラウスのおおらかなところが好きだぞ?」

そこにランジェが現れた。

「ちょっとミルってば結婚早々浮気?!」
「まあ、クラウスったらシルさんとミルを奪い合うつもり?私はシルさんの味方ですわよ!」
「おいおい。違うが、そこは俺の味方しろよ!俺の友達じゃねえよかよ!」
「うふふふふ。だって……ねえ?」
「なんだよ!薄情な奴らだなあ!ミル、言ってやってくれ!」
「いや、シルとクラウスならシルだろう」
「……だよなあ、ミルはそうだよなああああ!知ってた!」

ワイワイやっているとジークが登場。

「おはよう、みんな。楽しそうに何を話しているんだい?」
「あのね、クラウスがシルさんとミルを奪い合うんですって!」
「んなこと言ってねえ!」
「シルさんとなんて、勝ち目はありませんのにねえ!」
「だから、違うんだって!」
「クラウス?相手はシル先輩だぞ?身の程をわきまえたほうがいいと思うぞ?」
「だーかーらー!話を聞けってええええ!」

軽快なやりとりがおかしくて思わず笑ってしまった。

「あはははは!クラウス、からかってごめん」
「ほんっとクラウスってば単純よねえ。からかいがいがあるったら!」
「そうねえ。かわいらしいわよね」
「お前らなあ……!」
「はいはい!さっさと教室に行くぞ?馬鹿なことをやってたらチャイムが鳴りそうだ」

ジークの声で俺たちは慌てて走り出したのだった。





「にしてもさあ。なんかいいよな。結婚って。ミルとシルさん見てたらそう思った」

ランチを食べながらクラウスがしみじみと呟く。

「クラウス、婚約者出来た?」
「……いねえよ!てか、お前はどうなんだよ?」
「え?僕?いるよ、当たり前でしょう。うちは侯爵家だからね。釣り合う相手が限られるから早いうちに婚約しておくんだよ」
「……世知辛えなあ……」
「まだ中等部にはいったばかりなんだけどね。妹みたいで可愛いよ。彼女となら穏やかに暮らしていけると思っているんだ」
「まあ、素敵ねえ」
「そういうミルフェはどうなんだよ」
「わたし?うふふふ。そりゃあ居るわよ。5つ上でね、騎士団に所属しているからなかなか会えないのだけれど……。卒業したら結婚する約束をしているの」
「……みんな色々あるのだな」

そういう話はしたことがないから、少し驚いた。

「そりゃあ貴族ですもの。この年齢だとほとんどが婚約しているのではなくて?」
「……悪かったな!」
「まあ、クラウスのことではないのよ?」
「てか、ランジェはどうなんだよ?」
「私?うちは貴族といっても子爵家だもの。商会も営んでいるし、平民の感覚に近いわね。どうとでもなるわよ」
「つまり婚約者はいねえってことだな!」

追求するクラウスにランジェが言い返す。

「私のことはいいの!アンタは辺境伯でしょ。早く婚約者見つけないとダメなんじゃないの?」

するとクラウスがガクリと肩を落とした。

「……学生の間に探すつもりだったんだよ。でもさあ……そもそも婚約してるご令嬢が多いだろ?それにうちは辺境だぜ?その辺のご令嬢じゃあ、厳しいんだよ。ちょっと図太いくらいのご令嬢じゃなきゃ、やっていけねえ。
最初は、ミルみたいな相手と結婚して俺が守ってやれたら、なんて思ってたんだが、シルさんとミルを見てたら、お互いに支え合える対等の相手もいいな、なんてさ。でも、難しいよなあ……。そんなご令嬢なかなか居ねえって!」

ジークとミルフェの視線がランジェに向く。

「…………いるんじゃないかな」
「……そうね。図太くってクラウスと対等にやり合えてまだ婚約してないご令嬢、でしょう?いると思いますわ。ここに」

ランジェが目を丸くした。

「え?な、なに?私?!はあ?!」

言われてみれば、ランジェはクラウスの条件にピッタリだ。それにこの二人はいつも楽しそうに軽口をたたき合っている。相性もばっちりなのではないか?

「確かに、ランジェはクラウスとも対等にやりあっているし、しっかり者だからどこに行っても大丈夫だと思うぞ?」

するとクラウスがじーーっとランジェを見つめ出した。

「…………あり、だな」

「はあ?!やめてよ!私は『なし』よ!なし!!」

クラウスはガシっとランジェの肩を掴み、ひとこと。

「……辺境には騎士団があってな」
「き、騎士団?」
「騎士団だから、当然ながら男所帯だ。しかも辺境は女性よりも男の割合が非常に高い。だから自然と男同士で付き合ったり結婚したりしている奴も多いんだ」
「お、男同士が多い?!」
「騎士団にも大勢いるぞ?ちなみに、マッチョからスレンダーや男までよりどりみどりだ」
「…………クラウス。少し考えてみるわ。ちなみに、辺境に商会の支部を作ることについてどう思う?」
「いいんじゃねえか?店が少ないから大歓迎だ!ウチがそこから仕入れてもいいぞ?」
「よろしく、クラウス!父に話を通しておくわ!」
「ああ!よろしくな、ランジェ!俺も親父に話を通しておくよ!」

がっしりと固い握手を交わすクラウスとランジェ。



俺は唖然と呟いた。

「……もしかして、いま二人の婚約が決まったのか?」
「……そうみたいね」
「……婚約というよりも、同盟を結んだみたいに見えるけどね」

なんともクラウスとランジェらしい婚約になった。




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